元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
信じた最後のワンピース
2018/12/26(水)
皆様、こんにちは!今年も残すところ、あと少しとなりました。2018年はいかがでしたか?平成がまもなく終わり、新しい時代が始まります。競馬界では3歳世代の活躍が目覚ましかったですね。牝馬のアーモンドアイが三冠にジャパンカップ制覇と驚かしてくれると、ダート界でもルヴァンスレーヴが出る度出る度に古上をも巻き込んでG1勝利を挙げるなどがありました。ダートと芝で3歳の怪物達が出てきたことは競馬界にとって非常に楽しみになる一年でもありましたね。
このままいけば年度代表馬はアーモンドアイがとることになると思っています。難しいのは最優秀3歳牡馬ですね。ダービー馬ワグネリアン、ダート重賞無双のルヴァンスレーヴ、そして先週行われた有馬記念を制したブラストワンピースもいますからね。個人的には、ルヴァンスレーヴを挙げたいですね。ダートと芝での境を超え、この強さには感動すら覚えていますから。一体、どの馬達が選ばれるのか、非常に楽しみにしています。
それでは師走最後から二番目のG1有馬記念の話をしましょう。先に記述した通り、ブラストワンピースが念願のG1勝利を有馬記念であげました。鞍上の謙一君にとっては、ラストチャンスだったと思います。ダービー、菊花賞では結果を出せず、勝利への最後のワンピースが見つけられないままで、本来もここで乗り替わるか?と思っていましたが、騎乗が決まり、そして結果を出しました。今思えば、美浦へと単身乗り込み、見つけた相棒ブラストワンピース。初めて跨った時から「この馬はG1馬の背中をしている」と感じていたと思います。
その通り、新馬戦で見せた走りは、震えを覚えるほどでした。決して派手な瞬発力や目立ったキャラがない中で、この馬が与えた印象は「トータルで全てにおいて高いレベルにある馬」でした。この時に、正直に私はこの馬がダービーを取ると思っていました。残念ながら、それは叶いませんでしたが、それでもここで勝ってくれたことで、私の見る目もまだまだ腐っていないなと思わせてくれました。
レースは、スタート直後オジュウチョウサンが出るも、少しノメりながらの走りに豊ちゃんも首を支えながらのレースになりました。そこを外から半馬身出遅れたキセキが気合いをつけて無理やりハナを奪う形を取りました。ハッキリとこれは無意味だったと思います。ここ数戦で見せていたハナを奪う形が仇となったのかもしれませんが、私個人の希望としては、無理して外々を走らせるのであれば、1週目の直線でまくりあがるような形を取るのが理想だったと思います。ただでさえタフな馬場で一頭だけ2800mを走ったレースとなってしまいましたから。
その道中で、自信満々にポジションをとったのが謙一君でした。実力馬が外に入ったことで、内には少し足りない馬達が一発を狙う中、外から力は一番だという乗り方でしたから。迎えた4コーナーでは早めに踏んで一気に他馬をかわし切ると、初めてのG1勝利を挙げました。2着にはレイデオロが入りました。こちらは逆に馬を信じ切った上で良馬場の競馬をしてしまったと思います。他と実力が抜けて違う場合ではこの競馬でも差し切れますが、今回は斤量に加えブラストワンピースの適性と力の前では少し足りない競馬をしてしまったと思います。平成最後の有馬記念を3歳馬が制したことで、来年は更に楽しみが増えることとなりました。競馬界ではシルクの年!という一年だったと思います。
ここまで話して参りましたが、今週金曜日には2018年最後の競馬が行われます。開催は中山と阪神競馬場ですからね。中山では2歳馬のG1ホープフルSが行われます。まだまだG1になってから歴史の少ないレースですが、これから大事になってくると思っています。ただ、個人的には有馬記念と日程を逆にしてもらいたい思いはありますけどね(笑)。そのレースの中で注目と言えばやはりサートゥルナーリアになりますね。私個人としては、この馬は来年のアーモンドアイになる可能性を持っている一頭だと思っています。
重賞2勝のニシノデイジーも目が離せません。いつも軽視されている中で実力を発揮しての重賞2勝ですから、今回はしっかりと注目したいです。その他にもブレイキングドーンも力をつけてきていますし、アドマイヤジャスタやコスモカレンドゥラの安定感、一発ならキングリスティアやヴァンドギャルドといったところでしょうね。しかし、2歳だけにこの短期間で変わった馬にも注目しながら、2018年最後の競馬を見守りたいと思います!それではみなさま、良いお年を!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。