元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ボナペティート
2020/11/17(火)
皆様、こんにちは!11月も半ばに差しかかり、紅白歌合戦の出場メンバー発表が行われ、年末が来るんだなと改めて感じました。ずっと出ていたAKB48や島津亜矢さんが落選するなど、例年と比べると新しい人達が多くなり、少しずつ歴史の変化を感じる選出となりました。毎日毎日を普通に生きることが難しい今の状況の中で、変わりゆく歴史を感じられるのは非常に有意義だなと改めて思わされました。
まだまだコロナは続きます。一気に広がりを見せた時と比べると、少しずつですが向き合い方を知識と共に覚え対応してきていますが油断は禁物です。その中で、競馬をどう楽しんでもらうか。これは新しいホースマン達の挑戦なのだと思います。
それでは先週に行われ、今年は阪神競馬場開催となったエリザベス女王杯を振り返りましょう。勝利したのは大外枠を引いたラッキーライラックとルメールのコンビでした。毎回毎回ルメールの騎乗は上手いなぁと思わされるのですが、今回は私も思わず唸る、これ以上ない騎乗でした。
スタートからウインマリリンと横山武君が意地でもハナを奪うようなレースを期待していたのですが、それを実践したのはノームコアと父の典ちゃんでした。マイルから距離を延ばしてきていただけに、今回は馬が行きたがる素振りのまま走らせたことで、ハナを奪うレースとなりました。典ちゃんとしても考えていたかもしれませんが、馬がヤル気を出しすぎてしまった形になりましたね。
そんな中、大外のラッキーライラックはスっと内側へ寄せると、内にラヴズオンリーユーを見るポジションを取りました。ここでまず大外からポジションを取り、折り合いをつけた手腕が輝きます。その後も内を見ながら進めると、3~4角では馬が行きたがる気持ちを崩させず、なおかつ一呼吸入れさせながらポジションを上げました。このタイミングでも、いつものラッキーライラックを考えると直線で抜け出したらフワっとしてしまう!と思いながらも抜群の手応えのまま、早めに先頭へと飛び出しました。
それを見るようにラヴズオンリーユーは先に行かせば止まるはずと並びに行こうとするも、反応が鈍くポジションを外へと取り直す必要が出ました。ルメールが1コーナーで仕向けた罠だったのだと思います。それを見るようにサラキアも仕掛け始めました。いつものラッキーライラックを知っている他の騎手からすると抜群のタイミングだったでしょう。しかし、直線に入っても坂に入っても止まることはありませんでした。まさにルメールの技と力が彼女の100%の走りを見せてくれたのだと思います。
他の騎手でこれほどまでの走りができたか?と言われればかなり難しく、スミヨンやムーアでない限りはできなかったかなと思います。それほど完璧な、まさにルメールの美技をボナペティ―ト(フランス語で召し上がれ)のレースでした。外国籍での騎手として日本のG1最多勝利になりましたし、これからどこまで記録を伸ばすのか非常に楽しみです。
今週も京都ではなく、阪神でマイルCSが行われます。1番人気にはルメール騎乗のグランアレグリアが選ばれるでしょう。心配といえば前回のスプリンターズSからマイルになり、折り合いだけはないでしょうか。しかし、それも今のルメールをすれば乗りこなしてくれると思っています。
2番人気にはマイル無敗のサリオスが選ばれるでしょうね。こちらも圧巻の走りで勝利を挙げた毎日王冠からのレースですが、私はここに疑問を持っています。戦ってきた相手と今回の相手のレベルの差がどれくらいあるのかということです。確かに素晴らしい馬なのですが、もう少し成長が欲しいところなのでは?と思っています。この相手に勝ち切ることがあれば、数年は日本で敵なしになる気もしています。
それよりも私が期待しているのはインディチャンプです。トラブルによりここにぶっつけとなってしまいましたが、マイルなら同馬というのが脳裏に焼き付いてしまっています。その他ではひと叩きしたアドマイヤマーズに期待したいです。しっかりとポジションを取る川田君が強気に押し込んでいくレースをすれば勝機はこちらにもと思っています。紅白でも歴史が少し変わったように、競馬界の歴史も変わってきています。その歴史に名を残すのはどの馬になるのか!?マイルCSは今週日曜の阪神競馬場です!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。