陣営の夢を背負ってメイショウマンボが2冠へ発進
2013/9/15(日)
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春競馬の名シーンでもあった武幸四郎騎手の涙のG1勝利。聞けば、飯田明弘調教師を男にするために厩舎一丸となり、その飯田明師より絶妙のさじ加減で仕上げの指示などもあったという。その他、様々な競馬人の夢を叶えたメイショウマンボ(牝3、栗東･飯田明厩舎)の秋始動はローズSから。奇しくも幸四郎騎手と同期で元ジョッキーの今村康成調教助手に、G1馬として臨むシーズンへの意気込みを伺った。
飯田明師の感覚が光ったオークス
－：秋緒戦にローズSを予定しているメイショウマンボの話をお聞きします。オークスの勝利はいろんな意味で感動的でした。これだけ社台、ノーザンFが繁栄している中で、個人馬主さんで勝ったということもありますし、種牡馬にしても、スズカマンボというのは異色といってもいいはず。メイショウさんの関係者の喜びもひとしおでしょうし、スズカの永井さんも、すごく喜んでおられたということですが、今村さんとしてはオークスにはどういう思いがありましたか？
今村康成調教助手：惜しいところまでは来てはったんですけれど、先生(飯田明弘調教師)が、まだG1を勝つ機会が今までなかったので。メイショウオウドウとか、キョウワジャンヌなど、その辺が惜しいところまで来ていて、(引退まで)あと何年かしかないので、ここが最後のチャンスかな、というのは厩舎みんなで言っていました。桜花賞はちょっと人気しましたけれど、枠順の要因もありまして、流れが向かない感じでした。馬の具合はすごくよかったんですよ。それでも、「オークス向きや」って幸四郎(武幸四郎騎手)は言っていたので、その辺にちょっと期待していたから、ああいう結果になってよかったです。
－：その一週前に立ち写真を撮らせていただいた時に、正直、桜花賞からそれほど著しく良くなっている感じはしなかったんですよ。でも、その一週前の感じと当日の感じが全然違ったんです。一週前の追い切りをしてから当週の間で結構良くなった感触はあったと思うんですけれど、乗っている今村助手からすれば、どうでしたか？
今：体がずっと減っていたので、僕もそうなんですけれど、担当の塩見さんもそれを戻すような感じで調教を進めていたんですよ。調教を弱めるわけではなく、調教をしっかりしながら体を戻して。東京までは長距離輸送だったし、ある程度ガクッと減ると思っていたので、その点を考えながら先生とも相談して調教を進めていたのですが、ちょうどプラス10キロで出せたので、思っていた通りくらいの体重でした。
－：こっちにいた時は、プラス10キロより、まだあったということですか？
今：ちょうど輸送もあってプラス10キロくらいになるんちゃうか、という感じでした。先生も直前に見て「ちょうど体これくらいでいいわ」って言うてはったんです。本当は、競馬の当週は単走でサッとやる予定だったのが、先生がちょっと太いと思ったんでしょうね、急に前の日に「併せろ」と。その辺に気付いていたというか、目一杯の仕上げにしたかったんだと思います。
－：結果的にはナイスアドバイスですね。
今：僕らは“どうしようかな”ってずっと悩んでいて、速くなっちゃうので“やりすぎだけは嫌やな”って思っていたんですけど「速くなっても構わないから併せとけ」って。
－：その辺はやっぱり昔ながらの感覚が。
今：先生の中にはそういう考えがあったのかもしれないですね。
－：それで、うまく好走して。先ほど、桜花賞の時は「枠順」という話がありました。僕らも見ていてやっぱり、外枠であまりタメが作れないところが敗因のひとつだったんじゃないかなという風には思いました。今村さんとしては、桜花賞の敗因はどう分析しますか？
今：乗り方は、あの乗り方しかないと思うんですよ。桜花賞トライアルのフィリーズレビューを勝っているので、ある程度人気もしていますし、そこそこの位置にいかなあかんというのは思いました。幸四郎にしたら、あの乗り方がベストやと僕は思います。もし人気がなければ、ちょっと後ろに下げてタメを作って、最後の勝負に懸けられたとは思うんですけど、人気していたので勝ちに行く競馬をしてくれているのでね。その結果、負けましたけど、全然タメが作れなかったのは外枠のせいで、“やっぱりこの馬はタメた方が最後に来る”というのがはっきりわかったので、オークスについてはスッと切り替えられました。次また上手く仕上げればいい勝負ができるなというのはありましたね。
－：この馬の特徴としては、馬場が悪いよりは、良馬場の方が良さそうというコメントを耳にします。
今：今のところ、悪い馬場でもそこそこ走っています。こぶし賞とか、紅梅Sとか。紅梅Sは2着で負けましたけれど。
－：その時、幸四郎ジョッキーが｢馬場が良い方がいい｣と言っていませんでした？
今：あれでも頑張って走っていたので、馬場は渋ってもそんなに気にせんのかなというのはあります。まあ、そんなドボドボ馬場よりかは。
－：オークスくらいで、適度に時計が掛かる分にはこの馬にはいいと。そんなにめちゃくちゃ速い時計じゃなかったですものね。
今：そうですね。
ローズSは成長分でプラス体重の出走が濃厚
－：そこから夏場休養して戻ってきたわけで、体を見せてもらいましたけれど、一回り大きくなっていましたね。
今：すごく良くなって帰ってきたと思います。
－：体重は、オークスからどれくらい増えていますか？
今：先週、量った時点で504キロで、20キロくらいは増えているんじゃないですかね。また今日(9/5)に追い切りをして、来週もできるし、阪神まで輸送もありますからね。
－：骨格的に大きくなっていたら、プラス20キロ全部が太いというわけではないですか？
今：ちょっとおしりが大きくなって帰ってきたし、背も伸びたんじゃないでしょうか。成長分やと思います。
－：休み明けのローズSでは、体重に惑わされることなく全体のシルエットを確認したほうが良いですね。
今：まあでも、ローズSはそこまで目一杯には仕上げないというか、先(G1)を見据えているので。
－：では、当日はプラス10～12キロくらいの体重になるんですかね？
今：なるんじゃないですかね。
－：先を見据えた仕上げというお話ですが、今朝の一週前追い切りは、CWコースで今村助手がリードホースに乗って、マンボが後ろから追いかけてくるという調教でした。途中でマンボが行きたがるところもありましたね。
今：レース前やレースの時しかジョッキーは乗らないので、馬もジョッキーが跨ると競馬だとわかるんでしょうね。
－：今村助手のペースが遅すぎたわけではないですか？
今：全然ないです。予定していた時計よりちょっと速かったくらいです。
－：予定していた時計はどれくらいですか？
今：6F82～3秒くらいですわ。でも80ちょいくらいやったので。まあ、馬場はそんな目一杯外を回ってないんです。僕で7分目くらいで、マンボが6分目くらいですかね。だから普通より時計は2つくらい速いと思うので、大体予定していた時計くらいかなと。
－：見た目はそんなに速くなかったですね。
今：ちょっと馬場も重たかったので。それは見ている人が、みんなそう言ってはりました。
－：特に3コーナー手前くらいでかなり接近していましたから。
今：でも、今日は馬場もちょっと重たかったので、あの時計なら負荷は掛かっていると思います。
－：20キロ太い状態で帰ってきて、一週前の追い切りまで調教をしている中で、乗っている感じで変わったところや、良い意味で変わっていないところはありますか？
今：オークスの前まではずっと休まずに使ってきたので、落ち着かせることを重点的に、あまりイライラさせないように調教をしていたのですけど、今回はリフレッシュをして帰ってきたので、ものすごく落ち着いているんですよね。ちょっと成長したというか、堂々としたというか。
－：それは、ダラけていたり、スイッチがオフになっているわけではないですか？
今：調教に入っちゃうとフッとスイッチが切り替わるので、その点は全然。普段の仕草とかがすごく落ち着いたかなというのはあります。
スタートが速い秋仕様のマンボに注目
－：G1ホースになった以上、ファンは期待ばかり大きくなってしまうと思います。“目指すところは秋華賞”という、一歩先を見据えたローズSなのですが、どういう競馬になりますか？レースタメを造りたいマンボにとって、人気を背負うというのは相反することですが。
今：僕らは、万全の状態で送り出すだけなので、あとは当日のレースの流れもありますし、その辺はジョッキーが、何回も乗っていますし、考えてはいると思います。僕らがどうこう注文を付けることもないですし、うまくローズSを使って秋華賞へと送り出すことが僕らの仕事なので。
－：開幕2週目なので、おそらく馬場状態が良いところで初めて走るのかと。その辺に関しては特に問題ないですか？
今：問題ないと思います。今スタートがすごく良くて、ゲートの中でもちゃんと立てていますし、その点は全然心配していないです。
－：オークスの内容を見ても、馬の後ろにつけている時に、それほど乗りにくさはなさそうですね。
今：オークスは枠順が内やったので、出たなりでコースロスなくジーっと折り合いに専念してくれました。先生の指示も内枠で「道中はジーっと内で我慢して、4コーナー向いてどっか空いたら外に出せ」って、ホンマそのまんまやったので「言った通りに乗ってる」って喜んではりましたし、何もかもうまくいきました。その辺は幸四郎がわかっているし、折り合いもそこまで難しい馬でもないですので。
－：この馬のタイプとしては、結構、終いが長くて、良い脚を長く使うじゃないですか。一瞬の瞬発力というのはどうですか？
今：攻め馬の感じだと、“スッと動けるんちゃうかな”と思ったんですけど、レースで乗ったジョッキーさんは、みんな「ちょっとエンジンの掛かりが遅い」って言うんですね。「掛かり出すまでに、ちょっと時間がかかって、掛かりだしたら、長く良い脚を使う」と言います。調教ではスッと動けるので、その辺がレースとはちょっと違うんでしょうね。
－：レースはラップ自体が全然違いますからね。
今：だからその辺で、エンジンが掛かるのが遅くなるんでしょうね。
－：エンジン掛けなきゃいけないところが、馬にとっては一番しんどいところだと。
今：そうでしょうね。
－：それもあって、幸四郎ジョッキーも「オークス向き」という判断をしたのでしょうね。楽しみな素材のメイショウマンボですが、この先どれくらいまで活躍できそうですか？
今：一戦一戦無事に送り出すのがこっちの仕事なので、先のことより、目の前のレースに合わせて調整していくだけですね。
－：今村助手は毎朝マンボに跨って、その日のコンディションを確認して安全に一日を終えるという。
今：変わりがないのが一番良いことです。何か変化があると困るので。無事に行ってくれれば一番いいと思います。
－：これからも活躍すると思うので、秋華賞前も取材に来させていただくと思います。最後に、メイショウマンボを応援してくれるファン、もしくは幸四郎ジョッキーのファンにメッセージをお願いします。
今：いい状態で出せるようにこっちも努力して頑張るので、メイショウマンボと幸四郎、飯田明弘厩舎を応援してください。
－：今後ともよろしくお願いします。ありがとうございます。
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