【ホープフルS】ヴェルトライゼンデ 未知の魅力にあふれる良血
2019/12/26(木)
兄のワールドエース、ワールドプレミアともに重賞ウイナー。母マンデラが産んだ3頭目の牡馬であり、2戦2勝でホープフルSを迎えるヴェルトライゼンデも偉大な兄に続く可能性を十分に秘めた素質馬。今の中山の馬場はパワーが勝っているこの馬には申し分ない舞台。未知の魅力にあふれ、「ワールドエースっぽくはない」と語る陣営に手応えを聞いた。
-:ホープフルS(G1)に2戦2勝のヴェルトライゼンデ(牡2、栗東・池江寿厩舎)が挑みます。厩舎としても、ワールドエースの半弟、今年の競馬界的にも菊花賞を勝ったワールドプレミアの弟ということで注目の存在だと思います。
兼武弘調教助手:デビュー前は捌きが硬めで、どちらかと言うと、イメージとしてはダートっぽい感じがしていましたね。重い芝が向いているような気はしていました。新馬の時はちょうど馬場が重い状態だったので、条件的には向いていると思ったところ、実際勝ち切ってくれましたね。
-:そういう意味では、前回の京都(萩S)も、今年の京都は例年以上に硬いイメージではないですし、稍重発表ということで決して軽くはなかったのではないでしょうか。
兼:そうなんですよね。そういったところで、しっかりと追い比べで勝ってくれました。スミヨン騎手のコメントが「硬い馬場ならもっと伸びていた」みたいな感じだったので、逆に自分では正直、驚きでしたね。でも、現状、重たい馬場でもやれるのは間違いないですしね。
▲しっかりと勝ちきった萩S
-:次の中山コースともなれば、重たい馬場とは意味は違うかもしれないですけど、開催最終週ですし、坂で多少パワーを要求されると思います。
兼:やってみないと分からないですが、坂に関して言えば、そこまで苦にはならないのかもしれないですね。どちらかと言うと、スピードよりもパワーが勝っているイメージがあったというところで、実戦に行ったら、しっかり動けているし、こちらが思っていた以上のパフォーマンスをしてくれたという感じじゃないでしょうか。
-:3戦目に向けての上がり目というのはありそうですね。
兼:これからもっと良くなってきそうな馬ですし、もっとしっかりもしてくるでしょうしね。もちろんまだ2歳ですし、帰ってきてからも順調に調整できているかなと思いますしね。
-:一つ上の兄(ワールドプレミア)が菊花賞を勝って、もっと上のお兄さん(ワールドエース)はもはや種牡馬になっていますからね。
兼:ワールドエースは池江厩舎にいましたけど、ワールドエースっぽくはないんですけどね。それでも、この馬の能力も非凡ですし、別の厩舎なので実際にマジマジと見た訳ではないんですけど、どちらかと言えばワールドプレミアに近いのかもしれないですね。ワールドエースっぽい感じではないですね。
-:産駒も今年デビューしたワールドエースは改めてどんなタイプでしたか。
兼:スピードがあって、乗り心地もすごく良かったですね。まさにディープ(産駒)という感触でしたね。結果、クラシックは獲れなかったですけど、本当に瞬発力、スピードがあって、馬の跳びが良かったですね。
-:やっぱりヴェルトライゼンデとはちょっと変わっていますね。
兼:種牡馬がドリームジャーニーというところですからね。ただ、ドリームジャーニー自体は別にそんなに重巧者という訳ではなかったんですけどね。
-:ピッチ走法の代名詞みたいな感じでしたね。
兼:そうそう、そんなところがありましたからね。ただ、ヴェルトライゼンデはピッチ走法という訳ではないですね。
-:ここまでは走りのタイプを伺いましたが、精神面はどうでしょう。
兼:メンタルは落ち着いてきている感じはしますけどね。初めは多少チャカチャカしていましたけど、だいぶ落ち着いてきている感じはしますけどね。普通に、順調に調整できているし、現状では言うことはないですね。あとはこれまで以上に強い相手が出てきますから、この中でどういう競馬をしてくれるのか、楽しみではありますね。
さすがに頭数が揃ってしまったら、2歳戦ですし、どういうような形になるのかが予測できないですからね。加えて中山で小回りですし、何があるか分からないですからね。
▲坂路でパワフルな動きを見せるヴェルトライゼンデ(左)
-:どちらかと言えば、前走で厩舎の馬(アルジャンナ)が屈した最大のライバルがスピードタイプですかね。
兼:あの馬(コントレイル)は強かったですね。2着のアルジャンナも相当走る馬で、あの馬がいなければ、普通にレコードで走っている訳ですからね。コントレイルは「相当強いな」と言える内容でしたけど、この馬だって、もしかしたら馬場が重くなれば面白いかもしれないですからね。とりあえず今のところは順調に来られていますしね。
-:最終的にはどういうタイプというか、どういう条件の馬になりそうですか。
兼:ちょっと重複しますが、小回りは合っているので。ある程度イメージとしては、重ためな感じでも良いのかなと思いますね。あと、競馬センスもありますからね。前走も直線で並んでからも強かったですよね。あそこでしっかり勝てたというのがデカいなと思いますし、こちらの思惑以上に走ってくれているなという感じですけどね。
距離は1ハロン延びても、問題ないでしょう。あとは良いポジションに付けて、競馬が出来れば、ですけど、スタートもある程度すぐに出るし、良いポジションで運べるんじゃないでしょうか。モマれ弱さもないですから。
-:ありがとうございました。
プロフィール
【兼武 弘】Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗りを経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。