厩舎ゆかりの血統モルトアレグロが初条件でパワフルさ活かす
2017/7/21(金)
モルトアレグロが、武井亮厩舎の看板馬・リエノテソーロに続く活躍を狙う。先輩と同じスパイツタウン産駒で、スピードを武器に函館ダート1000mの新馬戦を勝利。馬の後ろで我慢させる調教を繰り返し、鞍上のゴーサインで能力を爆発させることを覚えさせてきた。武井亮調教師は初の芝、初の距離でも期待を持って愛馬を送り出す。
-:函館2歳S(G3)に向かうモルトアレグロ(牝2、美浦・武井厩舎)ですが、新馬戦はダートの1000m戦でのデビューとなりました。ご覧になっていかがでしたか?
武井亮調教師:もともと血統的にちょっとテンションが上がりやすいということで、前走はビッシリ仕上げていませんでした。語弊はありますが、追い切り代わりに競馬を使うような感じ。そこをクリアしているので、体調的には上向いている状態ではありますね。
-:新馬戦を制しても、精神面の狂いが出てきてしまう馬も少なくはありません。前走後の様子はいかがですか?
武:心配していたのですが、それとは裏腹に変わらず安定していましたね。引っ掛かりもしないし、むしろ心配になるほど。一番、心配していたテンションの高揚は今のところクリアしているので、前走と同じくらいの気持ちで走れるのかなと。使ってくる内に段々と気は入ってくるでしょうから、短距離馬になりそうな雰囲気はあるので、それを出させないように……。ケアをしていても血統的に出てしまうと思うので、急かさずに、といったところです。
-:スパイツタウン(Speightstown)という血統といえば……。
武:ウチで言えば代表産駒はリエノテソーロじゃないですか。あの馬もすごく繊細です。NHKマイルCで2着に来た時も、木曜日から東京に入って、向こうで調整して週明けの火曜日に帰ってきたほど。競馬直後に帰ってしまうと、熱発や腹痛になりかねないということで。それくらい馬がピリピリしてしまうので、予防策としてね。ただ、この馬に関してはあまり心配ないのかと。
-:リエノテソーロは去年のこの頃の精神面はいかがでしたか。
武:リエノテソーロはデビュー直前に腹痛になってしまいましたね。当時は距離を長くしても良いのではないかという感覚を持っていて、この馬もそう。芝を試すよりは距離をちょっと試したいなという。今回もそんな考えで、すごく折り合えるし、指示を待っていられるというか、馬の後ろでずっと我慢できるので、1200mで1F延びますが、距離面は良いのかと。
-:距離は1400までという感じですか。
武:1400~1600までじゃないですかね。1400寄りの1600。もうちょっと器用なら良いんですけどね。リエノテソーロはガーッと脚を使わずに馬が自分でゴーサインを待っているくらい利口なんですよ。ジーッとして、こっちが行けと言ってからグッと行って。ただ、モルトアレグロはまだそこまで競馬を分かっていない部分が多いので、ガーッと行かせたら行ってしまうけど、そこで抑えて治まっちゃったとしても、また「行け」と言われるのがまだ分かっていないから、この間はちょっとモタついたような。この間は、勝手に走らせていたら千切っていたかもしれないですが、1回控えてやっぱりゴーサインを出されても、ずっと後ろで我慢させる調教ばっかりしていたから、馬は何故ここで行くんだみたいな感じでしたから。
今回は新馬よりもメンツが強いですよね。ただ、馬群から抜けても前にいると思うから、それを目標にずっと行っていれば、逆に新馬よりも競馬がしやすいのかもしれませんね。新馬の時は3頭くらい馬っ気の強い馬がいて、力を出し切れていない馬もおらず、ちょっとやると先頭に立ってしまうから、それで気を抜いたような……。あとは(この馬に)どれくらいポテンシャルがあるのか、ですね。
-:どうりで新馬戦は力を出し切ったような走りに見えなかったわけですね。
武:でも、可能性を秘めた馬だと思いますよ。短距離馬の気持ちになってしまったとしても、それはそれで走りそうですよ。後々は1200を一息で走る馬になるかもしれないですが、それは分かっているので、できるだけそうならないように開花するのを恐れるような感じで、今は我慢して……。今は後ろで我慢もせずに折り合ってはいるんですよ。でも、それが武器になるんですね。競馬に行くと馬は変わるから。
ギャロップとキャンターじゃ違うから、ガーッと行った時にどれだけ制御できるか。そこは競馬なんてテンからギャロップですから、その辺は体で染み込ませようと。リエノテソーロみたいに賢ければ別ですが、まだそこまでじゃないので体で覚えさせる。この間の控えた競馬が今回活きるか、活きないかが……。前走より絶対に上向いているし、体調もキープしているから心配はないのですが、あとは相手関係はやってみないとわかりませんからね。
-:レースを観ても、正直ちょっとモタついた感じもありましたよね。
武:そうなんですよね。モタついた感じもあったので、距離が延びるのはこの馬にとってはプラスだと思います。正直、芝、ダートはまだまだ分からないですね。先週も芝で走らせたのですが、芝の走りは軽やかというよりはパワフルでしたね。だから、洋芝なら良いかもしれません。
-:週末の土曜日は雨が降りそうですね。
武:去年のリエノテソーロは、(吉田)隼人が「雨だったら時計が掛かって良いのではないですか」と言っていたのですが、そこは未知数ですね。
-:NHKマイルCも時計は速かったですからね。そして、リエノテソーロのユニコーンSも時計が速い決着でした。
武:あの時はレース以前の課題がありましたね。ただ、リエノテソーロよりモルトアレグロは荒削りですね。あちらは初めから完成度が高かったですし、こちらは体も幼いし、成長の余地があるし、経験次第でどう変わるかでしょうね。
-:しかし、体調そのものは大丈夫なら、楽しみですね。
武:変わらずに良いですよ。脚元も特に悪いところはないし、カイバは食べるし、油断をすると増えちゃうくらいなので。ちょっと(多い目に)食べさせたら一気に増えちゃって、ちょっと普通に戻した方が良いぞということで。1日1.5くらいプラスしていたんですよ。今は(体重は)476~78をずっとキープしているからね。
-:牝馬で食いが良いということは良いことですね。
武:そうですね。そこはあまり心配ないですね。レースが468だから、見た目がまだシュッとしていないじゃないですか。美浦でやっていた時はまだ余裕があったから、その頃から考えるとだいぶ競走馬らしくなったのと。長い毛もなくなってきたしね。
-:とにかくこの段階では相手云々よりも、ちゃんと競走馬として造っていく段階でもありますし、レースで芝を走るのは初めて。試金石の一戦ですね。
武:大事だと思いますよ。普通に競馬をして、来られればそれにこしたことはありませんが、それで終わりというわけではありませんから。頑張ってほしいですね。
【追い切りチェック】19日(水)の最終追い切りは吉田隼人騎手が騎乗
芝コースで併せ馬 5F67.0-12.2秒をマーク
追い切り後、吉田隼騎手のコメントはコチラ⇒
プロフィール
【武井 亮】Ryo Takei
1980年12月25日生まれ。山梨県出身。家族が競馬ファンであったことから、元々競馬は身近な存在だった。2007年にJRA競馬学校の厩務員課程入学。翌2008年から二ノ宮厩舎で厩務員、高木登厩舎で調教助手を経て、2011年から和田道厩舎で調教助手を務める。2014年に開業し、同年3月16日にアーマークラッドで初勝利。主な管理馬に2017年NHKマイルC2着のリエノテソーロがいる。