元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
最強のラブストーリー
2020/11/4(水)
皆様、こんにちは!記事を書いている現在、アメリカ大統領選挙の開票がまさに行われています。個人的にはバイデン氏による政治を見てみたいと思っていますが、トランプ氏も追い上げてきていることからも、どちらが勝つか楽しみです。トランプ氏も無茶苦茶な方法と思うことも沢山してきましたが、アメリカのアメリカだけのことと見れば、結果は出していたように思います。このコラムが上がる頃には結果が出ているかなと予想しています。歴史をも左右する選挙だけに、皆様の注目も高かったことでしょう。
競馬界でも歴史を動かす結果が出ました。無敗の3冠牝馬から無敗の3冠馬、そして天皇賞(秋)連覇でアーモンドアイが芝G1 8勝目を挙げました。素晴らしい記録の達成に騎乗したクリストフも涙が溢れていましたね。本当に素晴らしいと感心しかありません。競走馬は速く走るために、極限の体を作りあげます。そのため、故障や病気とも常に隣り合わせです。ただ、勝つだけでなく、走ることさえも難しいのです。その中で達成した記録は、本当に関係する全ての人の努力と運があったからだと思います。
牝馬限定や海外G1が含まれていると、今までのG1 7勝していた馬達と内容が違うという人もいるでしょう。しかし、以前にも書いたように、同時に走らない限りは比べようがありません。その環境の中で、ベストな走りをして勝ち切った。この事実だけで十分だと思うのです。日本で1番強い馬はアーモンドアイだと胸を張って言いたいと思います。さて、それではレースの振り返りをしておきましょうか。
スタートからダノンキングリーが少し寄れ、隣のウインブライトからフィエールマン、クロノジェネシスがコースの形状からも少し締め出される形となりました。その中でハナを奪ったのが今回からブリンカーを着用したダノンプレミアムでした。それを見るようにダイワキャグニーが続き、アーモンドアイは3番手からの競馬になりました。このポジションを見た時、外から内に入れ込まれない限りは、決まったなと思ってレースを見ていました。
迎えた4コーナーではジナンボーが早めの仕掛けからアーモンドアイを入れ込もうとするも、手応えの違いから一気に抜け出されると、ここからは圧巻の走りでした。最後には後方からフィエールマンとクロノジェネシスが一気の脚で追い込むも、アーモンドアイが勝ち切り歴史的な勝利となりました。主戦のクリストフもライフホースと言うように、今の彼の騎手人生の中心にいるのがアーモンドアイなのでしょう。
彼女に乗るためにドバイへも前乗りしたり、常に彼の中心には彼女がいて、彼女も精一杯の走りで彼に応える。一人と一頭。それぞれの愛が2つ重なり、ひとつの歴史を作ったアーモンドアイというハートが出来上がったのだと思います。まだまだ見たい二人のラブストーリーの結末はどうなるのか。この面白さはまさに月9と言いたいです!
さて、今週はG1がお休みで、土日共に東京阪神で重賞競走が行われます。開催が東京、阪神、福島になっていますので、ご注意くださいね。複数の重賞レースの中から注目したいのは京王杯2歳Sに出馬してくるリフレイムになります。
デビュー前より才能があるという声が多かった中、口向きの悪さなどからまっすぐ走ることができずも、デビュー戦では大外のラチ沿いまでいくも勝利。その後、放牧先で牧場サイドが毎日の修正するための努力をツイッターでアップし、帰厩後も厩舎スタッフの懸命な努力で、少し張りながらも連勝を重ねてきました。ここまで来たからには重賞制覇を見てみたいと思ってしまいます。まるで、こちらもシナリオのないドラマのようで、荒れていた不良が更生しながらトップを極めるような気持ちで見守っています(笑)。
その他にはブルーシンフォニーがどこまで成長しているのかやモントライゼが広いコースで本領発揮となるのか。無限に広がる、筋書きのないあなただけのドラマを探してください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。