元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
7を取るのは?
2017/12/20(水)
皆様、こんにちは!今週は仙台育英の飲酒・喫煙問題により、対外試合の禁止に監督は学校からも姿を消すことになりました。スポーツの名門校が次々とこの様な問題を犯すのは何故なのでしょうか。勿論、多くの選手は遠くから学校に入学し、夢を見ていたにもかかわらず、この様な問題で周りにまで迷惑をかけたのは、残念でしかたありません。特に親御さんの気持ちになると余計にです。関係していた子供達の親御さんは、申し訳なさで胸が一杯だと思います。そして、関係していなかった親御さんからすれば、息子が遠くに野球を目的に行ったにも関わらず、試合もできない状況になってしまった。これは本当に怒りが込み上げていると思います。連帯責任という言葉では片付かない感情があると思います。
そして、競馬界でも木幡育也君が前回の禁止薬物に続き、騎乗停止となりました。内容は詳しく発表されていませんが、こちらも大変残念でしかありません。しかし、こちらは社会人として自分で責任を取る以外ありません。勿論、学校と同じく所属厩舎の責任も問われると思いますが、社会人と高校生では全く違いますからね。どちらも自分が何をしているのか、もう一度考える必要があると思います。社会人では、退部のような逃げることもできません。退社や今回で言えば騎手を止めることはできますが、それでも一生その看板を背負い、周りに迷惑をかけ生きていかなくてはいけません。そのことを深く考え、流されることなくいってもらいたいと思います。
そんな問題が起きている中、先週の競馬では中内田厩舎が開業4年目にして、早々と初G1勝利を挙げました。阪神競馬場で行われた朝日杯フューチュリティSですが、見事一番人気に推奨されたダノンプレミアムと川田君のコンビが圧巻の走りで、牝馬に続く無敗での2歳G1制覇となりました。レースは外枠からケイティクレバーが果敢に逃げると、少し行きたがるのを川田君がなだめながら番手を取りました。その隊列が変わらないまま迎えた4コーナーでは、前にいたシュミノーとファストアプローチが外に膨らんだ瞬間、すかさず見逃さないと言わんばかりにGOサインを出すと、あとは圧巻の走りで勝利を掴みました。ゴール前では余裕の馬をなでる仕草まで出し、まさに完勝だったと思います。
勿論、この強さはクラシックにいっても楽しみだと思います。しかし、メンバーとしては少し物足りなかっただけに、まだまだクラシックの本命と呼べないのも事実です。中内田厩舎特有の仕上がりの早さと良さ、これが今回の勝利の一因だったと思います。そして②着にはクリスチャン騎乗のステルヴィオが入りました。道中がスムーズであれば、更に面白かったと思いますが、こればかりは残念としか言いようがありません。距離もこちらに関しては延びた方がいいと思います。また東京のような競馬場では更に力を発揮できるように映りました。
③着には2番人気のタワーオブロンドンが入りました。今回は、道中から折り合いが鍵となりましたが、名手ルメールでも完璧に折り合わすことができず、距離不安がモロに出てしまう結果となりました。やはり、体からも1400mまでな気がしますし、3歳戦に入った際にも、レース選択が難しい一頭になりそうです。しかし、逆を言えば海外で3歳スプリント戦を戦い、レース選択が楽になってから日本で戦うのもひとつの手だと思います。ルメールも言うように世界的スプリンターの素質があるだけに、挑戦してもらえたら夢があると思います。
今週は冬のグランプリ有馬記念が中山競馬場で行われます。日本で一番盛り上がるレースだけに、今からドキドキが止まりません。その中で注目されるのはG1・7勝目を狙い、このレースで引退するキタサンブラックでしょうね。完璧に強い調教に耐えられる馬体とメンタル。久々に出てきた新の怪物の最後はどうなるのか、非常に楽しみです。
そして、G1 ・7勝を狙うのはキタサンブラックだけではありません。騎手として2017年G1競走7勝目を狙うミルコとスワーヴリチャードも注目を集めるでしょう。体のバランスが整ったことで、間違いなく右回りも問題ないと思っています。その他にもジャパンカップを制したシュヴァルグランとボウマンに、復活をかけるミッキークイーン。岩田君と手が合うレインボーラインの一発など、予測不能な有馬記念を制するのは、どの馬か!話題に上がっている7だけに7番と7枠にも注目しています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。