元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
新たな伝説の始まり
2020/6/1(月)
皆様、こんにちは!小倉競馬場がある北九州市では新型コロナのクラスターが発生し、まだまだ安心できる日々は遠いですが、それでも少しずつ、国民一人ひとりの意識が上がってきているおかげで収まってきています。JRAは6月末までの無観客競馬を発表しましたが、騎手や馬の移動に許可が出たことは良かったなと思っています。もちろん移動しない方が安全ですが、どうしてもこの馬にはこの騎手に乗ってもらいたいというケースもありますからね。最善のケアをしながら、少しずつ前に進んでいることを嬉しく思います。止まっていた学校や会社が少しずつ動き出していることに関しても、本当に良かったなと思います。
さて、学校や会社が新しい時代へと踏み出したタイミングで、日本競馬界も新たな一歩を踏み出したと思います。先週日曜日、東京競馬場では日本ダービーが行われました。ホースマン全員が目指す最高の舞台。残念ながら無観客での施行となり、本当に残念でした。その中、頂点へと上り詰めたのはコントレイルと福永君のコンビでした。レース数日前にはブルーインパルスが飛び、医療関係者に向けた感謝のフライトを見せましたが、コントレイルの名前の意味は飛行機雲ということで、実力も空気もすべてが彼らの勝利を意味づけていたように思えました。
皐月賞では追走に少し遅れ、難しいレースになったにも関わらず、圧巻の勝利。そして今回、陣営は追走の部分やゲートに関しても修正してくるだろうなと思っていましたが、見事な修正力だったと思います。スタート後、すんなりとポジションを取りにいったコントレイル。前にはコルテジアとディープボンドがポジションを取ったところで「これは勝負あり」と早々とコントレイルの勝利を確信しました。出遅れた上でギシギシにつまった馬群に突っ込まない限り負けないと思っていたからです。陣営が、それもわかった上で細かく調整してきたという内容でした。
福永君としても皐月賞で下手なレースをしてしまいましたが、それでも勝ち切った馬の力が別次元にあるとわかっているからこそ安心したレース運びを行いました。最後抜け出してからは、他の馬を待つように遊びながら走っていましたが、それでも別次元の走りで突き抜け、見事勝利を上げました。福永君にとっては念願のダービー制覇から今回が二度目。前回は感極まって頭が真っ白になったレース後でしたが、今回は勝ってホッとした感じで地に足がついた表情だったと思います。2着にはまたまたサリオスが入りました。4角から一瞬、この馬か!?と思う走りは見せてくれましたが、相手が悪かったですね。
ブエナビスタやハープスターなど、怪物のような馬はなぜこの体で走るんだ?とオリジナリティを持った皮膚感や形をしています。常識では考えられないところからも、サンデーサイレンスがもたらした体系から新しい世代への体系が始まり、当たり前が変わる気がしています。ディープインパクトが作った伝説から新たな伝説への始まりを目にした瞬間でした。とは言え、今年のクラシックは例年に比べ、少しレベルが落ちた気がしているのも確かです。勝った馬は怪物級に強いのは事実も、どこか物足りないレースだった気がします。ここから夏を超えて成長してくる馬たちがどのように王者を倒すのか、非常に楽しみです。
さて、今週で連続G1も最終週になります。開催が京都→阪神に替わり、東京開催はそのまま行われます。その東京では安田記念が行われますね。注目はG1・8勝目を狙う、現代競馬の最高傑作アーモンドアイでしょうね。前回は追うこともなく、調教のような形で勝ったパーフェクトレディーを誰がどう倒すのか見てみたいところでもあり、新記録の8勝目を期待している自分がいます。インディチャンプも見逃せません。力をつけて1600mでは敵なしの走りをしていますし、今年もアーモンドアイに土をつけるのは同じ勝負服の彼かもしれません。
アドマイヤマーズも出てきます。しかし、こちらはひと叩きした方が走る馬と思っていますので、どこまで仕上げてきているかがポイントになります。その他でもグランアレグリアは目が離せません。前回の1200mは彼女にとって短すぎましたし、今回は好勝負してくれると思っています。復帰して少しずつ少しずつ感覚を取り戻してきている戸崎君騎乗のダノンキングリーも相手が強すぎるとは思いますが、いい競馬をしてほしいなと願っています。豪華すぎるメンバーが揃う安田記念。今週も新たな伝説の始まりが見られるかもしれません。是非、その最高のタイミングはSTAY HOMEでお見逃しなく!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。