元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
世代交代の波
2018/8/9(木)
皆様、こんにちは!暑いですねー。騎手時代からの癖で夜のビールまでは全然水分を取ることがなかったのですが、最近は家の中にいるだけでも小まめに水分補給を心掛けて熱中症にならないようにと心掛けています。そんな暑い中、少し早いですが京都までお墓参りに行ってきました。昔は息子や娘たちが一緒についてきて必死にお墓を洗ってくれたのですが、みんな仕事に追われ、なかなか時間を合わせることが出来ないので、その代わりに新しいメンバーこと孫たちがお墓を洗ってくれ、お墓洗いの世代交代を感じることとなりました。ご先祖様にいつまでも感謝を忘れない、そんな大人になってくれることを願います。
そんな中、競馬界でも世代交代を狙うダート3歳馬たちの戦いレパードSが新潟競馬場で行われました。1番人気には、ジャパンダートダービーからの参戦となったグレートタイムが選ばれ、2番人気にも同レースから参戦のドンフォルティスが選ばれましたが、勝ったのはグリムでした。前走では良い走りをしている中、ノースペースになり何もできなくなった当馬でしたが、今回はスタート一番、行き脚がついたことで初騎乗の内田君も迷わずハナを選択しました。もまれずに自分のペースで行けばもっと走ると陣営も分かっていたのでしょうね。迎えた4コーナーでは抜群の手応えの中、追ってズブい馬を見事なまでに内田君がねじ伏せるような騎乗で後ろから追走してきたヒラボクラターシュを抑えました。馬の力にせよ、今回は内田君の判断と思い切りが勝因だったと私は思います。
2着のヒラボクラターシュもキックバックを嫌がるところがある馬ですが、福永君も何度も騎乗していたことで、気分よく走らせることができたからの着順だったと思います。逆に人気をしていたグレートタイムは、暑さ・輸送・疲れが目立ったレースになりましたね。ドンフォルティスに関しては暑さに弱いのかもしれませんね。内で我慢して外に出した時には、一瞬ある!と思いましたけどね。タイムとしては平凡なものになってしまいましたが、この暑さの中、走り切り勝ち切ったグリムは同馬主・同厩舎のシヴァージと共に世代交代のメンバーとして非常に楽しみになりました。
小倉では小倉記念が行われトリオンフと豊ちゃんがレコードでの勝利を収めました。こちらは、レース前から高すぎるテンションをレースでは豊ちゃんがなだめながら進むと、33秒台の脚で引き離すという後続はなすすべなしのレースでしたね。勝つときはいつも豪快な勝ち方をするだけに、今回の勝利からもハマればG1でも活躍できるのではないかと思います。しかし、レベルが上がった場合にイマイチ結果が出ていないだけに、そこには注意して見ておかなくてはなりません。2着にはサトノクロニクルが入りましたが、少し小回りが合わない気がしましたね。スタート直後から行き脚がつかず、鞍上のミルコも出ムチを入れるほど。4コーナーからは、いつも通りのズブさを見せていましたからね。難しい馬であることは間違いないでしょうね。
今週は札幌ではエルムS、新潟では関屋記念が行われます。エルムSではJRAから地方にいき、結果を出しまくっているリッカルドがルメールとのコンビで参戦します。今回は帝王賞で負けた相手は一頭も出ていないことからも1番人気になると思います。はたして、どんなレースをしてくれるのか非常に楽しみです。そして、私の注目はドリームキラリです。前走は勝った馬が早すぎたことでハナを取れず、内で前の馬に影響されてレースで出し切れなかった当馬ですが、1700mという条件はピッタリだと思います。前回のスピード競馬を馬が覚えていれば簡単にハナを取ることもできるのではないかと思うからです。その他にも成長著しいミツバやハイランドピーク、55キロが魅力なアンジュデジールとマジシャン典ちゃんにも期待したいです。新しいダート界の波にのまれず、ここでアピールするのはどの馬か。北の大地を熱く揺るがしてほしいと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。