元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
続ける姿勢が生んだ勝利
2018/7/25(水)
皆様、こんにちは!いやー暑いですね。京都や名古屋では40度を迎え、完全な夏を迎えましたね。レース後にはヘロヘロになっている馬がいるなど、普段の人気や力だけでなく、夏にどう対処できているかも重要な要因になってきましたね。馬はそもそも全身を毛で覆われているだけに暑さに弱い生き物です。その上、暑いからではなく、精神状態が興奮した時に汗をかくため、非常に見分けが難しいとされています。
昔の厩舎では氷柱を置いて、大きな扇風機で馬を冷やしていました。今では馬房にクーラーをつけて温度管理をするなどして体調を整えていますが、それでもあの気温の中で走るわけですからね。皆様も、馬券を買う時には能力だけでなく、夏の成績などを考慮していくと的中率が上がるかもしれませんよ。もちろん、負けた馬全てが夏に弱かったということもありますからね。競馬新聞にも近いうち、勝ったレースの気温も載せてもらえると更に嬉しいのになと思います。
そんな暑い中、3場の中でも涼しい函館の最終週に、2018年デビューの2歳達の初めての重賞、函館2歳Sが行われアスターペガサスと小崎君が人馬共に重賞初勝利を飾りました。レースはスタート直後、同馬が遅れてしまいました。その中、ハナをきったのはラブミーファインでした。ここのところ好調が続く丸山君が逃げたことで、ペース次第では逃げ切りもあるぞ!と感じていました。そして、迎えた4コーナーでは、函館1200m特有の4コーナーが大混雑になる中、自分のレースを続けていたラブミーファインが抜け出すと、これで決まりか!?と思ったところ、外から直線一気でアスターペガサスと小崎君がハナ差交わし、見事な勝利をあげました。
小崎君と言えばケガに悩まされ、同期の松若君と少し差がついてしまっていました。それでも、成長を諦めたくないとオーストラリアに渡りもがき苦しみ、今回デビュー5年目で初の重賞制覇を達成しました。本当に素晴らしい勝利でした。出遅れたことで馬の新しい一面が出たこともありましたし、外に張られていたけれども、前が空いておりスルスルとポジションを上げられたことも勝因のひとつだったと思います。努力を続けている人にしか競馬の神様も運を与えません。だからこそ、小崎君の努力を続けた姿勢とアスターペガサスの能力がかみ合った勝利だったと思います。注目していたスズカカナロアは謙一君らしい勝負がかった乗り方で万全かと見えましたが、勝負所で置いていかれる形となりました。少し残念ではありますが、これもまた見応えのあるレースをしてくれたと個人的には思っています。
これで中京・福島・函館が終了しました。中京リーディングは夏男ミルコが坊主効果か3年ぶりに獲得。福島では地元生まれの田辺君が獲得、函館ではルメールが初の函館リーディングを獲得しました。そして舞台は変わり、小倉・新潟・そして札幌競馬が始まります。騎手としても滞在競馬が多くなるこの時期は多忙に多忙を極めます。そんな中、新潟ではアイビスサマーダッシュが行われます。本命不在の混戦レースになるのではないでしょうか。
まずはダイメイきょうだいのお姉ちゃんことダイメイプリンセスが選ばれるでしょうね。力が抜けている気がするペイシャフェリシタや、去年のリベンジがしたいアクティブミノル。その他にも重賞馬カラクレナイや51キロでミルコが挑戦するラブカンプーなど、非常に難しいレースになります。本格的な夏の大一番。関西騎手と関東騎手が入り混じってのレースが続きますので、非常に楽しみな夏です。馬もそうですが、皆様も体調管理にはくれぐれもお気をつけくださいね!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。