元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ベテランの技
2015/8/27(木)
競馬界のお祭りといえば、そのひとつにワールドスーパージョッキーシリーズ改め、ワールドオールスタージョッキーズが札幌競馬場で行われますね。今年選出された騎手はダービー騎手のM.デムーロに関西関東で勝利数TOP3の福永君、豊ちゃん、そして岩田君、関東からは戸崎君に蛯名君に柴山君と豪華なメンバーとなり、海外からもモレイラやジャルネ、ターナーなど面白いメンバーが揃いましたね。騎乗馬の抽選も終了し、どの騎手が優勝するのか、世界・地方選抜とJRA選抜のどちらが勝つのか、非常に楽しみな2日間となります。きっと暑さがなくなってきた札幌の大地はファンの皆様の熱で熱くなることと思っています!是非、世界の技をその目に焼き付けてください!!
それでは先週のレースを振り返りましょう。まずは、実力馬が集まった札幌記念ですが、勝利したのは四位君騎乗のディサイファでした。今まで、大事に使われてきた馬ですから、陣営としても秋に向けて非常に嬉しい勝利になったと思います。レースも3年連続でハナをきったトウケイヘイローを的にすると、上手くラキシスの外側につけ、4コーナーでは1番人気のトーホウジャッカルの脚がないと見るとラキシスよりも早めに小回りのコースを活かす追い出しをし、見事なまでに他馬を抑えて勝利しました。正に四位君のベテランの技が冴えるレースを見せてもらい、思わず「これは、上手すぎる!」と声が出てしまいましたよ。
2着には鬼脚で突っ込んできたヒットザターゲットと小牧君が入りましたが、こちらもベテランの覚悟を決めた騎乗だったと思いますね。寸前まで、馬の後ろに入れ、脚をため、爆発させた時の爆発力は今後のG1戦でも通用する力だと思わされました。逆に残念だったのはトーホウジャッカルですね。不安に思っていた洋芝の影響もあったと思いますし、何よりも馬体が寂しく写りました。もともと繊細な馬なだけに、輸送の影響があったのか、はたまた夏にやられてしまったのかなど色々な推測が自分の中で飛び交っています。休養を取り、無事、一級戦線に戻ってきてくれることを願っています。
小倉の北九州記念でもベテランの技が光りましたね。豊ちゃん騎乗のベルカントが、2戦連続の重賞制覇を決めました。こちらは、前走の時より更に精神面での成長も見られ、更に1200mという距離に馬が完全適応しましたね。右に、右に寄れる癖も馬の性格の全てを熟知した豊ちゃんのポジションにペースワーク、そして追い出すタイミングと全てがベテランの技でした。先週は北に南にとベテランの技が冴え渡る週となり、見ているこちらまで熱くなるレースを見せてもらいました!
今週はワールドオールスタージョッキーズだけではありませんよ!北の札幌ではキーンランドCに新潟では新潟2歳Sが行われます。新潟2歳Sは、今までにイスラボニータやハープスターなどを生んだレースだけに将来を担う上でも楽しみな一線となります。その中で、注目はロードクエストになりますね。初戦では、スタートこそ上手くいかなかったものの、恐るべき末脚を見せ付けて勝利し、今回が次へのステップとなるか非常に大事な一戦だからです。馬を見ていると少し早熟型かなと感じるところからも、ここは外せないでしょうね。2番手にはルグランフリソンを挙げたいと思います。この馬は、デビュー戦では口向きが悪いところを見せながらも完勝した点からも、弱点がどこまで改善されているかに注目したいと思います。ただ両馬共、デビュー戦で騎乗したミルコが札幌に行くということで騎乗変更なっている点がどう出るのかが心配ではありますけどね。
ベテランの技が光った先週、今週は若手が勢いのある技を見せてくれることを願いながら、応援したいと思います。そして、頑張れJRA選抜!!!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。