元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
天才のドラマ
2019/10/23(水)
皆様、こんにちは!先日、皇居では天皇即位礼正殿の儀が行われました。当日は雨になり、このおめでたい席で残念だなと思っていると、何と儀式が行われる瞬間から空の雲が無くなり、大きな虹がかかる奇跡的な時間となりました。その中で行われた儀式は神秘的であり、新しい時代の明るさを示していたように感じました。私も昭和、平成、そして令和を過ごしてきましたが、このようなことは初めて目にしたので、非常にワクワクしました。
そんな昭和、平成、令和でG1を勝つだけでも大変なのに、同一G1を3元号で勝利したのが天才豊ちゃんとワールドプレミアのコンビでした。豊ちゃんは最年少G1を菊花賞で制しており、そして今回、最年長で菊花賞を制しました。また制した競馬場は、彼が慣れ親しんだ京都。改築が決まり、少しの間お休みになる京都競馬場で、その記録を達成しました。その上、自身と共に3冠馬になったディープインパクトの子供で、当日は父の武邦彦さんの誕生日でもありました。全てが、まるで奇跡のような出来事でした。
レースは、もう天才の腕をまざまざと見せつけられました。返し馬をまず確認していると、目についたのがワールドプレミアとヴェロックスの調子の良さでした。そこから、輪乗りを始めゲート裏にくると、ワールドプレミアのテンションが少しずつ上ってきました。これを見た時、3000mは厳しいのかな、ポジションを取りにいけないかなと思いました。しかし、悩まされていたスタートをしっかり出すと、スタートをいつも以上に出たカウディーリョがハナを主張していきました。少し口を割るような形になり、馬と喧嘩をしながらレースになってしまう中、それを見逃さないように、スっと馬と会話を楽しむように天才は、内にポジションを確保しました。
迎えた4コーナーでは、スミヨン騎乗のヒシゲッコウが内から上り並んだ時、スッと横を見ました。世界の名手がこの時点で、内のスペースは取られると感じたのでしょう。簡単に外を選択し、その前にはヴェロックスが進出を開始しました。早々と道中喧嘩してしまったカウディーリョが止まる中、ヴェロックスがハナに立つ間も与えないほどの脚で、豊ちゃんが内を捌いてくると、そのまま令和初のG1勝利を挙げました。2着には距離が心配されつつも福永君が我慢我慢でレースをさせたサトノルークスが入り、1番人気のヴェロックスが3着に入りました。最後の一冠を手にしたのは、菊花賞男の天才豊ちゃんでした。この勝利で友道厩舎は牡馬3冠レースを制覇となりました。名馬に名手、そして名将のコンビが生み出した最高のドラマだったと思います。
4日間、3日間の過酷日程を終了し、今週は楽しみな天皇賞(秋)が行われます。天皇即位礼正殿の儀のように感動の虹がかかるレースとなるのか非常に楽しみです。その中でも、注目はアーモンドアイとサートゥルナーリアのロードカナロア産駒の対決です。どちらも文句のない名馬で、歴史に名を遺すような強さだけに期待しています。個人的にはサートゥルナーリアとスミヨンのコンビは非常に見ていてもワクワクする組み合わせで、どれほど走らせてくるのかと今から楽しみすぎます。しかし、アーモンドアイの力は本物。暑さもマシになってきたことからも、最高の走りを再び見せてくれると思います。
その他にも、アエロリットがどこまで粘れるのか、名将友道厩舎の3本の矢がどうなるのか、スワーヴリチャードの新しい面が楽しみで仕方ないといったレースになりそうです。間違いなく世界最高レベルのレースになるだけに、必ず見てくださいね!あなたの中のベストレースになるかもしれません!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。