元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
感動の勝利
2019/3/20(水)
皆様、こんにちは!先日、ニュージランドで信じがたい事件が起こりました。イスラム教の教会モスクに元軍隊の人間が一人で乗り込み、50人を殺害しました。しかも、その犯人はまるでゲームをしているかのように頭にカメラをつけ、生配信していたようです。インターネットが普及し便利な世の中になった中、この様な使い方、そしてテロは受け入れることができません。その事をうけ、模倣犯が違う国でもモスクを襲う事件が出てきています。本当に悲しく、二度と起こしてほしくない事件です。この様なショッキングな事件が無くなることを心から願っています。
そのような中、競馬では感動的な勝利がありました。日曜日のスプリングSでは石川君騎乗のエメラルファイトが見事な勝利を挙げ、お世話になっている師匠の相沢先生と重賞制覇となりました。この馬は札幌2歳Sで見たときから、いつかは重賞を勝つ馬だと思っていました。しかし、石川君も思った結果が出せず、前回では関西遠征を選び、鞍上を変えられてしまいました。そこでの勝利から再度陣営は、毎日のように調教に乗っている石川君に戻しました。そして、見事な勝利という結果で答えたのです。これは先生としても嬉しい勝利だったと思います。丸坊主の社会に出たてのころから面倒を見てきた弟子と共に重賞を勝つことは、本当にかけがえのないものなのです。
2着にはファンタジストが入りました。こちらは事前から心配されていた距離の延長を結果で大丈夫だと見せつけてくれましたね。しかし、本番ではここから3ランクほど上のメンバーになるだけに、大丈夫であってもベストではないことがどう響くかを心配しなくてはいけません。3着のディキシーナイトは、権利を取る勝負の姿勢が石橋君から感じることができました。勝ち切るのは少ししんどそうな手応えでも気持ちの入った騎乗は、これが最近、多方面から信頼を得ている理由だなと改めて感じさせてくれました。ここまでの3頭が皐月賞に向けての切符を手にしました。本番では王者サートゥルナーリアをはじめ、ダノンキングリーに巻き返しをはかるアドマイヤマーズなどもいますし、まだまだ超えなくてはいけない壁が沢山あります。
感動の勝利と言えば日曜日の阪神最終レースでは、今年デビューの団野君が初勝利を挙げました。非常に難しく以前では4コーナーを上手く回れないこともあった馬でしたが、今回は本当に完璧なレースだったと思います。その馬の担当をしていたのが団野君のお父さんだったというのは本当に泣かせてもらいました。当日はお母さんも駆けつけており、初勝利は忘れられないものになったと思います。さらに、管理していたのは所属先である斎藤厩舎だったことも全てがドラマでしたね。
勝利後には、先生が泣いていたという話も耳にしました。勝ちばかりが注目されるのは、スポーツだけではなくギャンブルとして成立している以上、仕方ありません。しかし、この様に人と人が関係しながら成長していく、それも競馬の大きなポイントだと私は思います。忘れかけていた大事な競馬での場面を思い出させてくれた勝利だったと思います。
今週は2019年2回目のG1競走、高松宮記念が中京競馬場で行われます。注目は鞍上と馬、共に初G1がかかる北村友一君とダノンスマッシュです。前回でも圧巻の走りで他を圧倒していたことから、今回も1番人気に推されると思います。それを追うのが2019年G1の2つ目も狙っている天才豊ちゃんとモズスーパーフレアです。こちらは中山で結果を出している馬ですが、左回りやコースがどう出るかがポイントになると思います。
その他に安定感抜群のナックビーナス、そろそろ勝ち切りたいレッツゴードンキ、幸君に手綱が戻るセイウンコウセイなどが楽しみなレースになります。天気予報も非常に気になるところですが、どの馬にもチャンスがあるだけに、見逃せないレースになりそうです。また、ここでも感動の話が生まれることを願っています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。