元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
絶賛の嵐
2017/3/2(木)
皆様、こんにちは!やっと暖かくなった最近は、いつもの散歩コースを歩いていると、同じように引退した元調教師の先生達と会うことも多くなり「うちの孫は、次中学生だ!」と言ったおじいちゃんの会話を楽しんでいます。そうして散歩を終えると家の充電器ことマッサージチェアに座り、一日を過ごし、テレビを見るんですが、最近のお気に入りはVS嵐です(笑)。昔あった、飛んだり跳ねたりするフレンドパークの様な内容で、最近では一番のお気入り番組となっています。
さて、それでは嵐ではなく、絶賛の嵐を受けているミルコの4週連続重賞を決めたレースを振り返りましょうか。まずは、土曜日に行われたアーリントンCでは、1番人気に推奨されたペルシアンナイトが楽な手応えのまま、圧勝しましたね。こちらのレースでは馬も相当な仕上がりを見せていましたが、鞍上のミルコは落ち着いていました。開幕週ということで前半では前残りがする競馬を見ていた上で、この馬の力を信じ、ゆっくりとリラックスさせる方法を選びました。スローなペースでレースが展開されても、馬を信じ「まだ大丈夫だよ、君なら全て交わせる」と、まるでコンビの会話が聞こえてきそうな騎乗で、迎えた4コーナーではムチ一発気合を入れると、あとはレベルの違いを見せつけた完璧な勝利を手にしました。
前回は直線でも狭くなるところもありましたし、やはり馬場が合わなかったこともあったため、今回の勝利で改めて強さを確認できたレースになりました。レース後には池江調教師からも「クラシックへと向かいます」とのコメントが出ていたように、これだけ折り合いをつけることができ、この走りならと私も同じ意見を持ちました。それでもダービーは少し長い気がしてならないです。皐月賞からNHKマイルCへと行けば、変則2冠も夢ではないと思ってしまいますね。もちろん、皐月にはこの馬の他にもレイデオロやブレスジャーニー、サトノアーサー、カデナにスワーヴリチャードと良いメンバーが揃っていますし、簡単ではありませんが、ハービンジャー産駒初のG1ウィナーになれることを祈っています。
日曜日に行われた中山記念でも、またまたミルコがやってくれました。よく「またミルコか!重賞の鬼!」と聞こえてきますが、そう簡単に勝てるものではないですし、いい馬に乗っていても勝てないこともあります。その中での連続勝利は彼が努力を続け、弱点を見つければ克服し、そして環境が整い、全てがかみ合った結果だと私は思っています。そんな、ミルコの騎乗に堀調教師の抜群の采配が光ったネオリアリズムが見事までの勝利をしました。レースは外からロゴタイプが逃げの一手を打った矢先、ペースを落とそうとしたところでマイネルミラノが外から交わしに行く中、ミルコも抑えることなく馬のリズムを大切にするため、狭くなった内から抜いていきました。ここが今回の勝利の一因だと思っています。
ネオリアリズムは能力がありながらも難しいところがある馬ですし、無理に引っ張っても反抗してしまいます。その性格をつかんだ鞍上の判断が素晴らしかったと思います。迎えた4コーナーでは再度ロゴタイプが出てきたところで一呼吸置き、あわてず外に出しました。ここまで来ると完璧としか言いようのないレースで勝利しました。1番人気に推奨されていたアンビシャスは、どう見ても叩きのレースのデキ見えましたので、本番には悲観することはないと思います。このレースでは勝利したネオリアリズムもそうですが、私の中で手応えを感じたのはヴィブロスでした。次走はドバイのようですが、今回のひと叩きで、ここまでのレースができるならばと楽しみになりました。そして、ヴィクトリアマイルに出てくれたら本命にとすら思うレースでした。
今週の注目レース、クラシックの登竜門チューリップ賞に弥生賞の話に参りましょう。まずは何といってもノーステッキで衝撃のG1制覇をしたソウルスターリングと出遅れながらも鬼脚を見せたリスグランシューの戦いになるであろうチューリップ賞からです。ここは前述した2頭に対し、他の馬がどのように対抗してくるかに注目しています。その中でも、対抗に期待しているのがミリッサになります。前回はうるさい面が出てしまった上に、極端なスローになったことも影響してまさかの敗戦となりましたが、今回は盤石の状態ではと思っているからです。アロンザモナもペース次第では面白い存在になると思っています。
中山で行われる弥生賞ではカデナが1番人気に推奨されるでしょうね。こちらは京都2歳Sを制した上に阪神でも結果を出しています。それを考えれば、中山でも得意ではないが負けられないといったところだと思っています。その他には操縦性が武器のグローブシアターに不気味なサトノマックス、個人的に期待しているマイスタイルもいますしね。その上にコマノインパルスも自在性が売りの上、中山の鬼・田辺君が何かしかけてくるはずで、そのあたりに注目しています。今週も絶賛の嵐が巻き起こる好騎乗を期待して、皆様同様週末を楽しみにしています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。