関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

塩見覚調教助手

一週前追いきりの感触と状態

-:調教の動きを見ていると、結構、納得させるのに手こずるというか、エンジンをなかなか掛けてくれない性格のようですね。

塩:ズル賢いですね。今日(10/3)も幸四郎にしたら、もうちょっとパーンと……、そういう理想はあったらしいです。でも、時計的に見ると、あの時計で、あれ以上ハジけたら、とんでもない時計が出るというのはね。「まあまあ、1週前にしたらちょうどですよ」とは言っていましたけど。

-:先にお話が出ましたけど、今日の1週前追い切りは2頭併せで行われましたね。四位ジョッキーが乗るシンゼンレンジャーを3~4馬身離れたところから、幸四郎ジョッキーがメイショウマンボに乗って、併せたのですが、3コーナーぐらいでは、もう内に並んでいくような感じで、我慢をさせているように受けました。

塩:今までは「500から山(坂路)へ」という調教だったのを、最近は「外でダクを踏んで、Eコースを半周回って、山」という調教を何回か続けたら、コースに入るのをゴネ始めてね。春までだったら外でダクを踏んで、そのままパーンと行くのを、僕が心配やったから、「速いところ(調教)は行きません」言うて、普通通り、中でダクを踏んでコースに入ってもらったんですけど、念のため、追うために僕が付いていっていたんですよ。元々、ズル賢いから、前からモゾモゾはしているんですけど、そんなにスムーズに馬場に入るタイプではないんで。今日も2回ほどゴネかけたから、僕が馬場に入るまで後を追ってみて、取りあえず馬場に入ったのを確認して戻って。そうしたら、もう4コーナーやったんですよ。だから、詳しくはわからへん(笑)。一番おいしいところは観られたんですけど、飯田君が代わりに見てるし、と思いながら。

-:上がってきた幸四郎ジョッキーの反応は「もうちょっとスパーンと来て欲しかった」という感じがあったんですね。

塩:ハッキリとは言わなかったけどね。ローズSの時も多分、そんなにパーンというタイプではないんでね。

-:写真を撮っている時にタイムは見られないじゃないですか。ローズSは“えらく時計が遅いな”と思って、写真を撮っていたんですけれど、時計を聞いたら、“アレ、そんなに出てるの?”と思って。今日も正直、79秒には見えなくて、“2頭でえらいユックリやな”と。

塩:だから、今ちゃん(今村助手)とかでも大変みたいですよ。その通り乗ろうとしたら、思っているより、はようなるから、「遅いぐらいでちょうどですよ」という。

-:それがオープン馬特有の(乗っている以上にスピードが出ている感触)?

塩:何ですかね。トビが大きいですからね。“我慢して放しました!スパーン!”というタイプでも調教からではないので。でも、時計だけで見たら、十分に優秀なんでね。

-:全然、重さはないでしょうし。

塩:う~ん、先週の段階でプラス8というのが……。何となく心配やな。“心配やな”というのは結果が出るまではね。

-:塩見さんは結構、心配しいのところがありますよね。桜花賞前に話を聞いた時に「奥さんに馬を気にしているのを、バレないようにしていたのに、めっちゃバレて」と。オークス前は「今回はどうするんですか?」と聞いたら、「もう俺はいつもソワソワ、イレ込むのを隠さないようにした」と。

塩:厩舎では上手いこと隠せていたけどね。家に帰ったらアカン。ソワソワするんで。極力あんまり心配な時でも、厩舎に来んとこと、いうのはあります。あんまり何かベッタリと張りつくのもね。

-:馬がリラックス出来る時間を。

塩:特にマンボは人がいると、常に怒っていますからね。エサを食べている時は当然、MAX状態で。

今:早く来ても(厩舎の一員としても)あんまりアレだし、遅く来てもあんまりね。「早く出せ」と馬が怒るし。

塩:お嬢様だから、面倒くさいですよ。だから、それは意識して、“必要以上に早よう来んとこかな”というのはありますけどね。大久保厩舎時代も、先輩らに「人間がおったら、馬が落ちつかへんねんから、チョロチョロすんなよ」と、よう怒られていたんで。やっぱり新規の時って、やっぱり何かチョロチョロするじゃないですか、仕事をやりたいし。「早く帰れ」とかね、よく言われていたんで。



秋華賞当日へ向けて

-:秋華賞もあと1週間ですけど、楽しみの方が多いですね。

塩:レースなんでね、ましてや直線が短いんで、前の馬に粘られたりするのも十二分に考えられ、“しゃあないな”という結果もあるかもしれんけど、それなりというのか、良い勝負はしてくれるとは思いますけどね。

-:競馬の格言にある「2走目のポカ」というのはないことを祈りますね。

塩:僕も祈りますね。ただ、今のところは本当に順調には。

-:もし、競馬場でプラス8キロだったとしても、ファンの人は重いな。という印象じゃなく、この馬の筋肉量が増えたという解釈で良い訳ですね。

塩:見た目は全然、太く映らないですしね。

-:オークスに続くG1制覇を。

塩:本当に獲れるものなら、何でも獲りたいですけどね。

-:応援しているファンもいると思うんで、メイショウマンボと言ったら、幸四郎ジョッキーの久し振りのG1だったですし、種馬がスズカマンボということもあります。メイショウさんだけじゃなく、スズカのオーナーもスゴく喜んでいたという記事も出ていましたから。

塩:喜んではるみたいですね。そうやねん、永井さん。

-:渋好みのファンにメッセージを。

塩:まず、メイショウモモカにお礼ね。夢にも思いませんでしたね。JRAのイベントに使われた馬なんで、梅田のGateJ.で写真展もしてもらったヤツの写真も1枚貰って、年末に掃除をしていたら出てきて、階段の踊り場のところに貼ってあるんですけどね。だから大体、朝に行く時か、帰ってきた時に「今日も行ってきます。今日も何ともなかったよ」みたいに、モモカにちゃんと手を合わせて言っています。その写真をバンバンと壁に貼ってあって、表彰式の時に赤いリボンを貰えるじゃないですか。当然、それも持って帰って来て。でも、使い場所に困るんですよね。それでちょうど良いやと思って、そこにビッとポスターみたいに飾ってあるんですけどね。これが2つ3つぐらいになれば良いかな、と思いながら、挑みたいと思います。

-:2つ目のボンボリを飾って下さい。

塩:ありがとうございます。

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【塩見 覚】Satoru Shiomi

競馬に縁のない家庭で育ったが、トレセンで働いていた知人の影響で興味を持つ。静内のグランド牧場で5年の勤務を経て、トレセンへ。ナリタブライアン、メジロパーマー、ナリタタイシン、シルクジャスティス、イイデライナーらを擁した大久保正陽厩舎から、厩舎を渡り歩き、現在の飯田明弘厩舎へ。
これまではオープン馬を一頭しか扱ったことがなかったが、母も手掛けていた自身所縁の血統馬メイショウマンボと運命的な出会いを果たす。デビュー当初のメイショウマンボについては「兄弟も走っていないし、そんなに期待もしてなかったんです。大人しくて自分で乗れたら良いや、ぐらいのスタンスでした」と振り返る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。