元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
歴代No.1牝馬
2019/10/30(水)
皆様、こんにちは!遅れていた冬の景色が少しずつ顔を出し始めた今日この頃。日本を熱くさせたラグビーW杯もとうとう決勝を残すだけとなりましたね。日本代表は敗れてしまいましたが、今回の形跡はラグビー人気を上げることに成功したのではないでしょうか。屈強な男たちがぶつかり合い、時には血を流しながら守るゴール。そして、気持ちを繋げてもぎ取るトライ。それはチームというより一国対一国の武器を使わない戦闘のスポーツと呼んでも過言ではないでしょう。それほどまでに人を熱くさせるのも、フェアな精神とフェアな条件の戦い合いだからこそだと思いました。最強決定戦まであと少し。日本に勝った南アフリカを応援したいと思います。
さて、ラグビーだけでなく競馬でも最強決定戦、天皇賞(秋)が行われました。今回はなんとG1馬が10頭出走する豪華なメンバーに、レース前には早く結果を見たい、でもまだ見たくないと複雑な気持ちになるほどでした。その中でも、注目は最強女王アーモンドアイと怪物サートゥルナーリアの戦いでした。そして、軍配が上がったのはアーモンドアイとルメールのコンビでした。
レースは熱いものがありました。スタートを五分に出ると、内枠だったアーモンドアイとしては少しポジションを取る競馬をするだろうと思っていました。しかし、シビアに締めていったのがスミヨンとサートゥルナーリアのコンビでした。スミヨンとしても、アーモンドアイを自由に走らせては勝ち目がないと分かっていたのだと思います。1コーナーから狙い、2コーナーでは完全にアーモンドアイを内ラチに入れ込み、ポジションを下げさせました。こちらは戒告処分になってしまいましたが、世界で戦ってきたワールドレベルの騎手というシビアな乗り方に、流石だなと思いました。しかし、ここで無理をさせたことで、馬のテンションと会話が上手くいかなくなった理由でもありました。
それを横目に、このメンバーでは遅いかな?と思うペースで逃げたアエロリットをマークするようにダノンプレミアムはサートゥルナーリアのひとつ外を回りました。ここは世界で修行をし、このレースまでリーディングを守っていた川田君もシビアに走ってきました。そして、迎えた直線で川田君はサートゥルナーリアを見ながらも、アーモンドアイを入れ込む最高の走りを見せていました。これはダノンプレミアムか?と思った矢先、アエロリットと内ラチ1頭分のスペースを迷わず絶対女王とルメールは見逃しませんでした。
本来の仕掛け所よりも、少し早く動く必要があったと思います。しかし、スペースができた瞬間を見逃さないのがルメール騎手の技術。内から抜けてくると、そのまま引き離し絶対女王が見事な勝利を挙げました。このペースでよーいドンとなったことも良かったとは思いますが、それにしてもここまでの着差をつけての勝利は圧巻でした。2コーナーでサートゥルナーリアに入れ込まれたことでラチと激突していたにも関わらずですからね。
その理由となったサートゥルナーリアは100%のデキではないように見えました。少しポジションを取るために出したことで気が入ってしまったこともあります。レース前にはテンションが上がってしまったこともあります。色々なことが重なってしまったレースでした。しかし、そこまでしてもスミヨンは勝ちに行くレースをし、陣営としても攻めるしかなかったのだと思います。だからこそ、ここで得た経験でもう一度絶対女王にトライしてほしいと思います3着に入ったアエロリットの根性、4着に入ったユーキャンスマイルの末脚と見ていてもドキドキが止まらないレースでした。
今週は中央G1こそお休みになりますが、土日共に重賞があり、更にJBCもある豪勢な週になります。その中でも、日曜日に東京で行われるアルゼンチン共和国杯に注目してみたいと思います。人気を集めるのは東京が得意なルックトゥワイスになると思います。前年の覇者パフォーマプロミスを管理した藤原厩舎だけに、ここは狙ってきていると感じます。
そこに待ったをかけたいのが去勢後やっとらしい走りに戻ってきたアフリカンゴールド、寒い季節になり本領発揮かアイスバブルもいます。安定した走りが魅力のムイトオブリガードもいますし、スタミナ勝負になればポポカテペトルも面白いです。このようにG1では少し足りないかも知れないメンバーですが、それでこそ拮抗しているだけに、荒れる可能性も十分だと思います!今週もラグビーに負けない熱いレースを期待してください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。