グレイルが、府中で自慢の末脚を爆発させる。皐月賞は急仕上げ気味だった上にスタートで出遅れ、前が詰まる場面がありながらメンバー上がり1位タイの末脚で追い込んだ。東京コースは共同通信杯で大敗したが、陣営は「左回りの方が乗りやすい」と話す。状態は皐月賞時とは雲泥の差。京都2歳Sで後にG1馬となるタイムフライヤーを差し切った、非凡な切れ味を武器に頂点を狙っている。

「東京になればもっと良い結果が出る」

-:3歳馬にとって、一生に一度の日本ダービー(G1)なんですけど、グレイル(牡3、栗東・野中厩舎)は2連勝で向かった共同通信杯では、人気を裏切る7着に敗れてしまいましたが、そこから皐月賞に向かう調整過程というところから教えていただけますか?

川副秀明調教助手:あの後、短期で放牧に出して、帰ってきてちょっと球節がモヤッとしていたので、調整が1週間ぐらい遅れましたけど、その中でも追い切る度に馬が良くなっていったので「使う方向で行こう」ということで、進めていきました。

-:本番の皐月賞は稍重の馬場で、スタートが今ひとつ良くなく、ポジションも後ろで仕方がないという出方でしたよね?

川:はい。まだちょっと精神的にも子供な所があって、あわてんぼうというか、若干環境に左右される所が残っているので、スタンド前のスタートでちょっとイレ込んだのかなと思うんですけど、今回はそれも対策をしているので、前回よりかは良い状況で行けるように、今やっているところです。

川副秀明調教助手

-:その対策をちょっと教えていただけますか?

川:この間もずっとメンコを着けていったんですけど、ジョッキーも「メンコを取った瞬間、背中に力が入って力んでいた」と言っていましたし、普段の調教からいろんな環境を試して、どんな音があったとしても我慢できるように、今ちょっとやっているところですね。

-:メンコはまた直前に外される予定ですか?

川:いや、今回は着けたままで競馬に行く予定です。

-:スタートの出がもうひとつだった中、14番手ぐらいからジックリ我慢して、末脚に賭けたわけなんですけど、最後の末脚は調整遅れを感じさせない伸びだったんじゃないですか?

川:そうですね。急仕上げなところがあった割にはしっかり脚を使っていましたし、2回ぐらい前が詰まったり、カットされたりとかがありながらでも、一番良い脚が使えていたと思うので、東京になればもっと良い結果が出るんじゃないかなと期待しています。

-:そう考えると、中間の順調さをちょっと欠いた所と、たぶん馬場もパンパンの方が良いだろうし、ゲートもちょっと立ち遅れ気味だったので、それらが補正されれば、グレイルの力はもうちょっと上に行けるんじゃないかという見方ができると思うんですけど、皐月賞が終わってからの中間の動きはどうですか?

川:今回は2週間ぐらい疲れを取ることに専念して、そこから15-15をやり出して、追い切りも順調に来ていますし、馬も皐月賞の時より中身がしっかりしてきましたし、背中とかトモの筋肉も追い切るたびにまた付いてきているので、皐月賞の時よりかは断然良い状況ですね。

「中身がしっかりしてきましたし、背中とかトモの筋肉も追い切るたびに付いてきているので、皐月賞の時より断然良い状況です」


-:ファンは、どうしても共同通信杯で負けているので、同じ舞台でどうなのかなと気にされている方がいると思うんですけど、別に府中が苦手で負けた訳ではないということですね?

川:そうですね。乗っている感じは別に右手前が苦手とか、左回りが苦手とかは全然気にならないですし、追い切りでジョッキーに乗ってもらっても「別にそういうことは気にならない」と言ってもらっているので。僕の感触では、乗っている感じだと左回りの方が乗りやすいんですけどね。

-:そこは真価が問われるというか、共同通信杯のリベンジをもう1回ここでという気持ちもあるでしょうからね?

川:そうですね。

-:追い切りの動きとかは、皐月賞前からここが良くなったと感じられる所はありますか?

川:そんなに大きくは。元々、良い動きをする馬なので、相変わらず良い動きをしているなと思うし、皐月賞の時も1週前の追い切りはちょっと物足りない感じだったんですけど、やっぱり追い切りをやることで当該週は良い動きができましたし、今週やって来週はさらに良い動きをすると思うので、それでしっかり仕上がると思います。

-:1週前追い切りで考えると、皐月賞前よりはだいぶ順調度が違うということですね?

川:全然、順調ですね。

-:着順がグッと上がりそうですね?

川:上げたいですね。

グレイル

共同通信杯では末脚不発で7着に敗れた

作戦はゲート次第も「折り合いも大変な馬ではない」

-:グレイルの持っている末脚の良さを活かす競馬になるのですか?

川:スタート次第じゃないですかね。別に後ろから行かないといけない馬でもないですし、そんなに折り合いも大変な馬ではないので、そこそこのスタートを切って中団ぐらいで行ければ、長く良い脚を使う馬なので、良いかなと思うんですけど、こればっかりはゲートを出てみないと分からないので。

-:まだどこのゲートが当たるかも分かりませんしね?

川:そうですね。

-:雨よりも良馬場の方が良いですか?

川:新馬の時の雨の馬場でも結果は出しているので、皐月賞の時もそうでしたからね。

-:体を見るとけっこう上品な、どっちかと言うと、おぼっちゃま系な風に見えたので、パンパンの良の方が良いのかなと思ったのですが?

川:けっこうパワーがありますからね。

-:観る方からしたら、どんな馬場でも安心して観られるということですね?

川:いけると思いますね。

-:むしろゲートを五分に出て、というところの方が大きいですね?

川:そうですね。

-:また大歓声の中でゲートに入ることになりますが?

川:そうですね。もっと歓声が大きいので、シッカリ対策をしていきたいと思います。

グレイル

皐月賞に続き岩田騎手とのコンビで調整を重ねる

-:皐月賞よりも順調に使えるということは、川副さんも楽しみですね?

「前回よりも順調に来て追い切り度に馬が良くなってきているのが分かるので、楽しみですね」


川:そうですね。本当に前回よりも順調に来て、追い切り度に馬が良くなってきているのが分かるので、楽しみですね。

-:オーナーのカナヤマホールディングさんと言えば、先週は(青竜Sで)グリムが勝ちましたし、野中厩舎のシヴァージとか相性の良いオーナーさんですよね。それは何か秘訣があるのですか?

川:僕はその辺はあまり分からないですけど……。

-:走っている馬が野中厩舎に集まっている感じですよね?

川:本当にカナヤマさんの馬はよく走るので。他でも池添さんのカツジとか、カシアスとかみんな走っているので。

-:芝からダートから色々な条件で走っているので、その中でも3歳牡馬のトップのダービーに出るとなったら、オーナーさんにとっては一大事ですからね。責任重大ですね?

川:そうですね。良い結果を出したいですね。

-:皐月賞以上の結果を期待していますので、グレイルの力はこんなものじゃないと思っているファンも多いと思うので、応援しているファンにメッセージをお願いできますか?

川:みなさんの期待に応えられるように、無事にダービーを迎えて、一つでも良い成績が残せるように、しっかり残りの何日間か頑張ってやっていきたいと思います。

最終追いのポイントは「動きのダイナミックさ」

-:ちなみに、ダービー当週の追い切りはどんな感じだったら良いですか?

川:どういう感じというか、やっぱり良い時の追い切りって迫力があるので、時計云々もあると思うんですけど、動きのダイナミックさがより一層出てくれば、楽しみなんじゃないかなと思いますね。

-:パドック派に、この馬の良い時のパドックはこんなんだよという、ワンポイントがあれば?

川:この馬のパドックは、ジョッキーが乗るまではけっこう大人しくて、そんなに覇気があるような感じでは歩かないので、そんなにイレ込んだりとかもせずに、マイペースで歩くタイプなので、パドックではいつもと変わらないかなと思うんですけどね。

-:頼もしい相棒ですね?

川:そうですね。ジョッキーが乗ると、一瞬にしてスイッチが入るので。

-:地下馬道は元気良く出ていくタイプですか?

川:そうですね。

-:皐月賞ではおそらく満足のいく結果ではなかったと思うので、ダービーでの巻き返しに期待しています。

川:はい、頑張ります。

川副秀明調教助手