
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
全ての運が微笑んだ
2019/5/29(水)
皆様、こんにちは!先日、アメリカ合衆国よりトランプ大統領が来日し、日本を満喫してくれた様子がニュースから流れてきました。しかし、セキュリティー上の関係か、東京では首都高が突然の封鎖が続き、渋滞のパニックになったと聞いています。一国の大統領だけに、日本はここまでのおもてなしをしたのかと驚くばかりです。しかし、日本でも多くの事件が起こっていることを考えると、これもまた仕方ないことなのかもしれません。
それではホースマンが夢見る、日本ダービーの話に参りましょう。数々の伝説が生まれた日本ダービーも早86回を迎えました。そして、勝利したのは、苦しみ苦しみ抜いた浜中君とロジャーバローズでした。出走前から最高の枠に最高の脚質で入ったロジャーバローズ。これは複勝圏内に紛れ込む可能性があるのではないか、そう思っていました。しかし、同型リオンリオンがどのような形で進めるのかが非常に重要になっていました。外枠に入ったリオンリオンは父から息子へとバトンを引き継がれたことからも、思い切りよく行くのだろうなと思っていましたから。それが行けない時は目標にされてしまうため、非常に難しい形だったと思います。
しかし、浜中君としては、どちらにしてもこの馬の競馬をするだけということを頭に入れていたのでしょう。だからこそ、リオンリオンがハナを奪いにきた時、すぐに想定通りにレースを運べたと思います。しかし、少し想定外だったのは、あまりにも早いペース。リオンリオンとしてもペースを緩めたとしても、うま味はないと判断し、飛ばしに飛ばしていきました。その結果、後ろからの馬は脚を使うしかなくなりました。こうなると大事になるのは枠と脚質。ジリジリと伸びる馬が断然有利になります。そういった運を味方につけたロジャーバローズと浜中君が直線ではハナに立つと、外からは万全の競馬で迫ってきたダノンキングリーに交わされることなく勝利しました。

2着のダノンキングリーと戸崎君は天晴な競馬を見せましたが、本来は瞬発力タイプの上、距離も不安になっていたところが出てしまったと思います。3着にはヴェロックスが入りました。極限の仕上げだっただけに勝ちまであるかなと思っていましたが、安全な競馬に徹した分、このレースでは届かなかったというところでしょう。こちらが戸崎君とダノンキングリーの競馬ができていれば勝ち馬は変わったかも知れません。
4着には1.6倍の1番人気に選ばれたサートゥルナーリアが入りました。スタート前からテンションが上がり、スタートでは遅れ、外々を回る競馬に。直線では流石という脚を見せるも最後はヴェロックスにかわされ終了。距離が長いの一言で片づけるには少し違う気がしています。もし、距離の不安を踏まえて乗ることができていれば、更にこの血統を知っている騎手が乗っていれば調教の段階からテンションのことを考えていたと思います。そうすればスタートも。と悔やまれる形となりました。勝者はロジャーバローズでしたが、実力ではやはり群を抜いてこの馬が一番だったと思います。運を味方にすることでしか、日本ダービーを制することはできませんね。

ダービーが終われば、早くも新馬戦が始まります。東京開催はそのままですが、今週からは京都が阪神に変わりますので、お間違えなく。その中で、土曜日には開幕週の阪神で鳴尾記念が行われます。メンバーが薄くなったことで荒れる要素てんこ盛りな気もしています。前残りが予想されるだけに先行馬には注意しておかないとダメですね。その中でまず注目が集まるのはギベオンではないでしょうか。距離としても、開幕週の競馬にも対応できそうですし、今回から乗る福永君がどういう騎乗をするのか楽しみにしています。逃げそうなタニノフランケルと豊ちゃんのコンビも本当に楽しみです。しかし、逃げならば譲りたくないブラックスピネルもいます。そこで速くなることがあればメールドグラースの連勝も出てくるのではないでしょうか。
日曜日の安田記念は絶対女王アーモンドアイとマイルでは譲りたくないダノンプレミアムの戦いになりそうです。しかし、アーモンドアイは遠征帰りの割引がある分、ダノンプレミアムにとっても十分対抗できるのではと思っています。前走で典ちゃんが出していったことで今回は楽に競馬ができそうなアエロリットもいます。その他にも速くなり、よーいドンの展開になればステルヴィオやペルシアンナイトなどのマイルCS組も面白くなると思います。さぁ、来年のダービー馬を探しに今週から要チェックです!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。