元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
Not Easy, Yes 意地
2017/9/20(水)
皆様、こんにちは!先週は台風の勢いが凄かったですね。不幸中の幸いというのが正しいか分かりませんが、競馬施行中には来ませんでしたが、大変強い台風が日曜の夜中におそってきました。先週は3日間競馬ということもあり、移動がある騎手にとっては大変厳しい週だったと思います。我が家はというと、台風が来ると毎回のことですが雨漏りを心配しながらの夜となってしまいます(苦笑)。なんとか事前準備のおかげで、事なきを得ましたけどね。競馬も台風対策も前準備が大切だと改めて思った日になりました。
さて、台風の影響を受けずに開催することができたローズSの話をしましょう。停滞低気圧の影響で馬場は柔らかい状態となった今年のローズSでは、和田君の勝利で賞賛の嵐となりましたね。まさに騎手としての意地だったのではないでしょうか。春にコンビを組んでいたモズカッチャンやカワキタエンカから乗り替わりを言い渡され、その際に初芝で勝利をあげたラビットランとのコンビで、見事トライアル重賞を制しました。血統から言ってもダートかなと思う中で、前回で見せた鬼脚を今回も披露することができましたね。
レースはカワキタエンカが前半58秒5の高速ラップを刻む中、折り合いに課題のあるラビットランを和田君がなだめながら進め、迎えた直線では一頭化け物のような脚で差し切り勝利をあげました。見事と言うしかないレースでしたね。競馬では乗り替わりが常にあるものです。騎手は、言い渡された時、誰を責めるわけでもなく自分を責めます。それが騎手なんです。結果でしか、信用を得ることができない職種だからこそ、今回の和田君の勝利は彼にとって、非常に嬉しい勝利だったと思います。
しかし、本番はそう上手くいかないとも思っています。今回クラシックを戦ってきた組の中で、仕上げてきたのはリスグランシューだけだなという印象をパドックで受けました。案の定、掲示板にきた馬でクラシック組はリスグランシューだけでしたからね。特にモズカッチャン、ファンディーナは余力十分の仕上げで、あの馬場を考えて両馬共、抑えたレースをしていましたからね。牝馬は特に難しいのが事実で、疲れをどれだけ残さないでいけるかも本番に対して考えなくてはいけないですからね。それを踏まえて考えると、まだまだ牝馬路線は混戦を極めると思います。勿論ラビットランのタフさで、次走も十分チャンスはあると思いますが、名門角居厩舎の腕の見せ所になるのではないでしょうか。簡単ではありませんが、改めて和田君の意地にも注目したいと思います。
3日間競馬の最後を飾ったのはセントライト記念でした。その中で勝利したのは横山典ちゃんとミッキースワローでした。こちらは、義理の弟の厩舎の馬になり、典ちゃんとしては今まで騎乗していた甥に対し、叔父の意地を見せつけた結果となりました。レースは淡々と進む中、終始アルアインを見ながら運んだミッキースワローが直線で一気に外へ出すと、アルアインや内から抜けてくるサトノクロニクルを振り払う見事な勝利。これで菊沢厩舎と典ちゃんの親戚コンビで、またもや重賞制覇となりました。
②着に敗れたアルアインは本当に良くなりましたね。ただ、今回のレースでは折り合いにも目処が立ちましたが、距離の不安だけはいまだに消えることがありませんでした。③着のサトノクロニクルは逆に、今回の競馬で多くのことを学んだように思います。特にスタートから好位置での競馬や馬の間を走ることなどです。勿論、道中サボる癖はありますが、それでも距離が延びることで更に良くなる気がしました。こちらも本番まで混戦模様ですね。菊の舞台に菊沢厩舎が名前通りに輝くか楽しみにしています。
今週もその菊花賞をめざし、多くの素質馬が神戸新聞杯に出てきます。特に注目はダービー馬レイデオロではないでしょうか。しかし、次走を見据えた名匠は、私は7分ほどのデキで運んでくるのではないかと思っています。そうなると、権利のない馬と上がり馬に注目をしたいです。権利がない馬となると、やはりダンビュライトは頑張る必要があるレースになりますからね。そして、権利を狙わせたら天下一品の豊ちゃんだけに馬券からは目が離せないと思います。
ベストアプローチも怖い一頭ですね。アドミラブルに迫った走りと、今回は余裕を持って組めたスケジュールも前回とは違いますからね。上がり馬としては、やはりキセキから目が離せません。前回も楽な競馬で勝っていますし、鞍上ミルコとも非常に手が合う馬だと思います。こちらは仕上がり次第ではレイデオロを脅かす存在になる馬だとも思っています。ダービー馬の意地か、それともライバル達の意地か。今週の競馬も意地から目が離せません!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。