元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
今回までのプロセスが勝利を掴みとった
2020/4/7(火)
皆様、こんにちは!とうとう安倍首相が緊急事態宣言を発表する意向を固めましたね。遅すぎるという気持ちがありながらも、出してくれることで何が変わるのか、生活がどう保障されるのかとまだまだ不安なことしかないです。そして、とうとう心配していたJRA職員の方で新型コロナウイルスが発見されました。調整ルームの職員さんということで、多くの騎手が関わっていたのでは?と懸念も、いったん一緒にテレビを見たという理由で3人の騎手が自宅待機になり、乗り替わりが発表されました。
今後、この広がりが拡大することで、競馬の施行も難しくなるかもしれません。競馬が行われないと、馬主さん、厩舎側などすべての人にとって金銭面的にも厳しくなります。だからこそ、ギリギリまで行いたいというのが正直な気持ちでもあると思います。いつまでコロナに踊らされるんだ!とウイルスに怒りがこみ上げますが、今はただ一人ひとりが自分たちにできることを行うことが大事だと思います。
そんな中、G1になり4回目の大阪杯が無観客の中、阪神競馬場で行われました。ドバイの中止などにより、メンバーとしては新たな可能性を見せつけてくれる一頭に期待していましたが、勝利したのはラッキーライラックでした。これでG1は3勝目になり、名牝の道を進んでいます。パドックを見ていた時、思わず「これはいいな」と言ってしまったのが、まさにラッキーライラックでした。前走でいいガス抜きができたこと、陣営が2歳から少し伸び悩んだ際にとったローテーション、スミヨン騎手が改めて競馬を教えたことが今回の勝因だったと思います。
鞍上のミルコにとっては約1年ぶりのG1勝利となりましたが、3コーナーで手応え抜群のところから、外で動くクロノジェネシスの動きにも全く対応しなくて良いと判断できたことも大きかったと思います。あれほどの手応えであれば、焦る必要も全くないですからね。本人としても、直線に出せれば勝てると確信があったと思います。今回の着差は僅かでしたが、馬のデキや能力、展開全てがかみ合った勝利でした。
2着にはクロノジェネシスが入りました。こちらは王道の勝ちにいく競馬をしましたが、同じ勝負服の相手にやられたという形ですね。ここでもあの走りで勝ち切れればジェンティルドンナのような名牝の道へ!と思っていましたが、そこまでではなかったのが結果から伝わってしまいましたね。しかし、能力は非凡ですし、まだまだG1を勝つ力はあるので、今後が非常に楽しみです。
そして、3着にはダノンキングリーが入りました。スタートが予想以上に出てしまったことから、ハナを選択しましたが、やはり根本的に少し長いのかもしれませんね。今回の走りで、方向性として安田記念の方に舵をきると思ますが、どちらにしても少し足りないところがあるのかもしれません。4着に入ったカデナは次も非常に楽しみな競馬になりました。直線では追えなくなる場面もありましたが、腹を括ったレースをしていましたし、展開次第では完全復活になると思います。
今週は開催できるのか、非常に難しい状況になってきましたが、2020のクラシックが始まります。まずは牝馬クラシック第一弾、桜花賞が阪神競馬場で行われます。例年通り、牝馬が圧倒的に強い日本競馬ですが、今年は混戦模様になりそうです。その中でも人気を集めるのがサンクテュエールやマルターズディオサにミヤマザクラ、レシステンシアとデアリングタクトになるのではないでしょうか。
その他にも復活すれば圧勝もあるリアアメリアや今回が楽しみなヤマカツマーメイドにマジックキャッスルなどもいます。どの馬にも展開次第でチャンスがあるだけに運を味方につけた人馬に勝利の女神は微笑むのではないでしょうか。日本が、世界が、窮地にある中でも開催させてもらっていることに感謝をしながら、楽しみにして待っていたいと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。