元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
背中を押したキング
2019/3/27(水)
皆様、こんにちは!とうとう、この日が来てしまいましたね。名プレイヤー・イチロー選手が引退を発表しました。引退会見の中では「人より努力したとは言えない、それでも自分の中でできる努力をしてきた」や「少しずつ積み上げることでしか、自分を超えることはできない」など結果を出してきたからこそ、重みのある言葉で最後を締めくくりました。その言葉のどれもが客観的にイチローという選手を見、その中で足りないものを自分自身が上手くなりたいという気持ちで頑張ってきたことが読み取れました。
平成を語る上で、これだけの選手はいなかったと思います。昔、長島さんの引退の時にも感じた喪失感は大きなものがあります。豊ちゃんがまだ続けてくれていることで大きな穴を感じることはありませんが、今回を豊ちゃんに置き換えたときに、今後の競馬界はどうなるのかと不安にすら思ってしまいました。それほど、大きな存在なんだと改めて思わされました。
そんな中、中京競馬場では高松宮記念が行われました。力が均衡しているレースになっただけに、まず注目したのは枠順でした。今年は例年以上に雨が少なかったため、中京の馬場は状態が良く、なおかつ当週よりはBコースに変わったことからも内枠有利だなと思っていました。結果としても内で我慢をしていた馬達が上位を占めましたね。まず、勝利したミスターメロディーは気性的にも難しいところがあり、前走はぶつけられたことで自分自身の競馬ができませんでした。今回はスタートしてからすぐにポジションを取ることができ、なおかつ1200mのペースが彼にとっては本当に彼に向いたと思います。
道中ではダノンスマッシュが内に斜行し後ろがバタつく中、そのひとつ前にいたことにより影響もなく、リズム良く走れました。そのまま迎えた直線では、ここからは運が必要だとみていましたが、福永君も焦らず、開くのをじっと待っていました。すると、見事に開いた内を、いまだ!っと追い出し、後ろからの追随も許さず見事な勝利を挙げました。このレースの前には、福永君の騎手生活で一番悔いているであろうレースの騎乗馬キングヘイローが亡くなりました。そして、騎手本人もレース後には「キングヘイローが背中を押してくれたと思います」と語っていました。そんな感動の勝利は、レッドファルクス、ファインニードルという絶対王者なき今、新たなキングの誕生を見せつけられたような気がしました。
2着にはセイウンコウセイが入りましたね。不調の時期もありましたが、前回ブリンカーをつけたことで素晴らしいスピードを見せ、それにより気持ちが戻ってきていました。その上、一緒に勝った幸君が騎乗となれば勝ったあの時を思い出したのかもしれません。そして、3着にはショウナンアンセムが入りました。最後の直線では狭くなったことが響いてしまいましたが、もし、あのスペースがあれば、勝っていたのはこちらかも知れませんね。しかし、全ては一度しかないだけに、とても見応えのあるレースだったと思います。
今週もG1がありますよ!中京競馬場はいったんお休みとなり、今週は中山・阪神の2場開催になるだけに、お気をつけくださいね!阪神競馬場で大阪杯が行われます。第1回はキタサンブラック、第2回はスワーヴリチャードと、まだ歴史の浅いレースですが、春の中距離王決定戦として、非常に注目が集まるレースでもあります。出馬してくるメンバーが非常に豪勢ですからね。
まずは、有馬記念を制したブラストワンピースとダービー馬ワグネリアン、皐月賞馬エポカドーロ、マイルCSを制したステルヴィオなどの4歳勢がここで頂点を決するのか、それとも先輩の意地キセキや勢いがあるエアウィンザー、更にペルシアンナイトにマカヒキなどからも目が離せません。どの馬にも力があるだけに、簡単なレースではありません。その中で、今回も枠順は非常に大事になってきます。まずは並びを確認し、そこから展開を予想し、運を手にしたものが勝利を手にします。是非、現場で桜と共に走りきる最強馬を見届けてください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。