元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
一番強い馬の一番強い競馬
2016/12/1(木)
皆様、こんにちは!今週は衝撃なニュースがトレセンに流れましたね。まずは、今週のチャンピオンズCに出走予定だったホッコータルマエの引退。ダートG1 を10勝もしたレジェンドの引退に、ファンの皆様同様、さみしくなりました。その他にも念願のG1制覇をしたダノンレジェンドも引退しましたし、ダート界は本当に時代が変わりそうですね。そして、もうひとつのニュースがタガノトネールの安楽死です。前走、脅威のレコードタイムで優勝し、いざG1へと思っていた矢先のニュースでした。馬の感情は本当に起伏が激しく、コントロールするのも非常に難しいことを再度考えさせられることになりました。本当に心が痛い話ですが、起こりうる最悪な想定を常に考えながら、ホースマンは日々、努力を繰り返していきます。
悲しい話から、先日行われたジャパンカップの話に参りましょう。今年から①着賞金が3億円となった日本を代表するG1を制覇したのは、日本を代表する世界的名手 豊ちゃんと日本を代表する演歌歌手 北島三郎さんのキタサンブラックのコンビでした。レースは2コーナーで決しましたね。スタート直後、負けなしの最内枠を引き当てたキタサンブラックがハナを奪いに行くと、少しけしかけられた瞬間、迷わず豊ちゃんはペースを上げ、引き離しました。ここで、他馬との競合を避けたことで、一番強い馬が一番強い競馬をすることができました。そして、迎えた直線でも、待っていましたとばかりに追い出すと、一気に突き離しましたね。圧巻の強さでの勝利で、日本を代表する馬へと上り詰めました。
②着にはサウンズオブアースが7度目の重賞銀メダルとなりました。こちらも、完璧なレース運びだったと思います。しかし、どうしても勝つためには、この馬の脚質からしても、田辺君や吉田隼人君が行ってくれていればというところだったと思います。③着のシュヴァルグランも本当に力をつけましたね。スパっと切れる脚よりも、ワンペースな馬に見えますし、祐一君の騎乗も素晴らしかった。欲を言えば、4コーナー手前で、もう少し他馬についていくことができていればと思います。しかし、負けた2頭にとっては中山に替わる次は楽しみな戦いになるでしょう。有馬記念では枠順が非常に大事になってきますから、今から皆様も要チェックですよ!!
では、今週の競馬の話にまいりましょう!中京に中山、阪神競馬が始まります。くれぐれもお間違えのないように!そして、中京ではチャンピオンズCがおこなわれます。ダートチャンピオンを決める戦いに、熱いレースを期待しています。その中でも、1番人気に推奨されるのがアウォーディーになるでしょうね。ダート転戦後は6戦6勝と圧倒的な強さを誇る当馬に、またしても絶好調 豊ちゃんのコンビがどこまで行くのか非常に楽しみな一戦になります。2番手には、これまた豊ちゃんの相棒であったコパノリッキーが選ばれると思います。こちらは騎乗にルメールを迎えて、万全の態勢といったところではないでしょうか。何よりスタートが上手な騎手ですし、馬の気持ちのままに走らせてくれば非常に面白いと思っています。
その2頭に対抗することができるとすれば、私はゴールドドリームではないかと思っています。前走は休み明けと展開にやられましたが、あの展開でも一頭違う脚を見せたところからも、本番では逆転可能ではないかなと思っています。また騎乗にはミルコを迎え、長い脚が使える馬と騎手のコンビと言うことでも注目しています。そして、その他にはこちらも長い脚と長く追える騎手ムーアとのコンビで挑むノンコノユメも良いのではないでしょうか。力はあるモーニンからも目が離せませんね。ダート界のレジェンドが引退し、新たなレジェンドの誕生なるのか。非常に楽しみなレースは今週日曜、中京競馬場で!!!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。