【香港ヴァーズ】ラッキーライラック 輝きを取り戻した2歳女王が香港でG1連勝へ
2019/12/3(火)
これまでの早めに動く正攻法の競馬から、差す競馬でエリザベス女王杯を制し、昨年のチューリップ賞以来の勝利を挙げたラッキーライラック。強い競馬を見せながら、なかなか勝てない悔しい時期を乗り越え、次のターゲットは世界の強豪が集まる香港ヴァーズ。さらなる成長を遂げ、初の海外遠征、そしてG1連勝へ向けての手応えを語ってもらった。
-:香港ヴァーズに出走するラッキーライラック(牝4、栗東・松永幹厩舎)について、これまで色々苦労されていて、久し振りにエリザベス女王杯で勝ちました。まずは勝因を教えていただけますか。
丸内永舟調教助手:やっぱり力があるなというのが一番ですよね。勝てない時でも差のない競馬をしてくれていたので、改めて力がある馬だなと思いました。やっぱり勝ったなと。
-:これまで本命馬の競馬に徹して2~3番手の外側を走って、先行抜け出しという形でした。エリザベス女王杯では少し変えて、差す形にして結果が出ましたね。上がり最速で勝ち切った訳なんですけど、それが出来たのは体重を絞ったとか、そういう厩舎側のプランもあったのでしょうか。
丸:やっぱり人気が落ちているというのが良かったんでしょうね。いつも上位人気だったので、みんなにマークされる立場にいましよね。石橋脩ジョッキーも1番人気の競馬をしなきゃいけないというのもあったので、あまりリスキーなことも出来なかっただろうし。石橋脩ジョッキーはスムーズな競馬をしようとしてくれたんだと思います。スミヨンジョッキーは、1回こっきりというのもあっただろうし、とにかく先入観ないまま行けたのが一番良かったのかなと思いますね。
-:スミヨンの判断に応えて、あれだけ終い伸びてくれたラッキーライラックなんですけど、展開的には前有利でクロコスミアが2着に残っているぐらいですからね。
丸:そうですね。だから、ちょっと後ろかなという感じはしたんですけどね。ゲートの所で観ていました。坂を下っている所で、これは前が残るなというのが分かりましたよ。ラッキーライラックは内にいたので空くのかなという思いで観ていたんです。ちょうどスルスル上がっていったので、行けるんだなという感じでした。
-:その辺で勝ちを意識したということですね。
丸:場内の実況で「ラッキーライラックが内から…」というのを聞いて、勝ったんだなと思いましたね。(自分が生で観ていた)後ろからじゃ距離感が全然分からないので、実況を聞いて初めて勝ったんだなと。
-:勝った時の実感はどんな感じでしたか。
丸:とりあえずホッとして、やっと勝てたんだな~という感じでしたね。
-:丸内さんはずっとラッキーライラックを強いと思っていたけども、ようやくその思いが現実に見られたということですね。
丸:そうですね。
▲うまくインを突いた好騎乗が光った
-:家に帰ってビデオで観て、どうでしたか。
丸:スミヨンはやっぱりすごいなというのが一番ですよね。ラヴズオンリーユーのミルコ(デムーロ)が内にいたら空いていない訳だし。ミルコもクロコスミアとラチとの間にスペースがないと判断したから右ステッキに持ち替えた。一瞬でそこを見て内に突っ込んだので、スミヨンの動物的な勘がすごいなと感じました。
-:全てが分かっていたかのように、未来から来た人がやっているかのようでしたね。
丸:そうそう。僕らじゃ絶対に、内にミルコの馬がいて、ミルコが右ステッキに持ち替えて、左にヨレているとは思わないですからね。だって、あれはコンマ何秒かの世界でしょ。やっぱり世界のトップジョッキーはすごいなと思いますね。
-:終わってからの馬の様子はいかがでしたか。
丸:結局、スローの上がりだけの競馬だったですし、しかも、直線でも内を真っ直ぐ走ってきたので、ダメージは全然なかったですね。レコード決着のヴィクトリアマイルとか、レコードに近いタイムだった府中牝馬Sの方が余程しんどかったと思います。府中牝馬Sはフレッシュだったので、しんどさよりも良くなる方が大きかったですからね。
-:今回は意図的にちょっと絞ろうというプランで行った訳ですか。
丸:府中牝馬を使った後のエリザベス女王杯は絞れるだろうと思っていました。
-:それだけよく食べるのですね。
丸:そうそう。それで、大きく増えて帰って来たんですけど、それって今回だけかもしれないですし。1回使ったら元通りに戻ってしまうかもしれないし、やっぱり成長していたのかもしれないし、という不確定な面もありました。府中牝馬Sの後、見ていたら、やっぱり良くなっている、やっぱり成長しているというのが確信になりました。体もすぐに戻ったので、これは本物だなと。府中牝馬Sが終わってから、1週間毎に2キロぐらい減っていたんですけど、それは普通の流れでした。あとはどれだけ減ろうが関係なくて、ちょうど良い体重で出走できそうだなと。
-:でも、イメージしているよりは減っていなかったですよね。
丸:そうそう。だから、体質が強くなったんだと思います。518~514ぐらいかなと思っていた所、上限の一番上の所だったので、想定内は想定内だけど、一番良い所で出走できましたよね。
-:そうなると余力を残して香港に行けますね。
丸:ちょっと日程的にはしんどいのかなと思いましたけど、良いんじゃないでしょうか。
-:今回のポイントはどこですか。
丸:輸送なのかなと。輸送であったり、環境の変化ですよね。やっぱり出国検疫に入って、ちょっとソワソワしたりしていました。慣れてきた頃にラヴズオンリーユーの回避が決まって、いなくなって。また1頭になっちゃった感じでした。出国検疫に2頭いたのが、1頭だけになったんで馬が寂しがったんですよね。今日(11/27)出発なので、向こうでもアーモンドアイが着くまで、牝馬は1頭だけなので。
-:それが2日ぐらいあるのですか。
丸:4日ぐらいあるのかな。
-:4日もあるのですか。その間は丸内さんが傍にいてあげないといけないですね。
丸:それはそれで考えようで、馬は落ち着いていますから。人間を頼ってくれる時期というのは調教する側としては好都合でもあるんです。やっぱり普段ならCWコースに入っても行きたがるような所もあるけど、出国検疫中は馬がいない真っ暗な時間帯だから、折り合えて行けます。そこは硬くなってきた口も柔らかくすることが出来るのでプラスに考えています。
自然体で遠征に挑む丸内調教助手(右端)
-:向こうに行ってから、特別にしようとしていることはありますか。
丸:特にないですね。
-:もう整えるぐらいで、レースを使える感じですか。
丸:そうですね。だから、これをしなきゃ、これがしたいんだというのは特にないので香港の環境で出来ることをやるだけです。
-:あとは、この間のエリザベス女王杯みたいな内枠とか、レース上における良い条件に当たることですね。
丸:そうですね。とにかくスムーズに行けたら良いなと思いますね。
-:最後に、今回も応援しているファンにメッセージをいただけますか。
丸:チューリップ賞以来、ようやく勝ったので、この流れを続けられたら良いなと思っているので、一生懸命走るラッキーライラックを応援してあげて下さい。
-:ありがとうございます。気を付けて行って来て下さい。
丸:ありがとうございました。
プロフィール
【丸内 永舟】 Eishu Maruuchi
高校中退後の17歳から湖南牧場に7年間務め、24歳の時にJRAの厩務員過程に合格。栗東・山本正司厩舎でヘヴンリーロマンスを担当する。2007年に山本厩舎が解散し、ヘヴンリーロマンスの主戦騎手だった松永幹夫厩舎へ。これまでアウォーディー、ラニ、ラッキーライラックといった松永幹厩舎の看板馬を担当している。