8歳にして今が最盛期のアップトゥデイト 打倒・絶対王者の気運高まる
2018/4/11(水)
絶対王者を逆転するなら今回。そう虎視眈々と牙を研ぐのがアップトゥデイト陣営だ。現在、JG1を4連勝、障害界の頂点に君臨するオジュウチョウサンに半馬身まで迫った、昨年暮れの中山大障害。果敢な逃げでライバルを苦しめた走りは老いて尚盛んといえるものだった。前走の阪神スプリングJも危なげなく快勝し、再度の充実期を感じさせるJG1馬だが、そのワケとは。今年の中山グランドジャンプも名勝負必至だ。
-:中山グランドジャンプ(JG1)に挑むアップトゥデイト(牡8、栗東・佐々晶厩舎)について、担当の佐々木助手に語っていただきます。前走の阪神スプリングジャンプは強い内容でしたね!
佐々木貴啓調教助手:オジュウチョウサンもいなかったし、絶対に負けられないレースでしたから、勝ってくれて良かったです。緊張はしていましたが、正直負けるとは思っていなかったんです。
-:あのレース自体は、なかなか勝てなかったレースでしたが、今になって勝てるということは素晴らしいですね。
佐:そうですね。4度目の挑戦でした。改めて考えたら、今回の勝ち時計くらいで今まで走っていて負けていたので、勝った馬も強かったのでしょうね。
▲デビューからアップトゥデイトを担当する佐々木助手
父は所属厩舎の師である佐々木晶三調教師だ
-:阪神スプリングJの時はご家族も来られていたんですね。
佐:来ていましたね。2016年の秋、阪神ジャンプSでニホンピロバロンに負けた時に、ちょうど2人目の子供が生まれた日で、そうしたら負けてしまったから(苦笑)。流れ的にも自分が絶対に勝つだろうと思ったら、差されてしまって。
-:忘れられない誕生日になりましたね。
佐:2年目(2017年阪神ジャンプS)に、1歳の誕生日の時に勝てたから良かったけど。誕生日の前の日だったのでね。
-: 2走前の中山大障害ですが、敗れはしたものの、多くのファンの心を動かした一戦だったと思います。あのオジュウチョウサンをあそこまで苦しめました。
佐:中山の時は、調教の時から逍遥馬道を使うようにしたのです。何故かと言うと、トモを良くしようと思いました。それで結果が出るかどうか分からなかったのですが、獣医さんにも「今までにないくらいの状態だね」と言われたほど。結果が出るかは半信半疑ではありましたが、馬も変わっているのを僕も感じていましたから。今回の阪神の時も逍遥を続けていて、馬がドンドン良くなっていて。ちょっとしたことではあるのすが、体つきが変わってきましたね。
「イチかバチかですが、中山大障害の時は普段の調教から100%、トモに重点を置くくらいの乗り方を心がけました。完全に噛み合ってくれましたから、(効果は)かなりあると思いますね」
-:その効果はレースでどんな部分に影響があると思いますか?
佐:トモがシッカリしていると、歩幅が良くなるからブレないでしょうね。トモで頑張れるので、フォームに力が入ってきますね。
-:調教で乗っている時もトモに負荷を掛けようと思っているのですか?
佐:そういう意識はありますね。イチかバチかですが、中山大障害の時は普段の調教から100%、トモに重点を置くくらいの乗り方を心がけました。完全に噛み合ってくれましたから、(効果は)かなりあると思いますね。
-:しかし、そんな調教をしていたら、反面、疲れの心配やトモのケアも必要になってきますよね。
佐:トモのケアはしていますけど、常歩でのことなので、負担は少ないですね。
-:時間しては、どれくらい常歩で歩いているのですか?
佐:ウチは前乗りと上がりが(各)30分だから、(合計)1時間くらいですね。
-:地道な作業による変化ということですね。
佐:そうですね。
▲林満明騎手を背に調教を行うアップトゥデイト(4月4日に撮影)
-:中山大障害は決してフロックなどではなく、調教の工夫もあって、成長があったということですね。これは調教の数字でもわかりづらい部分ですので、新たな驚きです。
佐:そうですね。何とか逆転したかったから、何かないかと色々と考えました。調教では普段引っ掛かるところもありますし、他の方法でどうすべきかと思ってよその厩舎を見ていたら、必ずといっていいほど逍遥馬道を歩いていたから、参考にしたのです。マネではありますが、効果は出ましたからね(笑)。
-:ご自身で色々考えられたのですか?
佐:そうですね。その時は本当に常歩から、全てに関して見直していたというか、自分の乗り方もどうしたら良いんやろう?という時でした。その結果が出てくれて、(中山大障害で)ああいう見せ場のある内容の2着。レースが終わって、アップトゥデイトを見た時にメッチャ涙が出てきて、ウワッと泣いてしまいました。悔しい思いももちろんありますが、負けたといっても馬が応えてくれた走りですから。本当に感謝と努力した成果があったと思いました。
▲2017年の中山大障害 オジュウチョウサンと名勝負を演じた
-:そういう思いがあっての涙だった訳ですね。
佐:あの1~2カ月は自分で色々変えている時期で、目に見えて結果が出ましたからね。
-:今回の調整過程はいかがですか?
佐:順調そのもので、言うことがないです。年齢的な硬さも全くありません。多分、今が一番良いと思います。体重を見ても、新馬の時から40キロくらい増えていますが、太くありません。やっぱりトモのラインができたことが一番のポイントで、やっと完成したかなと。
-:乗り心地はどんな馬ですか?
佐:メチャクチャ良いですね。体幹も全然違う。今なら、平地でももうちょっと走るような気がするほどですよ(笑)。
-:障害練習をすると、トモの重要性はすごく大きいのではないでしょうか。
佐:あるんじゃないですか。逆に言えば、こういう丈夫な馬の方が珍しいというか。僕はこの馬しか障害馬を担当したことがないですけど。
-:この馬の普段の性格はどんなタイプですか?
佐:普段は大人しいですね。大人しいし、扱いやすい。スイッチはあって、うるさい時はメチャクチャうるさいですが、基本はメチャクチャ大人しいですね。
「やっぱり先頭だったら周りを見ながら飛ぶからでしょうね。馬込みでゴチャゴチャすると周りの馬を気にするところがあるから、それがないから余計に息が入りますから」
-:競馬場に行ってから、うるさくなったり?
佐:昔はそうでしたね。競馬場でもパドックでもメッチャ大人しいですね。それこそ初めてG1(2015年中山大障害)を勝った時から大人しくなって、今では花壇の花を見るくらいボッーとしていて、それくらいから走るようになって。前まではちょっと自分を見失うところがありましたからね。
-:今のところ、レースに関して心配するようなことはないですか?
佐:ないですね。林(満明)さんも上手いこと乗ってくれるだろうし、(馬は)上がってきても脚にケガがあったことはないですし、負担が掛っていないから、レースに行って帰ってきても、あまり疲れていないですからね。
-:あれだけ走っても、ダメージがないものなのですね。
佐:やっぱり先頭だったら周りを見ながら飛ぶからでしょうね。馬込みでゴチャゴチャすると周りの馬を気にするところがあるから、それがないから余計に息が入りますから。
-:自分のリズムで飛べるということですね。今回も逃げる可能性は高いと思っていいでしょうか。
佐:多分、逃げるでしょうね。ペース的には同じくらいですからね。