キズナ育てた男が「いい馬」 距離延長で末脚炸裂 ブレスジャーニー
2018/7/13(金)
ブレスジャーニーは、まだまだ伸びる可能性を秘めている。4カ月ぶりの前走巴賞はメンバー最速の上がりで追い込んだが5着。久々をたたき、函館滞在の効果で状態は上昇カーブを描いている。長期離脱もあって、今回の函館記念(G3)がまだキャリア10戦目。キズナやアーネストリーの調教に携わったベテラン助手に、セールスポイントや手応えを聞いた。
-:函館記念(G3)に挑むブレスジャーニー(牡4、栗東・佐々晶厩舎)ですが、巴賞を叩いての臨戦となりますね。
山田誠二調教助手:一度使って、思ったほどダメージもなかったですし、順調に回復してきてくれています。いい状態で送り出せるんじゃないかと思いますよ。今朝(11日)の追い切りも乗り役(中井裕二騎手)は「息遣いもよくて、モタれることもなくよかったんじゃないかな」と言ってくれましたよ。
-:そこはまた山田さんがレースまでの間に乗って、追い切りの効果を感じ取れそうですね。
山:いい感じで出せればと思いますね。前回を使って、多少の筋肉痛はありましたが、どんな馬でもあるものですからね。ただ、前回の仕上げは、栗東でも乗ったことのない馬で競馬の週の火曜日から乗りましたからね(笑)。ただ、いい馬だなという感触は受けていましたよ。
-:作られてきたものを出された感じですね。
山:そうそう、ただ、仕上がっているなと思うほどではなかったですからね。それは初めて乗っても、毎日乗ってもわかりますからね。その点、今回は順調に仕上がっていますし、トモの力強さや筋肉も戻ってきているのでね。前回より若干の上積みはあるでしょうね。
-:精神面で懸念するところはありますか?
山:割と神経質っぽいところもありますが、素直な馬ですし、基本はおとなしいです。特に問題はないと思いますよ。
-:前走は差し届かずの競馬。これまでは東京で一番勝ち星を挙げていますし、広いコースを中心に使われてきた印象です。
山:正直に言えば脚質的にやや分が悪いですよね…。どうしても腰の甘さもまだありますし、その点、平坦はいいかもしれませんが。ただ、G1や金鯱賞などと比較すればメンバー的にはやりやすいかもしれませんね。
-:前回は函館の1800ということで、どうしても前が残りやすいコースですし、立ち回りの巧さが求められますよね。その点、今回は1コーナーまでに距離もありますし、競馬はしやすくなりますね。
山:そうですね。今回のほうが流れに乗りやすいかと思います。2000mの距離なら問題ないでしょうし、流れが向いてくれたらいいですね。
-:重複する部分ではありますが、この馬のフットワークはどんなタイプですか?
山:後ろよりも前を使って走る馬ですが、筋肉の質がいいですね。う~ん、表現が難しいですけど…。粘りがあるというか。
-:これは余談ですが、セレクトセールが終わったばかりです。山田助手といえば、キズナに携わったことで知られますが、キズナ産駒はみられましたか?
山:1歳馬を何頭かみたけれど、父譲りのよさそうな雰囲気な馬はいましたね。走る馬が出てくれるといいんだけどね…。来年が楽しみです。
-:キズナ産駒のよさそうなポイントはどこでしたか?
山:生産のことは詳しくはわからないけど、キズナは身体能力が高かったですからね。とにかく頭がよくて、人間だったらシステムエンジニアをやってそうなほど(笑)。それに、元気のいい馬でしたよね。走りたいという気持ちが強くて。そういう面が遺伝してくれたらと思いますね。
-:凱旋門賞でも上位に入りましたよね。
山:勝った馬がべらぼうに強くて、オルフェーヴルもいたけどね。頑張ってくれました。産駒にもああやって海外にいける馬が出てくれたらと思います。
山田誠二調教助手を背にキズナの日本ダービー1週前追い切り
-:ちなみに、キズナの調教でフランスの芝も経験されたと思います。フランスの芝と北海道の芝を経験して、違いはありますか?
山:いやいや歩いただけですよ(笑)。ただ、向こうは日本ほど路盤が整備されていないですよね。だから、コースが波打っているような感じだし、ボコボコしてますよね。人間だって、そういうところで走ったら疲れやすいはずだと思います。
-:砂でさえも、凹凸があると歩きづらいですもんね。一概にヨーロッパの芝が重いんじゃなくて、そういう面から向こうはタフなのかと思いました。自ずと身体の芯が鍛えられるような馬場なのかと。
山:それはあると思いますよ。日本の馬は波打った馬場なんて走らないですからね。芝の重さはそんな感じなかったですからね。
-:そんなエンジンのブレスジャーニーにとって、洋芝はどうでしょうか?
山:前回をみても合ってないとは感じませんでしたし、ポジションの問題で最後も脚は使っていましたからね。
-:ただ、前回で気になったのが手前の替え方なのですが…。
山:決して巧いとはいえないですよね(苦笑)。左手前を出すより、右手前を出すほうが上手ですよね。この前も4コーナーで替えるには替えていたけど。
-:だから、左回りが巧いというのもあるんですね。前回はあそこのモタつきも気になりました。
山:ちょうど1頭いて、その外に振って、余計に顔が外に向いていましたよね。調教ではそんなに問題ないんですけどねえ。
-:馬場に関しては問わないですか?今週末も傘マークがついていますが…。
山:以前、稍重でも連勝しているように、力が要る馬場は決して悪くないと思いますよ。前回も決して乾いてはいなかったですからね。良馬場でも33秒台の上りなんかにはならないでしょうから。
16年東京スポーツ杯2歳S(G3)ではスワーヴリチャードを外から差し切った
-:むしろ時計が掛かったほうがいいかもしれませんね。
山:まあ、馬場の良し悪しにかかわらず、差せる馬場が理想です(笑)。
-:枠は問わないタイプですか?
山:特に問題ないと思うんですけどね。包まれても精神面に課題があるわけではないですし。有馬記念も内でゴチャつきはしましたが、決して悪い内容だったとは思わないですから。
-:よくよく考えると、この年齢でキャリアは浅いほうですね。今後、まだまだ期待といいますか、成長する余地があるのかと。
山:そうですね。小回りだって、阪神でありましたが、経験は浅いですし、右回りも3度だけ。まだ伸びしろがあると思います。
-:前回が1番人気。今回も人気するのではないでしょうか。
山:パドックに入ったときは確か3番人気くらいでしたからね。ビックリしましたね。今回もハンデ戦だから人気になるかもしれませんが、僕らとすれば、いい状態で送り出すことしか考えていないですし、結果がついてくるんじゃないでしょうか。あまり大きなことは言えません(笑)。
-:控えめな感じですね(笑)。
山:ここまでは順調にきていますよ。そこそこ格好はつけてほしいな(笑)。あとは乗り役が上手くレースを進めてくれれば、ですね…。
-:ありがとうございました。
プロフィール
【山田 誠二】Seiji Yamada
1967年、兵庫県淡路島生まれ。高校を卒業して、当時の社台ファーム(現在はノーザンファームへ)。学生時代から競馬に興味があり、高校の進路相談の際に競馬週刊誌にある社台Fの求人募集をもって直訴したほど。
しかし、周囲に競馬文化がなかったため、本格的に馬に乗り始めたのは働き出してから。トレセンでは中村厩舎、伊藤雄二厩舎を経て、現在の佐々木晶三厩舎に。佐々木厩舎の看板馬である、キズナやアーネストリーなどの調教にも携わった。長期の函館滞在は久しぶり。息抜きは温泉など。謙虚なベテランホースマン。