元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
これが正夢
2018/2/21(水)
皆様、こんにちは!まだまだ続く冬季オリンピックですが、羽生選手の演技には痺れましたね!ケガをして本番に間に合うのか、調整は上手くいっているのか、全てが不安要素でしかなかった今回でしたが、見事に周囲の心配を歓喜へと結果をもって変えました。しかし、これを乗り越えたというのは、体だけでなく強靭なメンタルもいりますし、何よりも本人と共に汗を流した人が最高のサポートをしたと思いました。見事すぎるほどの完璧な演技と、その心はフィギュアスケートを知らないものまでを巻き込んだショーだったと思います。そして、銀メダルに輝いた宇野選手もまた素晴らしかったと思います。レジェンド羽生と新戦力宇野の戦いはこれからも楽しみになってきました。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。大井のレジェンド内田君の見事なまでの勝利が2018年最初のG1フェブラリーSで感動を奪いました。内田君と言えば、落馬事故により首の骨折という大けがを負い、全てを固定した状態が続く中、それでも諦めたくないと必死にリハビリを行い復帰。以前ほどの馬が集まらなくなった今でも、あきらめずにコツコツと頑張ってきた苦労人です。その内田君と共に夢をかなえたのがノンコノユメでした。3歳からダート界で注目の馬でしたが、その荒すぎきる気性のために去勢を行い、その後しばらくは結果が出ていませんでした。しかし、前々回のクリスチャンが騎乗した辺りから、馬が少し変わってきたように思いました。そして前回の内田君との重賞制覇から一気にJRAダートG1制覇となりました。
内田君の言葉にあった「人馬ともにあきらめずに努力を続ければいいことがある」と言うのには、すごく感動させられた一戦でした。レースは最内枠が当たったニシケンモノノフや何がなんでもハナを主張したかったケイティブレイブなどが競う展開となり、かなりのハイペースとなりました。その煽りを受けたのがテイエムジンソクと古川君だったと思います。またスタート直後の長い直線で前に馬を置きたい状況の中、ララベルがいたことにより、自分の思っているよりひとつ外、そしてワンテンポ早く出さなくてはいけなくなりました。ここが敗因だと思っています。テイエムジンソクも気性に問題を抱える馬だけに、あそこが全てだったなと思いましたね。
迎えた4コーナーでは、先行勢が総崩れする中、ゴールドドリームとライアン・ムーアが一気に加速しました。思わず「早いっ!」と声を出してしまいました。しかし、それでも衰えぬ脚色に、これはゴールドドリームかと思った矢先、終始ゴールドドリームを見る形で展開に焦らず自分たちの競馬をしたノンコノユメと内田君が見事に交わし切り優勝しました。本当に見事の一言でした。復活という夢を描いてきた内田君とノンコノユメにとって、それが正夢になった日だったと思います。逆にムーアにとってはらしくない競馬をしたなという印象です。
もっとハッキリと言うと、今回の早仕掛けは彼のミスだったと思います。スタートはいつものことですが、仕掛けは完全に過信とダートに対しての不慣れがあったように思います。ムーアが乗って負けたら仕方がないという風習やムーアが早く仕掛ければ勝負にいってのことと新聞などでも目にしますが、そうではないと私は思います。どんなに一流でもミスをします。ミスはミス。そう捉えるべきだと思います。今回のムーアの騎乗は決して、いつも見せる超一流ではなかったと思います。彼にとっては悪夢になったレースだったことでしょう。
感動のG1レースが終われば、開催が変わります。今週からは阪神・中山・小倉の3場開催となります。阪神では阪急杯、中山では中山記念が行われます。両レースでエース級の馬たちが出てきます。まず阪急杯ではスプリント王レッドファルクスが出馬してきます。本来はスプリント王だけにスプリントが得意と思いますが、一番向いているのは1400mだと個人的には思っています。今回は相棒ミルコが中山での騎乗となるだけに、川田君とのコンビも非常に楽しみです。その他ではモズアスコットに注目しています。前回は初の重賞挑戦でしたが、休みをはさんだことで更に上昇している気がします。
そして、中山記念ではマイル王ペルシアンナイトが距離延長に挑みます。こちらもベストは1800mではないかと個人的には思っています。しかし、その溢れんばかりの才能でマイルにも対応したような気がします。他にも斤量も魅力的なアエロリットやドバイを目指すヴィブロスにウインブライト、サクラアンプルールと中山巧者達もいます。どちらのレースも今年の春を占う一戦になりそうです。ここを勝ちにくるか調整しにくるか、そして挑戦しにくるか。これがハッキリとしたポイントになりそうです。馬の力だけではなく陣営の思惑を読み取ることができれば、万馬券の夢も正夢になると思います!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。