元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
恵の雨
2020/6/29(月)
皆様、こんにちは!コロナ禍の中ではありますが、プロ野球やJリーグなどが行われ始めました。毎日、プロ野球を見る私としては、本当にうれしい限りです。まだまだ、リモートマッチと称しお客さんは入れませんが、試合を見ていると「あれ?人がいる」となっていたのですが、無観客を少しでもと球団がファンの皆様のパネルを置いたりしているようでした。
その他にも、私にはよく分かりませんがVR応援というメガネをはめて、実際にそこに人がいるような応援や声援のみを流したりと、新しい形ではありますが、少しずつ関われるようになっているのは喜ばしいことだと思います。コロナで色々なものが変化や終了を迎えました。しかし、それは新たなことへの挑戦だと思い、頑張っていってもらいたいと思います。
そんな中、夏競馬前最後のG1宝塚記念が行われました。毎年、馬場が悪くなることが多いG1で、実力の上に馬場適性が大きく出るレースでもあるのですが、今年は少しマシかな?と思ってみていると9Rあたりから台風のような豪雨に見舞われました。その雨の影響で、一気に馬場の重みが変わりました。よく、サッカーでもホームスタジアムでは自分のチームがパスサッカーをするところなどはボールを素早く転がるように軽く水をまいたりとかは聞いたことがありますけどね。
その自然が降らせた神の雨は、勝ったクロノジェネシスのためだったかもしれません。以前も、当コラムの中で歴代の怪物牝馬に並べる可能性があると記述していましたが、今回の走りはまさに、そのことを実現してくれたなと思いました。前回の大阪杯から体を増やし、更に成長した上に、この馬の特徴であるピッチな走りが京都記念でも見せた重馬場が得意というのもプラスした結果、6馬身差の圧勝となりました。この様な走り方が一番、凱旋門賞の馬場には合うかもしれませんね。もちろん、それを実現するためには長期で滞在し、ディアドラのように海外の競馬向けに馬を変えていく必要はありますけどね。「挑戦なくして成功はない」ので、ぜひトライしてもらいたいなと思います。
菊花賞以来、勝利がなかったキセキですが、今回の豊ちゃんのチョイスは逃げずに結果を出した菊花賞の時のような控える競馬でした。折り合いも問題なく我慢できていたことは陣営の粘り強い調教の成果だとも思えました。そして、一瞬の脚ではなく長く使える脚を非常に上手く使い、2着に入りました。本来ならば最高の勝利パターンだっただけに、どれだけクロノジェネシスが強かったかが見えるレースでした。3着にはモズベッロと特に重い馬場で勝ってきた馬が結果を出しただけに、寸前の雨は彼らにとって恵の雨になったということでしょう。
4着にはサートゥルナーリアが入りました。返し馬から、スタート直後の走り方や進み方を見て、これは馬場が合わないなと感じました。案の定、持ち味である大きなスライドでスイスイとは走れずに、最後はスタミナ切れを起こしてしまいました。しかし、個人的にはまだまだこの馬が現役最強だと思っています。ここで、たくさんの負の要因を洗い出せたことは非常に有意義な一戦になったと思います。ただ、日本には海外のように馬場が荒れそうや雨だからレースを直前で回避するというルールがないだけに、ファンの皆様が天候等で入れる入れないを決めなくてはいけません。まだまだ順位付けは終わらないレースだったと思います。
早いもので今週からは夏競馬の本格的な開始になります。京都競馬場の改築などに伴い、開催は中京ではなく阪神のまま阪神・福島・函館となりますので、ご注意くださいね。そんな中、本来ならば中京で行われるCBC賞が阪神競馬場で行われます。高松宮記念は1着でゴールをきるも降着になってしまったクリノガウディーが出馬してきます。中京の荒れた馬場もこなしていただけに、今の阪神でもこなしてくれるのではと思っています。ただ、鞍上が和田君ではないのは、少し寂しいです。走らせる結果としては出していましたし、レース結果という意味では降着となりましたが、ファン目線では和田君に乗ってほしかったなと思います。
次点で選ばれるのはアウィルアウェイになるでしょうね。こちらはハンデ次第かなというのが正直な印象です。その他ではやはりエイシンデネブが気になります。今の馬場や展開を考えても難しいのはわかりますが、それでも気になってしまいますね。例年なら終わっている阪神競馬場で行うことで、馬場の痛みや展開が変わってくると思います。荒れた馬場を味方につけられる馬を中心に選ぶのも手かもしれません。もう少し無観客が発表されましたので、今週もおうちで応援しましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。