元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
これがベテランの技
2020/8/26(水)
皆様、こんにちは!この間の週末には、楽しみにしていた24時間テレビが行われましたね。今年はコロナの影響で例年のような取り組みができない中、高橋尚子さんをはじめとするチームQが募金ランという形でチャリティーランを行い、感動をもらいました。走らなくてそのまま募金したらいいのではないか?という声もあったと思います。しかし、本物のアスリートが自分達の頑張りを見せることにこそ、本当に辛い時でも頑張ろうというメッセージがあったのではないかと思います。
そして、今週に入り川崎競馬場で騎手に新型コロナが出た影響によって開催が中止となりました。誰が悪いというわけではないですが、国営でないからこそ自分達でチェックを行い、感染を増やしてはダメだと決めた中止。馬も生き物ですから、中止になれば走れる機会がなくなります。厩務員さんや関係者の稼ぎも減ります。それでも止める勇気は素晴らしいと思いました。しかし、中止になった時の保証まで考えてほしいというのが個人的な考えです。
この後も継続的に騎手にコロナチェックを行う地方競馬に、国営のJRAはどうでるのかは見所でしょうね。国に税金を多額に納めるJRAですが、移動が多い騎手や関係者のチェックが毎回ないとなると、国の健康を脅かしている可能性が大きいですからね。安全に施行してもらえるのが一番だと、改めて思わされました。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。小倉で行われた北九州記念では、雨の影響で予想するも真逆の馬場へとなってしまいました。その中で勝利したのは、今回からブリンカーを試したレッドアンシェルと福永君でした。馬場は変われど展開が変わるメンバー構成でなかったことからも、じっと焦らずに展開を読み切りました。万全のレース運びを見せた上で直線外に出し、手前を換えた瞬間。以前にあった鋭い伸びを見せた同馬に、思わず福永君の「これだ!」と表情が一瞬ニコリとするのが見えたような気がするほどの素晴らしい伸びで勝利しました。
2着に入ったモズスーパーフレアは、夏のこの斤量で休み明けとマイナス要素が重なる中で素晴らしい結果だったと思います。次はもっとよくなりそうなイメージをもらいました。しかし、前走は不利があったとはいえ今回も捕えられている点は気になります。馬のメンタルとして、このあたりが強く持てるかどうかが本番に向けて大事になってくるポイントだと思います。
札幌ではG1昇格も話されていた札幌記念が行われました。メンバーは少し例年に比べると小ぶりな感じは否めない中、勝利したのはノームコアと息子も大活躍中の典ちゃんでした。もうベテランの素晴らしさが全て出たようなレースで、流石の一言でした。1番人気にはG1を3勝しているラッキーライラックが選ばれ、次点にノームコアとなる中、スタートからトーラスジェミニがハナを奪うと、ラッキーライラックが少し出されたことにより噛むような形でコーナーに入り、前に馬を置けないままダラダラと2番手に押し出されました。
今までもポジションを取りにいき、早めに抜け出すと伸びきらないレースが続いていたので、これはラッキーライラックにとっては嫌な形になったなと思っていました。それを横目に典ちゃんは内でじっと馬をなだめました。1600mを走ってきた馬だけに折り合い重視で運んでいたのだと思います。4コーナーでは案の定ラッキーライラックの焦ったような追い出しが始まりました。「このレースをしたら止まる!」と言った矢先、内からスっと外に出したノームコアが一気に交わしきって勝利を挙げました。
2着にはペルシアンナイトが入りました。年々ズブさを見せていたことからも洋芝の2000mは今ではベスト条件なのかもしれません。今回のメンバーからもまだまだ秋に向けて!とは言えませんが、非常に楽しみになったレースだったと思います。
暑い日は続きますが、今週も競馬は止まりません。コロナがなければワールドオールスタージョッキーズが開催されていたのかと思うと寂しくはありますが、現実を受け止めて今週の競馬が開催できるだけでもありがたいと、思っていきましょう。その札幌ではキーランドCが行われますが、期待していたステルヴィオが発熱のため取り止めになったことで、注目はダイアトニックに集まると思います。
私も今回はダイアトニックではないかと思っているほど、素晴らしい走りをしていますね。その他にあげるとすれば、鞍上と手が合うダイメイフジも期待したいところです。それに、ビリーバーと杉原君のコンビも頑張ってもらいたいなと思っています。今週はジャパンオールスタージョッキーズというつもりでレースを楽しみましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。