元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
点と線を再度考える
2019/5/16(木)
皆様、こんにちは!先週は同じ滋賀県で悲しい事故がありました。我が家からも、そう遠くない所での出来事で、二人の2歳児が亡くなりました。我が家にも2歳の孫がいるだけに、他人事のように思うことができず、ただただ胸が苦しくなりました。そして、園長先生の会見や亡くなられた親御さんの手紙は、悲しみの涙しか生みませんでした。被疑者に関しても、少しの油断がまねいた事故とはいえ、こちらも他人事とは思えませんでした。年々、運転が怖くなり、極力控えている私ですが、それでも必要になることもありますので、自分自身の運転に関しても考える事故となりました。ただただ、被害者の家族の方のことを思うと悲しくなっています。
さて、悲しみのあった週でしたが、競馬は続きます。東京競馬場で行われたヴィクトリアマイルでは、またまたノーザンファーム産のノームコアが優勝しました。短期免許できているD.レーン騎手はこれでG3,G2,G1勝利となり、飛ぶ鳥を落とす勢いを見せています。それもそのはず、オーストラリアで実績があった上に日本競馬にマッチしていることもありますし、ライバルであるルメールの馬が根こそぎ回っていることも絶好調の要因だと思っています。今回のノームコアに関しても、ルメールが騎乗予定だっただけに、本当に恐ろしいほど馬が揃っているなと思いました。
それだけでなく今回の騎乗でも平場でもレーン騎手を見ていて思うのは、特殊な乗り方、そして、ついているという思いが真っ先に浮かびました。それでも馬を動かすのだから、正しい乗り方だとは思います。そして、今回のレースの勝利タイムは1分30秒5と破格のタイムでの勝利に、脚元を心配してしまいました。インターネットで不確定なものですが、骨折を匂わすニュースも出ていただけに、なんとか無事であってくれと願っています。適性は2000m以上かなと思っていたノームコアがマイルでその能力を発揮したことで、牝馬路線はまだまだ混戦であることを思わされました。
敗れたとはいえ1番人気に推奨されたラッキーライラックやアエロリットも見事な競馬だったと思います。ラッキーライラックは鞍上の石橋脩君も非常に勝負をかけた乗り方だったと思います。しかし、若い時から見て、成長分が少ないように感じるレースとなってしまいました。これで負けたら仕方がないなという運びでしたからね。アエロリットに関しては、あのスピードで逃げたうえに、アメリカ帰り、そして5着に粘ったのは力のある証拠だったと思います。
応援していたカンタービレですが、4角を回った時はこれなら勝てると思いましたが、手前を換えた瞬間にガクっと走りのバランスを崩し、ゴールまでずっとバラバラの走りになってしまいました。こちらは、高速馬場で脚に負担がきたのかもしれません。無理をしなかったことで、大きな怪我にならなかったことが次に活かされると思います。競馬は本当に難しいですね。点で考えることができれば、あの位置からあの手応えであれば騎手としては追いたいところが出ます。ファンの方から見ても、かけている馬券は水物。ここで最高の結果をという思いもあるでしょう。
しかし、線で馬の一生を考えたとき、まだまだ活躍できる馬を壊すわけにはいきません。騎手にとっては、それで何もなければ一番いいですが、何もなければなぜ追わなかったとなりますし、非常に難しいところではあります。今回の英断が良い方向に繋がってくれることを願っています。そして、点で考えたレースをした馬の今後も見ながら何が正しかったかを見る必要が関係者はあると思います。一生の中で、ここで燃え尽きてもと思うのか、それとも。これは生き物と戦う競馬にとっては永遠の課題。ファンとしても、それを受け入れる覚悟で馬券を買う必要があるのかなと思ってしまいました。
さて、牝馬最強のマイラーが決定した次は、3歳牝馬クラシックのオークスが行われます。桜花賞馬が不在ということで、混戦が予想されます。その中でも、人気を集めそうなのがルメールからレーンのG1乗り替わり第2弾コントラチェック。前回の中山でも圧巻の逃げ切りで人気を背負うと思いますが、今回は東京ということもあり、個人的にはそこまで甘くはないのではと思っています。しかし、レーンの勢いがどこまで馬の背中を押すのかが楽しみです。
安定して結果を出し、姉が牝馬マイラー女王に輝いたクロノジェネシス陣営もここにかける思いは強いと思います。その他にもトライアルを勝利したウィクトーリアや馬主さんの初G1勝利がある気がするラヴズオンリーユーにも注目しています。是非、皆様も競馬を点ではなく線で追いかけてみてください!また新たな楽しみが見いだせる気がします。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。