元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
負けることから強くなる
2017/5/24(水)
皆様、こんにちは!この間の村田諒太選手のボクシングは見ましたか?最後の判定には「あぁ負けた」とショックを隠しきれませんでしたが、よくよく聞いてみるとWBAのルールでは正しい採点のようでしたね。手数がポイントになるというのは、当たっていなくてもリズムよく手を出していた王者だったなと改めてルールを聞いた後に思わされた一戦でした。特に村田選手のように相手をK.Oして勝ってきた選手にとっては、知っていたようで、知らなかったルールでの敗戦となってしまいましたね。しかし、この敗戦で何かを学ぶことは必ずあると思います。無敗の王者も印象としては大事ですが、負けてさらに強くなる何かがあると思います。
競馬では牝馬クラシック第2戦オークスが行われました。勝利したのは、前走に初めて負けを覚えたソウルスターリングでしたね。スタート直後3番手につけると、内ラチに沿いながらの経済コースを通り、4コーナー手前では早めに出すとあとは独壇場でした。②着にも内で経済コースを通ったモズカッチャンが入り、③着には展開と枠に泣かされたアドマイヤミヤビが入りましたね。
最強血統のソウルスターリングですが、まさに一番強い馬が一番楽な競馬をした結果の圧勝だったと思います。抜け出した後も、手前を換えながらも余裕に突き放していく姿は、まさに圧巻の女王の姿だったと思います。しかし、逆を言えば、他の騎手は何をしてたのかな?と疑いたくなるようなレースでもありました。特に3コーナーから4コーナーでは四位君と典ちゃんが譲り合うような場面では、内からルメールが「なぜか空いてる」とばかりに外に出し、あぁこれだったら競馬じゃなく、強い馬の強い姿を見せるだけだよと思ってしまいました。まさにそのままの結果になってしまいましたしね。
本当に強い馬だからこそ、ルメールの反応にすぐさま反応できたことが勝因だとは思いますが、見ているこちらからすると、少し面白くない競馬だったとも思います。ただ、逆に面白くなく見せるほど、強いという見方もできますけどね。勝利したソウルスターリングは、次は天皇賞(秋)も候補に入れての戦いとなるようで、来年には凱旋門賞の声も上がるかも知れませんね。最強女王の誕生に、先が楽しみになったレースでした。
さて、とうとうやってきます。第84回日本ダービーです。数々の伝説を残してきたダービーが今週日曜日、東京競馬場で行われます。インターネットの情報ではオークス終わりから並びはじめたファンもいるみたいですからね。そんなダービーを盛り上げるメンバーは、まず皐月賞馬アルアイン。距離が心配された皐月賞では何のそのと、すべてにおいて平均点以上の馬が勝利し、2冠を目指します。騎乗する松山君にとっては、この上ないくらいのダービートライとなりそうですね。ここを制することができれば彼は間違いなく、超1流の階段を上ることになるでしょうね。
皐月賞では②着に敗れたペルシアンナイトも不気味です。NHKマイルCに出ていれば圧勝もあったんじゃないか?と思わせる世代屈指のスピードと瞬発力で本番への距離不安を弾き飛ばせるかがポイントになってくると思います。その他にも、初めからダービーを狙ってきているのスワーヴリチャードにレイデオロ、そしてサトノアーサーも不気味です。それぞれが皐月賞もトライアルの一環としたレースをしたり、出走せずに体調を整えているあたりからも、本気度がうかがえます。
そして、3連勝で切符をつかんだアドミラブル。これは本当に怪物ではないかと個人的には思っています。ノド鳴りで敗戦したことですぐに対応し、こちらも負けたことにより強くなった一頭だと思っています。その怪物には、ここは通過点であり、ここを頂点にしてほしくない馬だとも思わされていますけどね。始まる前は、牡馬クラシックは空き巣だなと思っていたのが嘘のような、豪華、粒揃いに成長したメンバーが出馬する日本ダービー。最強の称号はどの馬にくだるのか。全陣営が、すべてのホースマンが産まれたときから夢見ている日本ダービーを、是非競馬場で、その興奮を想いを共に感じましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。