エンジンが違う!圧巻の4連勝 強豪撃破で重賞も勝つ モズアスコット
2017/12/22(金)
フランケル産駒の上がり馬・モズアスコットが、重賞初挑戦の阪神カップで強敵を撃破する。7月の中京で未勝利戦を勝ち上がってから圧巻のパフォーマンスで4連勝。陣営も想像していなかった驚きの進化を見せ、一気にオープンまで駆け上がった。まだ成長途上ながら、ジョッキーからは「重賞級」と評され、獣医からは心肺機能を絶賛される大物候補。試練を乗り越えて重賞に送り出す玉井俊峰調教助手に、期待のほどを聞いた。
-:阪神カップ(G2)に出走予定のモズアスコット(牡3、栗東・矢作厩舎)についてお伺いします。レース前にもお話を伺わせていただきましたが、前回の京都(渡月橋S1着)のレースは驚くような勝ち方で、まだまだ成長の余地があるように見られました。レースを振り返っていかがですか?
玉井俊峰調教助手:まだまだ体ができていないですからね。15番枠でしたけど、心配なところも特になかったです。実際に、毎回スムーズな競馬はしていないですからね。最後に詰まっちゃったり、無理やりこじ開けて……みたいな競馬ばかりなので。東京の時も根性があるなと思ったけど、相手が強くなってスムーズな競馬ができなかったら、簡単ではないかと思うのも本音です。
-:阪神Cはかなり強力なメンバーになりそうです。引退レースのイスラボニータなど、これまでとは相手が変わりますが、その中でも上位人気に推されそうですよね。
玉:かなりレベルが上がっちゃうのでね。それはやってみないと分からないですけどね。前走後も一旦、放牧に出る話もありましたが、ここへ向かうことになりました。
▲もともとは馬術部の出自から競馬界へ飛び込んだ玉井助手
関西のトップステーブル・矢作厩舎の躍進を影で支えている
-:乗っている感じや、今までのレースぶりから、京都から阪神に替わる点というのはプラスに感じられる部分はありますか?
玉:そんなに関係ないかなと思いますけどね。内枠で包まれて何もできないという感じだったらしょうがないですけど、まあ、大丈夫だと思いますけどね。
-:走りのタイプから、ある程度は外枠の方がいいですか?
玉:ではあるかなと思います。
「基本トモが緩いし、初めて跨った助手には『こんなものなんですか?』みたいなことを言われたりもします。切れ味はとてもありますし、パワーもありそうな感じですね。」
-:モズアスコットはパワータイプなのか、スピードタイプなのか、評価するとどちらでしょうか?
玉:切れ味はとてもありますし、走りを見ていると、けっこうパワーもありそうな感じですね。最近僕は乗っていないですけど、追い切りとかを見ていたら速くなる完歩とかじゃなくて、ピッチでゆっくり速くなっていく部分もあるみたいです。
-:前回も馬体的には「まだまだ」という話だったんですけど、どのあたりでしょうか?
玉:基本トモが緩いし、やっぱりまだフニャフニャですね。初めて跨った助手には「こんなものなんですか?」みたいなことを言われたりもします。
-:それでいて、実戦でそれだけ変わるというのは?
玉:すごいですね。
-:逆にトモが緩いという点からいくと、中山や阪神の坂というのは現状では少し堪える部分はありそうですか?
玉:そうかもしれないですけどね。
-:ただ、(6戦という)キャリアを考えたら、4連勝してきたのはすごいですね。
玉:なかなかないですかね。
-:2走前も速い時計でしたし、前回も良い勝ち方だったと思いますけど、激走したダメージというか、疲れはなかったですか?
玉:そんなにないですね。心臓はとんでもないモノを持っているみたいで、獣医さんも「すごい」とは言ってくれていますしね。体が付いていっていないくらいの勢いで、エンジンはとんでもないみたいですね。
-:秋はそれなりにレースを使っていますが、厩舎的にもコンスタントに使うノウハウみたいなものに長けているのかなと思っているのですが?
玉:それは、使わないよりはこっちが対応するしかないと思うので、必死にはなりますけどね(笑)。そういう経験はしていると思いますけど、何とかレースに使えるようにしないといけないという部分がやっぱりありますよね。しかし、結局は馬がつくってくる部分ですけどね。オープンに行くような馬だったら、自分でカイバも分かってくるし、そんなに人がどうこうして……ということでもないと思います。今回も(放牧に)出してくれる予定でいたんですけど「どうや」と言われて、ダメージがそんなになかったので、そんなに最後までビッシリ走り切っている訳じゃないのかもしれないし、「メンバー的には問題ない」と言われたから、ゴーサインとなりましたね。
-:ここまでの快進撃というのは、想像されていましたか?
玉:いや、分からないですわ(笑)。だから、追い切りでやっぱり時計は出ちゃうんですよね。そんなに触っていて、オーラも特に感じないし、普段の雰囲気はそんなすごい感じは……。
-:威圧したり、そういった難しい部分はないですか?
玉:そういう感じはないですね。使い続けてきて、ちょっと最近カッとしてきたというか、ちょっとスイッチが入りやすくなってきたのはありますけどね。返し馬の直前がちょっと危ないところがあって、普段は全くなかったですけど、そういうのを少し出すようになってきたかなと。普段は本当に大人し過ぎる馬なので。
-:先ほど「トモが緩い」という話がありましたが、それでいて坂路で楽に50(秒台)が出るわけですから……。
玉:やっぱり乗った後は疲れが出ますけど、能力が違うんだろうなとは思いますけどね。
-:アクシデントがあり、デビューが遅れ、序盤はちょっと距離も長いところを使われていましたよね。
玉:そうですね。だから、本当に身体はシュッとしていたので、体型的には全然長いところもいけるだろうと見ていたら、そうでもなかったですね。盛りっとしてきたというか、体型もちょっと変わってきましたね。本当に胴がとんでもなく長いというイメージしかなかったのですが、今はそこまで胴が長いというようには見えないですしね。
-:背の高さはいかがですか?
玉:低いです。正直、迫力は絶対にないですね(笑)。
-:蹄の具合はいかがですか?
玉:入ってきた時を思えば、やっていたらドンドン良くなってきたんですよね。形は別に悪くもないしね。ただ、トモの立ち方がものすごく狭くて、すぐに踏みかけて、洗い場で何回も(蹄)鉄を落とすくらいでした。普段の立ち方がくっ付いて立っていたんですよね。それはちょっと広がって、良くなってきたのかなと思いますけどね。でも、まだ緩いから股関節もまだまだ良くなりそうです。
-:実際にレースを観られても、走っているとやっぱりフラフラしている感じですか?
玉:いや、レースを観てそんな感じはしないですね。でも、やっぱり触っていたら、う~ん……という感じですね。
-:先ほどの重複になってしまいますけど「心肺機能が優れている」ということで、これも未知数ですけど、今回勝ち負けになって一息入れるのか、続けて使うのか?
-:この時期、雨は降らないと思いますけど、馬場的には渋っても大丈夫ですか?
玉:経験がないから分からないですけど、降って欲しくないなとは思いますけどね。
-:東京でもけっこう良い時計で勝っていますからね。今から来年の展望など、そんな期待感は湧かないですか?
玉:そういうのを考えると、上手いこと行ったことがないので(笑)。今年どれだけ稼ぐねん、というのが何回もありましたからね。それで骨折とかもありましたからね。出来ることをやりましょうという感じですね。とりあえずいま出来ることしか考えていないですね。
-:最後に、(阪神Cは)1400ですけど、1200、1600だったらどうでしょうか?
玉:1200はちょっとどうですかねぇ……。分からないけど、1400、1600くらいの馬なのかなとは思っていますけど、成績によったら普通に(使うことも)ありますよね。
-:ファンは期待している馬なので、レースに向けてのまとめをいただけますか?
玉:(今までと)同じようなレースが出来れば理想です。強い勝ち方が出来れば良いですけどね。まあ、大きなことは言わないようにしているので……。
-:ペースは遅い方が良いですか、速い方が良いですか?
玉:いや、別に流れてもらって構わないというか、無理して引っ張るとカッとなったりというのがあるので、今までみたいに速くなってくれた方が良いかなと思いますけどね。
プロフィール
【玉井 俊峰】 Toshimine Tamai
学生時代に馬術部所属。福島の馬の温泉での勤務を経て、JRAの厩務員課程をパスし、トレセンへ。既に解散した梅田康雄厩舎を経て、矢作芳人厩舎へ。現在はタイセイサミットとモズアスコットを担当。過去には、マカニビスティーでドバイ遠征も経験した。日々の仕事のモットーは「特にない……けれど、見落としがないように気を付けたいなとは思いますね。馬は厩務員によって変わってくる場合もあるので、そこが怖いと言えば怖いですよね。そういうので手が替わって、ボーンと上に行ったりしているのは悔しいし、そういうのがないように自分で出来ることはやりたいなと思います」と謙虚に語る。