元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
超一流の、超一流の返答
2020/5/18(月)
皆様、こんにちは!複数都市を除き、緊急事態宣言がなくなりました。設定した条件が正しいかどうか判断はつきませんが、専門家の先生と決めた内容でしょうし、一旦、業務が止まっていた人にとっては朗報だったと思います。しかし、そのことからも不安になるのは、外に出ることが再度増えた時の増加率です。その他にも、改善薬が現状ないまま、治まってきているからと動かすのは非常に危ないところもあるなと思っています。経済的目線と健康的目線の線引きが難しいだけに、政府だけでなく、国民一人一人の意識や考え方も合わせて決断をしてくれたらと思います。
新型コロナの影響は競馬でも無観客の他、調教にも出ています。関西の騎手が美浦への調教に行けず、大切なG1の追い切りにかけつけられないという状況になっています。そんな中、ヴィクトリアマイルに出走予定だったアーモンドアイとルメール騎手のコンビも例外でなく、熱発から有馬記念に向かい敗戦し、ドバイがコロナで中止になり、走らずに戻っての今回。ルメール騎手としては、この馬のためにドバイに先入りしたりと、彼にとって生涯一と言ってもいい相棒の追い切りに乗れないというのは非常に不安があったと思います。
そんな不安の中で迎えたヴィクトリアマイルが東京競馬場で行われましたが、結果は圧勝の一言。一頭だけ追い切りを競馬場でしたのか?というほどの強さでした。レース後のルメール騎手からは「コロナの影響で調教に騎乗できず、仕上げてくれた牧場や厩舎を始め、最終追い切りに代わりに騎乗してくれたコーセイ・ミウラに感謝を伝えたい」と言った時に、彼は競馬に向かうためにどれだけの人が関わって、どのような思いがあって自分が最後にレースで乗っているということを意識できている人間なんだなと、だからNo,1なんだなと思わされましたね。
平場でも少し硬い馬でも彼は最後まで乗り、少しでも前へという騎乗をしてくれているんだと認識させられた一面でした。同レースに騎乗予定だった三浦君も超一流の対応だったと思います。本来、ライバルの仕上げに騎乗?とプライドもあります。しかし、それを快く受けプロの仕事をしたことは、評価に値すると思います。
2着には重賞3連勝中だったサウンドキアラが入りました。成長したのが3連勝でもフロックかと思われていた節がありますが、今回の結果で証明できたと言えます。こちらは馬もしかり、松山君の成長が見られたレースでした。スタートからポジションを取って折り合わせ、直線ではアーモンドアイの存在を確認しながらギリギリまで我慢してGoサインを出しましたが、今回は相手が日本競馬を代表する怪物牝馬だったが故に敗戦しました。
しかし、例外のようなコンビがいなければ松山君の勝利だったでしょうね。このレースだけでなく、他のレースでも最近の彼は勝負がかった騎乗をしていますし、何よりも騎乗バランスが本当に素晴らしくなってきています。彼の馬質が更に向上することで、一気に日本人No,1騎手として輝く日もくるかもしれません。
3着のノームコアも実力を見せてくれましたね。人気はしていましたが、パドックから元気がなかったラヴズオンリーユーは見せ場なしの敗戦でした。距離が忙しかったこともありますし、鞍上が馬場を読み切って前目につけたかったにも関わらず、内に押し込められてしまったことで、レースを次に向けたという印象を受けました。平場でも内にこだわって騎乗し、当たっていただけにそのイメージで乗ったと思いますが、G1は仕上がりきっている実力馬ばかりで、そうそう空きませんからね。そういった意味で、次走の内容がカギになってくると思います。しかし、道中の走り方が少し以前と違ったことが気になりましたし、こちらも次走で確認したいところです。
さて、連続G1はまだまだ続きます。今週は牝馬クラシック第2弾オークスが行われます。注目を集めているのは連勝連勝で桜花賞を制したデアリングタクトと松山君のコンビです。前走の走りからも騎手の成長からも、距離も大丈夫であろうと思っていますが、気になるのは今の東京コースの馬場。圧倒的な内前残りで、力が違わないと差し切ることは非常に難しくなっているだけに、その辺りは土曜日から確認が必要なところになっています。
対抗馬はレーンを確保できたデゼルではないでしょうか。こちらは、東京実績もありますし、距離も大丈夫。ただ、やってきた相手が薄かったことから、G1でどれだけ対抗できるかという点が心配ではあります。それさえも跳ね除けて勝利をもぎ取ることができるのか本当に楽しみです。そして、今の馬場で楽しみなのがスマイルカナやウインマイティーなどの先行勢。枠順が非常に大事になりますので、是非、馬場と合わせて確認しながら、馬券購入してくださいね!次のアーモンドアイが出てくることを祈りながら楽しみましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。