![松田幸春](/img/column/judge/tit_judge.jpg?=v1)
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
失敗を忘れないことが導いた勝利
2019/10/16(水)
皆様、こんにちは!10月にも関わらず、地球史上最大の台風が日本を襲いました。被害は大きく、東京でも床下浸水や駅が水没するなどの被害が出ており、道が水没し電気もこないといった状況の場所もでてきたほどでした。想定以上の被害が出てしまったことを本当に悲しく思います。被害に合われた地域の、一日も早い復旧を祈っています。この台風で競馬も大混乱となりました。東京競馬では12,13日の競馬が延期になり15日火曜日、21日月曜日にスライドとなりました。ここに考えて馬を作ってきた関係者には試練の日程になると思います。休みもなくなるでしょうし、馬の調子を維持させなくてはいけません。21日の競馬は非常に難しいものになると思います。それでもお客様を喜ばせるレースが行われるように願っています。
そんな台風の中でも京都競馬は開催されました。非常に強い雨風により中止も懸念していましたが、JRAが実施を発表したことに少し驚きました。しかし、JRAとしても厳しい雨でも実行できると色々な所から情報を集めて踏み切っていたので、何とかなるのかなと思っていました。土曜日は非常にタフな状況ではありましたが、なんとか無事に終え、そして迎えた日曜日。牝馬3冠のラスト、秋華賞が行われました。前日の荒れた天気からも馬場を心配していましたが、凱旋門賞を見ていたせいか、それとも馬場が優秀だったのか、そこまで悪い状況に見えませんでした。その中、クロノジェネシスと北村友一君が最後の1冠を手にしました。
2歳時からひとつ抜けた才能を持っていた同馬。今回は直行というローテーションからも人気を少し落としていましたが、力自体は抜けていました。パドックでは体重の増加が数字上では気になりましたが、見た体は完璧な成長分で、ひとつもふたつも上の牝馬になってきたのを感じました。道中では完璧なポジションを取りましたし、最後の直線では迫るカレンブーケドールを絶対に出さないという気迫は、阪神JFで内からすくわれ負けた責任を騎手自身が感じ、ここまで意識してきたことへの表れに見えました。非常に素晴らしい競馬をしたと思います。
![クロノジェネシス](https://www-f.keibalab.jp/img/upload/topics/201910/191013_chronogenesis.jpg?1570954590)
2着に敗れ初のG1勝利を逃したカレンブーケドールと津村君。しかし、このコンビもまた最高の競馬をしたと思います。無駄のない競馬で、津村君らしいスマートな競馬。締められても諦めずこじ開ける気合。見ていても非常に熱くなるレースだったと思います。3着にはシゲルピンクダイヤが入りました。こちらはトライアルを見た時から距離の不安を感じていましたが、やはり今回は距離だったように思えます。しかし、鞍上の和田君はこの癖馬を非常に上手く扱っていたなと思います。道中では溜めに溜め、最後の4コーナーの手応えは勝つんじゃないかというくらいでしたからね。今後、路線を変更すればヴィクトリアマイルでは非常に楽しみな一頭だなと思いました。
今週はクラシック最後の一冠、菊花賞が行われます。皐月賞馬サートゥルナーリア、ダービー馬ロジャーバローズが不在の中、どの馬が栄冠を手にするのか、非常に楽しみな一戦です。秋華賞のクロノジェネシスのように、常に惜しい競馬をしてきた馬にまず注目したいですね。その筆頭となるのがヴェロックスではないでしょうか。皐月賞2着、ダービー3着と惜しい競馬が続いているのは重ねられますからね。しかし、初めての距離はそこまで甘くないのも事実だと思います。その他の狙い目としてホウオウサーベルやシフルマン、人気が手頃なレッドジェニアルやワールドプレミアにも注目しています。ラグビーW杯では日本が初のベスト8を決め、姫野選手のジャッカルが注目を集めているだけに、レッドジェニアル騎乗の酒井騎手のトーホウジャッカルを彷彿させるレースにも期待しています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。