元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
変化を恐れないことでの勝利
2018/5/9(水)
皆様、こんにちは!知らぬ間に、長そでの季節から半そでの季節へと変わり、散歩もしやすくなってきました。我が家では、孫が子供の歯から大人の歯に入れ替わるなど、少しずつ成長していく変化を楽しんでいます。さて、そんな中、日本サッカー界には大きなニュースが飛び込んできましたね。元スペイン代表イニエスタ選手がヴィッセル神戸に入団秒読みとのニュースです。息子からも「これは一大事だ。来たら日本サッカー界が大きく変わる」と連絡がきたくらいで楽しみです。小さな変化も大きな変化も前へ進むことは、本当にワクワクさせられます。
そんな競馬界でも大きな変化がありました。デビューから15年、とうとう藤岡佑介騎手がNHKマイルCの勝利でG1ジョッキーの仲間入りを果たしました。ここまでの彼の努力は、本当に並み大抵のものではなかったと思います。次々と出てくるスター候補に押され、影をひそめるときもありました。何かを変えたいとフランスに渡ったこともありました。そして、大きなケガを乗り越え、とうとう手にしたG1騎手の称号は、まさに彼の努力そのものだったと思います。特に今年に入ってからは挑戦していた乗り方が型にはまってきていたことからも、そろそろ勝つなと見ていましたが、それでも今回の勝利は乗り方だけではなく彼の精神的な成長にあったと思います。
レースでケイアイノーテックはスタートの出が良くなく後方からの競馬となり、迎えた4コーナーでも後方2番手。タイム的にも、これは前が残る展開と思っていた矢先に大外からの差し切りは見事でしたね。もちろん、馬の力が十分なほどにありました。しかし、それだけではG1は勝てません。重賞をいくつも勝っている騎手が乗り方を少しずつ変え、トライしては失敗や成功を繰り返すのは簡単ではありません。それでも、藤岡君はそれを止めませんでした。その上、鐙を変え更に自分の形にはまったことが、今年の活躍、今回の勝利につながったと思います。自分自身と向き合い客観的に見れる騎手だからこそ、ここまでの成長があったのだろうと思います。本当におめでとうございました。
2着に敗れたとはいえギベオンとミルコも素晴らしいレースをしましたね。道中は狭くなるところでも我慢に我慢をし、迎えた直線では少し早くコースが開いてしまったために最後は馬が遊んでしまいましたが、それでも完璧なレースだったと思います。ギベオンも距離はもう少しあった方がなおいいレースができそうですし、ダービーに出てくれば楽しみな一頭になりました。ここからマイル路線へ進む馬、ダービーにトライする馬と楽しみな今後を占える一戦だったと思います。
さて、今週もG1!東京競馬場でヴィクトリアマイルが行われます。注目は何と言っても重賞3連勝中のミスパンテールでしょうね。典ちゃんが重賞でレースを色々教えながらも勝ってきただけに、ここは今までの成果を見せつける場となっているのではないでしょうか。その典ちゃんから戸崎君にコンビが変わるアエロリットもまた目が離せない一頭ではないでしょうか。ただ、こちらは少し難しいところがある馬だけに戸崎君の腕にかかっている気がします。
その他の関西組からは、今週から復帰する豊ちゃんとリスグラシューに去年の女王アドマイヤリードの復活にも期待がかかります。個人的にはジュールポレールにも注目しています。雨が降ればまた面白いメンバーだけに、天候を気にしながら少しの変化も見逃さないよう、東京競馬場にパドック、そして返し馬、さらにレースを見に来てください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。