元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
信じた自分のスタイル
2019/7/17(水)
皆様、こんにちは!今週は相撲界で安美錦関が引退を発表しました。彼のとる相撲は美しくもあり、強さを兼ねそろえていた関取だったので、非常にこの引退は寂しく感じています。年齢も40歳と体も精神面も限界だったのではと思います。しかし、それでもプレーヤーとして最後まで全うしたいという彼の考えは、本物のスポーツマンだなと感じさせられました。強さだけではなく、美しさや品を感じる相撲を引き継ぐ弟子ができ、また安美錦関のような関取が出てきてくれることを願っています。
それでは先週の競馬の話をしましょう。行われた重賞競走は函館記念でした。毎年、少し足りない馬達が、ここで重賞制覇を達成することからも、楽しみと荒れるのではないかというドキドキを合わせながら見ていましたが、勝利したのはマイスタイルと田中勝春騎手でした。前走は逃げではなく、他をいかし、内で脚を溜めたコンビでしたが、前が垂れてくる際にスペースを無くし、そのまま終わってしまいました。しかし、そこで無理をしなかったことが、今回の勝利に繋がったと思います。戦前の調教でも抜群の動きを見せていましたし、今回は譲ることなく楽にハナをきれました。
2番手にはマイネルファンロンがつける中、前半のペースは59秒台でしたが、ほぼ平均ペース。その中で3番手にはステイフーリッシュがつける形となりました。戦前の予想通りの展開になりましたが、4コーナー手前ではステイフーリッシュが前を追いかけるも、抜群のペースで逃げていたマイスタイルが後続を引き離す形となりました。直線では2番手にいたマイネルファンロンが一度は前に出るも、根性を活かしたマイスタイルが差し返す形となり、見事初重賞制覇となりました。
鞍上の勝春君にとっては記念すべき重賞50勝目のメモリアル勝利となりました。今は少なくなってきた昭和スタイルで、私個人としては非常に好きな騎手です。その彼の勝利には嬉しさも、グッと胸が熱くなりましたね。騎手も馬も自分のスタイル、まさにマイスタイルを変えずに挑み続けたコンビの素晴らしい勝利だったと思います。
夏開催の中京、福島、そして函館も残すは今週のみとなりました。早すぎると嘆いている声が北の大地の関係者からは聞こえてきそうですね(笑)。この夏開催第1章は、まさに遅れてきた梅雨との戦いだったと思います。大雨でのレースが多く、馬場がぐちゃぐちゃになり、テレビを見ていると貼り直したのではないか?と思う馬場もありました。こうなってくると、馬場適性が必要になりますし、一度走った馬達の疲労はいつも以上になり、予想する側としても、前回2着だからこれだ!と本命にしていたら、阪神や京都からフレッシュな状態で連れてきた馬が多く勝つという結果が多かったように思います。そんな最終週には中京競馬場では中京記念が、函館オーラスには2歳の初重賞、函館2歳Sが行われます。
中京記念では、なんといっても斤量差からもカテドラルとグルーヴィットの2頭に注目しています。カテドラルは距離を短くしたことで才能が開花。前走もスペースがあればというレースでしたし、馬場さえ合えば圧勝もあるのではと思っています。逆に馬場が合いそうな上、才能豊かなグルーヴィットからも目が離せません。こちらはダートでも結果を出してきただけに、非常に楽しみなところがあります。その他にも初の斤量を背負うプリモシーンの動きも気になります。個人的にはここらで結果を見せてほしいミエノサクシードも応援したいと思います。皆さんのマイスタイル馬券で、是非、夏一章は素晴らしい締めくくりを!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。