ブレイク中のトレーナーの秘蔵っ子が一気の重賞制覇へ。6月から始まった2017年産の2歳新馬戦において、既に4頭が勝ち上がり、10戦5連対の好成績を残しているのが西村真幸厩舎。その勝ち上がりが一番乗りとなったタイセイビジョンが、世代最初の重賞・函館2歳ステークスに駒を進めてきた。好調厩舎が勢いままにタイトルを掴むのか。函館到着後の気配を語ってもらった。

(取材=競馬ラボ小野田)

ノーステッキで2馬身半差V 担当者の想像を上回る新馬戦

-:函館2歳ステークス(G3)に挑むタイセイビジョン(牡2、栗東・西村厩舎)ですが、新馬戦は外を回りながらも後続を突き放す強い内容でした。まず、厩舎に入ってきた頃の印象を教えていただけますか。

菊本俊英調教助手:もともと入厩した頃、ゲートを受かる前までは(担当が)僕ではなく、ゲート試験に受かったくらいからの担当でした。普段はけっこう大人しいのですが、他の人がやっているのを見ていたら、何かの拍子に暴走をしたりしていましたね。環境に慣れてきたら、だいぶ落ち着いて、栗東にいる時は運動でもメチャクチャ大人しいんですけどね。ただ、走り出したら一生懸命になるところがあるので、オンとオフの差がある感じですね。頭はいい子だと思うので、周りの環境に慣れたら、落ち着いてきたということなのでしょうね。

タイセイビジョン

-:新馬戦は序盤こそ中団からの競馬でしたが、3角過ぎから持ったままで押し切る強い内容でしたね。

菊:馬の形的にも、能力はありそうな感じですけどね。2歳の割には筋肉もシッカリ付いていて、いい体格をしていました。入りたてのヒョロっとした感じとは明らかに違ういい体をしていましたね。しかし、走りそうな雰囲気はありましたけど、あそこまで一方的だとは思わなかったですね。

-:通過ラップを見ても、阪神と函館、距離も違いますけど、芝1400m戦の6F通過を1分10秒5で通過して押し切っていますものね。函館芝1200mの新馬は1分10秒を切るか、切らないかが目安なところがありますからね。

菊:多分、展開が途中からビューンと速くなったのでしょうね。新馬戦にしては入りが速かったですもんね。最後はノーステッキだし、そこまでビッシリ追っていないから、もうちょっと余力はあったみたいですしね。

-:先程、体格も変わってきたとのことでした。新馬戦に向けて調教を進めていく過程で変化は感じられましたか?

菊:やっぱりやっていったら、2歳なりに締まってきたという感じですかね。ただ、ソコソコ勝ち負けくらいの目処をつけてくれたらいいな、くらいの気持ちでしたね。僕はいつもそんな気持ちですけどね、ハハハ。自分にそんな自信があるタイプはないのでね。何度も使った未勝利なら、相手関係で何となく分かりますけど、新馬なので分からないですからね。蓋を開けてみないと分からないですけど、あんな結果を出してくれて良かったですけどね。この馬はノーザンファームから来ているんですけど、やっぱりシッカリ乗り込まれていましたから、馬が出来ていたのでしょうね。

タイセイビジョン

-:お父さんはタートルボウル。トリオンフやダートの長丁場のアンデスクイーンがいる血統ですね。

菊:血統的にも、方向性を掴みかねるところはありましたが、見た目は距離が長いところではない感じでしたからね。1600mくらいは行けそうな体つきはしていますけど、あとは気性ですかね。走った時に一生懸命になり過ぎたら、やっぱり持たないですからね。その辺がこの間は上手く嵌まったというか、能力があったから上手くいきましたけどね。

石橋脩さんも「新馬戦ということで、ちょっとボケっとしていて、スタートはそんなに行く気がなかったみたいだ」と言っていましたけど、コーナーに入る前くらいから分かってきたのか、急にハミを取り出して、引っ掛かり気味だったみたいでしたからね。4コーナーでも膨れ気味だったし、制御不能になるところまで行かなくて、良かったですけどね。結果、「能力がありますね。また乗りたいです」と評価してくれました。

課題は2戦目のテンション 長距離輸送の見えない疲れ

-:前走後の馬の雰囲気、ダメージは大丈夫でしたか。

菊:ダメージもなかったですね。放牧に出した後、放牧先でも「元気一杯だ」と言っていましたし、そんなにカリカリする訳でもない。放牧から帰ってきた時も落ち着いていましたし、そんなに影響はなさそうですね。ただ、スイッチが入ると、けっこうガッとなりますね。競馬の時もパドックまではメチャクチャ大人しくて、大丈夫かなと思ったんですけど、地下馬道に入って、返し馬に入るくらいにはけっこうグイグイとなっていました。返し馬でも引っ掛かり気味になったので、石橋さんにも「返し馬で引っ掛かるかもしれません」と言ったのですけど、やっぱり頭を上げて行っていたから、大丈夫かなと思いましたけど、力一杯走っていましたね。

-:その点、函館は地下馬道もないですからね。

菊:そうですね。それは助かるかもしれないですね。

タイセイビジョン

-:初戦はちょっと外を回って、大味な競馬でしたけど、逆に言えば、次は1200で馬に囲まれる展開になる可能性もある訳じゃないですか。そういう心配はないですか。

菊:小回りですしね。コーナーも阪神よりもキツいですから、その辺がどうかですよね。上手く立ち回れるのか、器用に立ち回れるかどうかは、やってみないと分からないですけどね。ただ、周りを気にするようなことはないですし、めちゃくちゃストライドがデカいという訳でもないし、だからと言って、ピッチでもないですから、それなりに回れそうな気はしますけど、2回目の競馬なので、どういうテンションになるか、です。ましてや、阪神の新馬を使って函館という事例は、このレースではなかなか少ないですからね。

-:前走が福島ならイメージはありますよね。

菊:しかも、放牧先の牧場経由で、北海道に直接入れるというのであれば、まだあり得るかもしれませんが、栗東に入れて、栗東で(追い切りを)やって、2週間前にまるで古馬かようにやるのはなかなかないですからね。今はまだ落ち着いていますけど、2歳ですからね。しばらくしてから疲れが出るということもありますからね。古馬と違って、やっぱり移動とかにも慣れていないですからね。

タイセイビジョン

▲調教中のタイセイビジョン(7月3日栗東トレセンで撮影)

-:馬体は落ちていないですか。

菊:そうですね。意外と落ちていないですね。450台くらいで、キープは出来そうですけどね。割と減っていないですね。

-:しかし、厩舎は2歳戦でも勝ち上がりが続出。サラスでマーメイドSも勝って、重賞初勝利でしたね。

菊:流れはいい感じですね。先生も一生懸命、頑張ってくれていますから。それが長所じゃないでしょうか。熱い人ですからね。

-:馬の将来像としてはどういうタイプになってきそうですか。

菊:もうちょっと距離が延びるところまで走ってくれれば、だいぶ広がりますからね。1200mに固執してしまうと、そこしか使えなくなりますからね。ここで1200mを使って、その後、距離を延ばすのが難しくなってきたら、なかなか大変ですけどね。マイルだと、レース選択も広がりますから。気性的な部分で真面目過ぎるところが、短い方向に持っていってしまうのかもしれないですね。

タイセイビジョン

▲函館に到着したタイセイビジョン(12日撮影)

-:手前の変換はすごく綺麗じゃないですか。

菊:育成段階から良かったのかもしれませんけど、その辺の不器用さはないですね。

-:未知の部分も大きいと思いますが、レースに向けて意気込みをお願いできますか。

菊:頑張ってくれたらいいかなという感じですね。まずは順調に競馬まで持って行けたらと思います。ゲートを切ったら、もう僕らが出来ることはないので、そこまで体調を崩さずに、順調に持って行けたらいいかなと思いますね。

-:今年の函館は、週末は雨が多いのですけど、馬場はどうなのでしょうか。

菊:パワーはありそうな気はしますからね。軽い、速い馬場じゃないといけないということはなさそうですからね。洋芝も関係なさそうですからね。瞬発力よりも長く脚を使うタイプでしょうね。

-:ありがとうございます。