元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
3.11
2018/3/14(水)
皆様、こんにちは!まずは、まだ復興が続く3.11の被災者の皆様、心よりお祈り申し上げます。そして、競馬界の3.11と言えば、やはり思い出されるのはドバイワールドカップですね。地震が起こり、テレビでは嘘のような景色を目の当たりにしながら、心が落ち着かないまま始まったレース。スタートでは後手を踏んだヴィクトワールピサとミルコのコンビがスっと最前線までポジションをあげると、そのまま押し切り、世界一の優勝と日本のためにという思いで涙を流したのを昨日のように思い出しています。競馬を知らない人にも果敢に挑戦し、日本のニュースを聞いて一致団結していた陣営の頑張りがどれだけの感動を与えたかと思うと、競馬に携わっていてよかった。ただのギャンブルだけでは生まれない感動を味わえたレースだったと思います。
そんなミルコが3.11に改めてスワーヴリチャードとのコンビでやってくれた先週の競馬を振り返りましょう。中京競馬場では金鯱賞が行われました。得意の左回りでは負けられないスワーヴリチャードにグランプリホースのサトノダイヤモンド、3連覇がかかっていたヤマカツエースや得意コースでの活躍を期待したメートルダールなどが出てきましたが、勝利したのはミルコとスワーヴリチャードでした。
レースはスタートからサトノノブレスがマイペースの逃げを取りました。そのペースのまま誰も動かないこと、そして、休み明けで馬が少しズルく、うるさくなっていたスワーヴリチャードがリラックスできない展開となりました。すると鞍上のミルコはスっと出し、サトノノブレスをつつくと、行かせた後、即座に前に馬を置きました。本来ならばスタートしてから、内に入れ、前に馬を置くこの形をしたかったのでしょうが、外枠ということもあり、自らが動いて体制を変えさせました。迎えた直線では逃げるサトノノブレスを最後に交わし、見事な勝利をあげました。今回のレースはペースとしても遅く、少頭数だったことからもタイムとしては物足りないように感じますが、改めてスワーヴリチャードの強さを感じることができました。
2着にはサトノノブレスが入りましたが、タイムのかからない、マイペースのレースをすればこの馬を走るということを見せつけましたね。3着に入ったサトノダイヤモンドも非常に良いレースをしたと思います。調教では少し不安な面が出ていましたが、調教同様にまったりとしたペースからのよーいドンでは、やはり瞬発力はさすがグランプリホースだなと感じましたね。その上に、久しぶりのこのレースでこれだけのレースができたことは、次の本番に向けては逆転もありえる走りだったと思います。次走は戸崎君が選ばれたみたいですし、グランプリホースの復活にも期待したいと思います。しかし、逆にペースが速くなった時に、いったいどこまで馬の気持ちが保つのかがポイントになるでしょうけどね。
今週は桜花賞の前哨戦フラワーCや皐月賞トライアルのスプリングS、その他にも天皇賞(春)を狙ってくる馬が出る阪神大賞典に3歳スプリント戦ファルコンSと重賞盛りだくさんの週となります。その中でも、やはり打倒ダノンプレミアムに挑むスプリングSに注目しています。大本命は世代No.2と呼ばれ続けているステルヴィオではないでしょうか。若葉Sではタイムフライヤーにも騎乗するルメールが最終決断をするレースにもなると思っています。
その他にも前回はトラブルがありながらも、4コーナーまでは勝つんではないかと力を見せつけてくれたルーカス。こちらは距離もぎりぎり(1800m)でしょうし、良くなるのはもっと先でしょうが、ここでも力を見せつけてほしいと思っています。サトノソルタスのパワーある走りやゴーフォザサミットも前回は中途半端なレースになっていましたし、ここは改めて見直す必要がある馬です。その他にも小倉で圧勝したエポカドーロなど、注目の若駒たちの去年からの成長を楽しみにしています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。