元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
負けることは成長へのチャンス
2016/3/10(木)
佐々木監督は舐められている。優しすぎる。世代交代ができていない。そしてキャプテンの宮間選手は厳しすぎるから若手が育っていないなど多くのメディアが連日のように情報を流しました。勝てば天国、負ければ地獄。期待が高ければ高いほど、負けたときの批判も厳しくなるのは競馬も同じです。しかし、全てを勝つこと、全てを思い通りになることは、不可能だと私は思っています。その中で、どれだけのことを学び、どう前に進むかが大事なのではないでしょうか。その成果を結果として受け取り、ダメなら更に学ぶ、成功したら次のことを学んでいかなくてはいけないと思います。
ミスター競馬の豊ちゃんも良くこういう言葉を言っています。「もっと競馬が上手くなりたい」。あれだけの結果を残してきた騎手が言い続けるのは、きっとそういうことなんだと思います。今回、なでしこは負けました。批判は当然です。しかし、批判だけをするのでなく、選手達がこういうことに気づき、考えることを応援して行かないといけないと私は思っています。
競馬界でも、連勝を続けていたミルコの記録がチューリップ賞でストップしましたね。その連勝を止めたのが謙一君とシンハライトでした。レースはまさにデッドヒート。スタート直後、ヴィブロスが引っ張る展開となる中、向正面ではぴったりとジュエラーと合わせ、コースを限定させると、4コーナーでも非常に上手い位置取りでした。前走でも併せてから伸びたことを考え、相手になるジュエラーの進路を作りだし、見事、ハナ差出して勝つという技術を見せ付けての勝利でした。
勝利後には「ミルコが連勝している中で、日本人騎手は何してるんだと言われない様に」と言っていましたが、まさに、負けている間も自分自身を見直し、前に進んだ結果だったと私は思います。美浦に挑戦しに行った岩田君や今回の謙一君のように、負けてなお成長するために動き、結果を出す騎手は本当に素晴らしいと思います。こうなることで、ミルコもまた強くなってくるでしょうし、これが日本競馬の発展に繋がっていけばと、心から思っています。
そのミルコが前日の悔しさを持って挑んだ弥生賞ですが、こちらではルメールとマカヒキのコンビが見事な走りで勝利しましたね。土日で9勝と爆発したルメールのレース運びは完璧だったと思いますね。スタート直後、スタートが早くないと判断するとスッと一番後ろにつけました。それとは対照的にリオンディーズは1コーナーから引っかかる気性の悪さを見せていました。そのまま入った向正面では、ルメールが最後方から、脚の使えるポジションへと変更。ここが、前日のルメールの騎乗との違いでしたね。脚を余して負けたアルビアーノの戦いを糧にしたレース運びで、まさに完璧でした。そのまま迎えた4コーナーでは他馬がバテて下がったため、思わぬ形で早めに先頭に立ってしまったリオンディーズが物見をしてしまう中、ぴったりとマークしていたエアスピネルと併せる形から一気に突き抜けルメールとマカヒキが勝利しました。
今回の勝利でクラシック路線に新たな怪物が登場しサトノダイヤモンド、リオンディーズ、そしてマカヒキといった3強になるのではないでしょうか。負けたとはいえ、引っかかり、早めに先頭に出てしまったリオンディーズには本番に向けて、逆に好材料になったレースでしたし、展開ひとつで勝利馬も変わるクラシックになるのではないでしょうか。これで、また面白くなりましたね。あとは自分の好みと感覚で、クラシックを応援しましょう!
今週は中日新聞杯に阪神スプリングジャンプ、そして中山牝馬Sにフィリーズレビューが行われます。私の注目はフィリーズレビューになりますね。その中でも、まず注目したいのは、馬体さえ戻ってきていれば非常に楽しみになるアットザシーサイドに、立て直しができたかキャンディバローズも気になっています。その他にも抽選が通れば、私のイチ推しはナタリーバローズになりますね。前走は馬場の悪さと休み明けと不運が重なる中での②着は立派ですし、何よりワクワクさせてくれる馬に感じます。このワクワクが本物かどうかは日曜日の楽しみです!牝馬重賞に中京での重賞、そして障害競走に新しいアイドル菜々子ちゃんと楽しみがいっぱいの週末は是非、競馬場で!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。