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休養に出すと必ず身体を増やして帰厩

-:さて、ここからはこれまでのララベルについてお聞きしようと思います。まずこの馬は休むたびに身体が増え、休むたびに強くなっている印象を持ちます。元々492キロでデビューして、前走TCK女王盃は564キロ。3年半で70キロ増えました。成長力がスゴい馬ですね。

荒:スゴいですよね。本当に成長力があると感じています。ララベルは体質の弱い馬なので、常に休養を挟んで競走馬生活を送ってきました。この馬の走る要因の一つだと思うのですが、ララは休養に出すと必ず身体を増やして、中身が詰まって帰ってくるんです。北海道に放牧に出して帰ってくる度に、「またデカくなってる」と感じます。ただ、大きくなって帰ってくるのはいいのですが、体重が増えると、それだけ右トモに負担が掛かりますからね…。こちらとしては仕上げるのにより苦労しますから、いいことばかりでもなくて。その繰り返しでした。下のクラスなら能力だけで勝てますが、上のクラスではそうはいきませんから。

-:マリーンC(2着)で騎乗した森泰斗騎手が「この馬は体質がパンとしたらものすごい馬になる」と絶賛していたのを思い出します。

荒:泰斗も、以前16年のしらさぎ賞に乗った吉原(寛人)騎手も、やはりこの馬には『走る』というイメージを持っていたと思うんです。でもララは返し馬からグダグダというか、普通だったら馬はレースではピリっとするところがありますが、そういうのがまったくないんです。それこそ返し馬でムチを使って促さないと進んでいかない。泰斗も吉原も輪乗りの時に厩務員に「大丈夫ですか?この馬」と聞いていたようです。でも、ララはいつもそんな感じなんです。下向いたり、あくびしたり。ゲートの中に入って、後ろの扉が閉められてから、まるっきり別の馬のようになるんですよ。背中もピリっとして、前しか向いていない。『オン・オフのある馬は走る』と言いますが、オンが本当に直前に来るように、無駄な労力を使わない馬なんです。

ララベル

▲2015年の川崎・ロジータ記念を制覇

-:牝馬らしくないですね。

荒:輸送の時も普通はソワソワするのに、ララはどこに行こうが自分の家のように入っていきますからね(笑)。イレ込むこともなく、ボーっと、じっとしています。装鞍所など、他の馬はテンションが上がりそうな場所でも、ララは寝ているんじゃないかと思うくらいおとなしいんです。レースでスイッチは入りますが、折り合いを欠くこともない。ゴールした瞬間にレースが終わったと察知して、そのまま立ちっぱなしになるんです。「もう帰るぞ」と促さないと動きません(笑)。

-:相当賢いのでしょうね。

荒:2015年の浦和桜花賞(1着)の時も、社台Fの吉田照哉社長がいらして一緒に口取りしたのですが、あの日は風が強くて肩掛けがバサバサになってる中、ララは微動だにしませんでした。それを見た照哉社長が「この馬は大したものだ!」と褒めていたのを思い出します。

-:南関重賞を3勝したショコラヴェリーヌや、通算9勝を挙げたブリージーストームなど、ララベルのお兄さんお姉さんも荒山厩舎所属で活躍しましたが、似ているところはありますか?

荒:お兄さんのブリージーストームに見た目は似ていますね。ショコラとは性格など全然違います。ショコラはレースは普通にできましたが、調教でコースを回らないなど我の強い面がありました。ただそういうマイペースな面は妹のララと似ているところはあるかもしれませんね。

「走ると最初に見抜いたのは大輔なんです。デビュー前の能力試験の時に『これはたぶんレベルが違います。ハンパじゃないですよ』と。他の誰にも乗せたくないと言っていたのは、それだけ壊したくないという思いがあったのかもしれません」


-:右トモ以外にも弱いところがあったのでしょうか?

荒:いや、右トモだけでした。この兄弟はみんな活躍していますが、みんな右トモが弱いんですよ。悪いところは似るんでしょうね。

-:そういう意味では、兄姉の経験がララベルに活きた面もあったのでしょうか?

荒:それはあるかもしれませんね。

-:最初に「この馬は走る!」と思われたのはいつ頃でしたか?

荒:実は、ララベルが走ると最初に見抜いたのは大輔なんです。デビュー前の能力試験の時、右トモの状態は良くないし、のんびりした面からどうかと思っていたのですが、試験後「先生、これはたぶんレベルが違います。ハンパじゃないですよ。間違いない。お姉ちゃんより上です!」と言うんです。お姉ちゃんはA2クラスまで行きましたから、それより上はA1しかないだろ、と(笑)。大輔の「他の誰にも乗せたくない」と言っていたのは、それだけ壊したくないという思いがあったのかもしれません。

-:先生ご自身がこの馬強いな、と最初に思われたのはいつでしょう?

荒:東京2歳優駿牝馬(1着)の時ですね。大外16番枠だったのですが、「16番枠の人気馬がこのレースでは来ない」と言われていて。しかも、またそういうよからぬ情報をみんな僕に入れてくるんですよ(笑)。

ララベル

-:他に苦労されたことはありましたか?

荒:桜花賞やしらさぎ賞も状態が今一歩で使うか迷ったのですが、そういう状態でも勝ってくれて。こちらの不安をいつも払拭してくれる子なんですよね。

-:この点は良かったという部分はありましたか?

荒:女の子なのに飼い葉はよく食べるので、その点は良かったですね。どこに行ってもよく食べるので輸送減りを心配しなくて良かったのは大きかったです。何事にも動じないんですよね。

-:レース前の先生のコメントは「硬い」「馬が全然できていない」などの繰り返しでしたね。

荒:そうそう(笑)。『泣きの荒山』と言われるんですが、あれは普通に思ったことを言っているんですよ。

-:これだけ仕上げるのが難しい馬ということで、ララベルは開業10年の厩舎にかなり大きなものをもたらしたのではないでしょうか?

荒:僕も、そして担当者も、厩舎スタッフにとってこれから馬を扱っていく上でスゴく財産になる馬と巡り合えたと思います。色々な部分で勉強させてもらった馬でした。女の子でもこれだけドシっとした馬がいるんだなと。それこそ僕がジョッキー時代にもめぐり合ったことがない馬だったので。

「泣きの荒山」が偉大な父超え通算500勝へ
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