元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
Stay(ステイ)
2020/5/6(水)
皆様、こんにちは!待ちわびていたゴールデンウィークもアッという間に終わりを迎えてしまいました。例年なら休みに合わせて息子たちが集まり、ご飯を食べたりしているのですが、今年はステイホームということで、近くの孫たちは顔を出してくれましたが他の孫は帰ってくることすらできずとなってしまいました。日々、成長する姿を写真で見れるテクノロジーがあるので成長していく孫の姿は見れども、直接会った時の可愛さを考えると、やはり寂しいゴールデンウィークとなってしまいました。
更に5月末まで延期された緊急事態宣言ですが、いつにどうなったら終結なのか、コロナに効く薬の発表がないと厳しいのではと個人的に思っています。競馬は行われていますが、他の人達のことを考えると経済も破綻へと向かっています。ここで政府としても給付金ならびに止まっている人達に向けて、再度考え直すことも即座にやって頂きたいなと思います。
そんなステイホームの中、京都競馬場で令和初の天皇賞(春)が行われました。前回のコラムを書いた後に、はっ!とステイホームで馬券を獲ってステイゴールドしましょう!と言っていないことに気づき、まさかなと返し馬を見ていると非常に素晴らしい馬がいました。そうです、それがスティッフェリオだったんです。相手を見ても絶対に敵わないのはフィエールマンくらいだなと思って見ていました。
そして、レースが始まりました。スタートで注目されたキセキが天才の手綱捌きかスムーズに出ると、内からダンビュライトがハナを奪う形になりました。その後ろに同厩舎のスティッフェリオがつけ、外からキセキが追走する形になりました。迎えた1周目のスタンド前。例年ではここで大歓声が上がり、馬の走る蹄音と混じるハーモニーがあるのですが、今年は静かに響き渡った走る音が何かを予感させる空気になりました。
その中、キセキと豊ちゃんがこれ以上は引っ張って馬の走る気を削ぎたくないとゆっくりと外からマクる様な形でハナへと立ちました。ここから4コーナーの入り方を見ても、さすが盾男!これは決まりだ!と見ていましたが、思いがけない失速。その外から、じっくりと1頭で楽に進められたスティッフェリオが一気に先頭へと踊り出ました。返し馬でのフィーリングが合っていたのか!?このまま1位をステイか!と驚いていると、外へと出したミッキースワローとフィエールマンが末脚を活かし迫り、フィエールマンがゴール寸前で捕え見事な連覇を達成しました。
2着にはステイホームからの父ステイゴールドのスティッフェリオ、ミッキースワローと続きました。私の注目ユーキャンスマイルも急な乗り替わりとはいえ、浜中君はとても上手く乗ったなと思いましたね。しかし、やはり岩田君で見たかったなというのは終わった今でも思ってしまいます。道中外から被されたことも、ここが一頭で楽に行けていたらどうだったかなど多くのことを課程しています。勝利したルメール騎手は天皇賞だけで4連勝という素晴らしい記録を作り、本当に素晴らしい騎乗でした。
道中もリラックスさせることに全力を尽くしながら、自分の馬が使える脚を知り尽くしているからこそ焦りもありませんでした。だからこそ、終わった後のコメントでも「手応えがあったし、着差以上に楽勝だった」というのは長距離だからこそ溜め、脚を使うというギリギリまで「溜める」ということができるトップ騎手だからこその感覚だなと感じました。まさに最強騎手!
今週から5週連続東京競馬場でのG1が始まります。その初めとして3歳マイル王決定戦NHKマイルCが行われます。私の注目は新馬戦から走りを見て、これはG1の器だと感じた一頭サトノインプレッサです。心配は初めての輸送になると思います。その他の人気になりそうなレシステンシアも初輸送ということで、さらに懸念となる気がしています。
ここにタイセイビジョンとルフトシュトロームが絡んでくるレースになると思っています。力が抜けた4頭に他がどう対抗するのかが見物のレースになるでしょう。新型コロナで外出できないこの環境だからこそ、競馬から伝わる感動が皆様にいつも以上に届きますように。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。