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榎本優也調教助手

昨年同様、毎日王冠では柴田善臣騎手とのコンビで勝利まで僅かのところまで迫ったジャスタウェイ。当初は痛い半馬身差かと思われたが、相次ぐ有力馬の回避で今年も天皇賞(秋)への出走に漕ぎ着けた。前哨戦と捉えられれば内容は文句なしで、今回は悲願を期待せずにはいられない。競馬ラボユーザーにはすっかりお馴染みの榎本優也調教助手に、改めて好走への条件を伺ってきた。

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【トレセンLIVE!】:ジャスタウェイを担当する榎本助手のコラム


最終追い切り後・榎本優也調教助手のコメントはコチラ⇒


舌縛りの効果?今年も毎日王冠を好走

-:毎日王冠はジャスタウェイ(牡4、栗東・須貝厩舎)の大好きなレースで、今年もまた2着に頑張ってくれました。あのレースを振り返ってください。

榎本優也調教助手:普通にゲートを出てくれたのが一番ほっとしました。ペースが遅かったですが、良いポジションで折り合って、最後までしっかり脚を伸ばし、良い競馬をしてくれたと思います。

-:年に一回だけ乗ってくれる柴田善臣ジョッキーとの相性は、相変わらずバッチリですね。

榎:そう思います。久々なのにゲートも決めてくれましたからね。

-:関屋記念の時は舌を出していましたね。今回は舌を縛ったようですが、その影響で真面目に走ったのかなという気がしました。舌を縛るといえば、最近ではエピファネイアが折り合いをつけるために舌を縛って、結果を出したというのもありますし、微々たることですけれど、馬にとっては大きい影響があると思いますか?

榎:実際の効果はハッキリとは分からないですが、悪いことでないのは確かですよね。一方で舌を遊んでしまっているのも良くないと思いますし。縛ったり、縛らなかったり、ありましたけれど、結局はどうなんでしょうね。

-:これまでも、一貫してやっていたわけではないんですね。それを統計的にみると、どちらが良さそうですか?

榎:あとで後悔するのも嫌ですし、縛った方が良いんですかね。舌を出して、僅差で負けて、ってなると悔いが残りますよね。それに舌を縛っても、昔ほど嫌がらないです。もともと口に何かをされるのが嫌いな馬なので、その辺も考えて舌を縛らない時もあったのですが、だいぶ大人になってきたこともあるし、これからは縛っていっても良いかなとは思います。



2000mでも従来のタメる競馬が理想

-:1週前追い切りが今日(10/18)、坂路で行われたのですが、シルヴァーグレイスに秋山ジョッキーが乗って、ジャスタウェイに福永ジョッキー。2頭併せで追われましたが、動きは良かったですね。

榎:良かったと思います。

-:終わってから福永ジョッキーに「乗る前の運動をしている時の仕草がちょっとイライラというか、ちゃかちゃかしているところが気になりました」という話をしたら「もともと大人しい馬なので、その辺は全然気にしていないし、今日の動きも良かったから、このまま1週間順調に行ってくれたら、それでいい」というコメントでした。

榎:いつもあんな感じなんです。坂路に入るのがいつものパターンと違うもので、そういうところにけっこう敏感なんです。下(コース)に行ったら、スッと全然大人しいんですよね。乗り替わられるな、というのが、たぶん分かるのでしょうね。

-:だから帰ってきた時は何もしないというか。

榎:そうなんですよ。

-:走る気が満ち溢れている時の仕草が、ああいうところでチャカチャカと出るのですか?

榎:毎日王冠の前も良い状態でしたが、良い意味で余裕があるというか、使ってから活気が出てきたというか……。若干うるさくなったと言えば、その通りなんですけど、さらに前向きさが出てきたようなところがあるので。


10/18(金) 坂路で52.4-37.9-24.7-12.6秒(一杯)をマーク










-:今回もある程度、後ろから差すという戦法で考えていますか?

榎:ペース次第だと思いますけどね。結局、前走もまともに出たので、じっとしていたらあのポジションだった、という感じでしたから。今までのレースを見てきて、一つ分かっているのは、前半で脚をなるべく使わないように、というところだと思うので。

-:それに2000mで使っているレースは、先行して負けていますからね。

榎:そうなんですよ。“2000m以上の距離になると、上がりが掛かるようになる”と言われますけれど、2000以上だと、後ろからタメて行ったレースがないんですよね。なので、そこは全然気にしてないですね。

-:2000でも1800みたいな組み立て方をできればですね。

榎:ええ。十分行けると思います!

-:体力的には1800であれだけ走っていれば、2000でも、1ハロン延びてバッタリと止まるというイメージは全くないです。

榎:前回もゴールを過ぎてからも余力がありそうなぐらいでしたから。

-:今年は未勝利で、3走続けての2着ですが、左回りも問題ないですし、人気以上の期待をしてもいいかもしれないですね。

榎:どれくらい人気するか分からないですが、去年以上の着順(6着)を求めてもいいぐらいのレベルになっているなとは思っています。

滑り込み出走の幸運を末脚に!

-:今回は、ジャスタウェイにとって最大のライバルは輸送ですか?

榎:そうかもしれないですね。去年はちょっとアクシデントがありましたけれども。
(交通事故による渋滞。一般道を経て影響を留めた馬もいたが、ジャスタウェイらは渋滞により到着時間が大きく遅れた)

-:何か対策として、なるべくジャスタウェイが渋滞に巻き込まれないように運ぼうというのはあるのですか?

榎:特にはないですね。去年に関しては、(土曜の午前)6時に出発した栗東の馬はまったくいつも通りに着いていたりしましたけれど、ウチはそういうことはせずに、いつも通りに。あとは無事を祈るくらいしかできません。

-:ファンの人はあまり知りませんが、エプソムCとか、毎日王冠、去年の天皇賞と、全て輸送がすんなり行ってないんですよね。そこがすんなり行ってくれれば、ゴール前の脚がどれだけ違うのかというところも見てみたいですね。

榎:う~ん、それでも十分頑張ってくれているんですけどね。

-:今の体重を分かる範囲で教えて下さい。

榎:最後に量ったのが、乗り出す前でしたけれど、506かな。その後もしっかり飼い葉は食べてます。今は510ぐらいじゃないでしょうか?

-:輸送して減る分を計算しても、498からちょいプラスぐらいが理想ですか?

榎:おそらく前回から減らないんじゃないかと思っています。





-:今ついている良い筋肉をそのまま持って、本番に向かえるようにという感じですね。改めて普段、接するにあたって、一番気をつけているのはどういうところですか?

榎:テンションが上がらないようにというか、ストレスをなるべくかけないようにと気をつけていますね。だいぶ精神的にしっかりしてきたのですが、2、3歳の弱かった頃のイメージがあるので、なるべくストレスをかけないように。

-:そういう意味では、今日の追い切りは、時計的には52秒台でしたが、馬場状態を考慮したら、たぶん1.5秒くらいは速い、価値のある時計だと思うので、来週あんまりやり過ぎて、ジャスタウェイのテンションが上がり過ぎるほうが怖いですね。

榎:まだ分からないですけれど、先生(須貝尚介調教師)には乗り役さんを乗せないでやるようにお願いしようと思っています。

-:ジャスタウェイの場合、直前の時計を気にするよりも、精神的な面も考慮して、来週の時計がそんなに速くなくても、気にしなくいいということですね?

榎:そうですね。

-:3走連続2着で歯がゆい思いをしているファンも多いと思うので、大一番の天皇賞に向かう意気込みをお願いします。

榎:なんとかぎりぎり出走させてやることができそうなので、3戦どこか勝てただろうという気持ちはずっとあるのですが、一番目標にしていたレースを順調に迎えられそうなので、大一番で良い結果を出したいなと思っています。応援して下さい。

-:滑り込みのラッキーを生かして、歯がゆさを晴らせるよう、頑張って欲しいです。「トレセンLIVE!」でも直前の情報をお願いします。

榎:分かりました。ありがとうございました。

●毎日王冠前・ジャスタウェイについてのインタビューはコチラ⇒



【榎本 優也】Yuya Enomoto

競馬ラボでは『トレセンLIVE!』のコーナーでコラムを担当。
大の競馬ファンである父親の影響で、幼い頃から阪神、京都競馬場へ足を運ぶと、武豊騎手に憧れてジョッキーを志すように。視力が足りず受験資格をクリア出来ず、断念せざるをえなくなったが、競馬関係の仕事に就きたいという思いに変わりは無く、牧場勤務を経て、25歳の時にJRA厩務員課程へ入学し無事卒業。
しばらくの待機期間を過ごし、09年5月に須貝尚介厩舎で待望の厩務員生活をスタート。 7月には持ち乗り助手となり、それ以来、2頭の競走馬を担当している。

調教助手としては、アスカクリチャン、アスカトップレディ、クリーンエコロジー、コレクターアイテムなどを手掛け、2012年上半期には担当するジャスタウェイがアーリントンC(G3)を制して人馬ともに重賞初制覇。NHKマイル、日本ダービーとG1の舞台を経験した。

現在は厩舎の屋台骨を支える傍ら、趣味である一眼レフカメラで厩舎の愛馬たちを撮影。関西のトップステーブルに登り詰めた須貝尚介厩舎のスポークスマン的な役割を果たしている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。