元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
陣営の計算にあっぱれ
2017/11/8(水)
皆様、こんにちは!白熱したプロ野球の日本シリーズは、横浜がストレート負けかというところから追いつきましたが、劇的な同点打からの逆転勝利でソフトバンクホークスが優勝しましたね。また同点ホームランを打ったのが横浜にいた内川選手というのもドラマだなと改めて感じさせられました。そして、負けたとはいえ、ラミレス監督率いるベイスターズもまた意地を見せてくれた試合でした。最大級の下克上に期待しましたが、非常に盛り上がった日本シリーズだったと思います。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。まずは何といってもスワーヴリチャードが制したアルゼンチン共和国杯ですね。ダービー②着後、長い休みを取り、馬の成長を促した陣営の狙いが、まさにピッタリ!ハマったと思います。特に馬体面では、バランスの悪さから手前を替えるのがヘタで、左回りでしか走れなさそうな体だったのですが、今回はパドックから不安面が解消されたのが伝わってきました。ましてや、調教には今回から騎乗になるミルコが念入りに乗せてもらっていたことを知っていましたので、盤石の競馬になると思っていましたが、まさにその通りの結果となりましたね。
不安になっていたスタートも解消し、道中の折り合いも長い時間、鞍上とコンタクトを取ってきたことと騎乗技術が加わり、全く問題がないままレースを進め、4コーナーから少しの隙も見逃さないといった集中力とそれに即座に反応する馬の能力。全てが陣営と鞍上の準備と技術が織りなした完璧な勝利のハーモニーだったと思います。勿論、今回は一線級からすれば見落ちするメンバーとなっていたましたが、それでもこれだけ収穫の多い勝利は素直にすごいと褒めて良いと思います。今後の路線も楽しみですが、この馬は海外でG1を勝てる器だと、改めて感じさせられました。次の一戦も非常に楽しみな馬です。
京王杯2歳Sではルメールが次のロードカナロアと評しているタワーオブロンドンが盤石の勝利を挙げましたね。今回は一枚も二枚も力が上だったように見えました。鞍上も馬のことを信頼しきった騎乗をし、ギリギリまで見極めてから追い出すと、あとは独壇場のレースとなりました。もう見事な騎乗としか言いようがありませんね。一番強い馬にミスのない騎乗。これでは他の馬は、もう手をあげるしかないレースだったと思います。本当に今のルメールは手がつけられない程、ミスがない騎乗をしていますからね。今回のような競馬を教えることでマイルまで対応範囲を広げましたし、今後も目が離せないコンビだと思います。
1週間空いたG1シリーズですが、また連戦が始まります。今週の京都競馬場ではエリザベス女王杯が行われます。このレースには沢山の思い出があります。そして、引退後もこのレースが近づいてくると小林常君が毎年のようにインタビューをしてくれていました。今は小林君が亡くなってしまったため、このように感傷に浸ることで、彼を思い出しながらレースを思い出すといったレースになっています。今回は本当に良いメンバーが揃いましたね。ここにソウルスターリングがいれば、本当に女王決定戦と呼ぶに相応しいレースでしたが、不在でもなお女王決定戦と認めても良いメンバーが揃いました。
なんといっても一番の注目はヴィブロスでしょうね。前回はついてない展開となりましたが、それでも力があるところを見せてくれました。今回は叩き2走目ということもあり、これは負けられないと思いますね。そして、2番手には復活勝利をあげたルージュバックとムーアのコンビ。その他にも復活を見せつけたいミッキークイーンに前年覇者のクイーンズリング、秋華賞を制覇したディアドラ、その②着リスグラシューにモズカッチャンと続きます。どの馬がこの女子最強決定戦を制するのか。こちらも陣営の計算を読み解いた皆様が引き当てるレースになりそうです!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。