元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
支えられた復活からの勝利
2020/12/9(水)
皆様、こんにちは!早いもので、テレビや街からはクリスマスソングが流れてきました。孫は、サンタさんにボトルマンという、ペットボトルの蓋で遊ぶおもちゃが欲しいと手紙を書いていましたが、大人は大変。ボトルマンとは何かを調べるところから始めなくてはですからね。そして息子に調べてもらうと、何とレアなものらしく、なかなか購入するのも難しいものとのことでした。
ひとつは前に並んで買ったらしいのですが、その時も周りは子供よりも転売目的なのか大人ばかりだったらしいです。便利になった世の中ですが、悲しい気持ちになるようなことをする人達も増えたなと思ってしまいますね。本当に必要としている子供たちに少しでも届くよう願っています。
それでは砂の頂上決戦チャンピオンズカップを振り返りましょう。戦前では国内無敗のクリソベリルに注目が集まっていましたが、調教の時から騎乗する川田君の「物足りない」というコメントや前日にも乗り込んでいたところからも調整が上手くいってないのかなと感じていました。しかし、それでも跳ねのける力があるのではと思っていましたが、結果はチュウワウィザードがJRA G1を初めて勝利しました。
鞍上の戸崎君にとっては感慨深い勝利になったと思います。ケガをして一時期は引退までよぎったことでしょう。その中で沢山の人達に支えられ、複数回の手術を行い、少しずつ感覚を取り戻し、ここで最高のG1勝利になりました。それはケガをさせてしまった側にとってもそうだったと思いますしね。本当に誰にとっても嬉しい勝利でした。
レースはスタートからエアアルマスが自然とハナに立つ形になりました。その後をインティがポジションを取りにいき、アナザートゥルースも行ったことでクリソベリルやアルクトスが1コーナーで少し内へと入れ込まれてしまいました。そこからクリソベリルは少し噛むような形で外からポジションを上げました。そして、今回の勝利の要因でもある3~4コーナーで、一気にペースが速くなりました。
そこで勝利した戸崎君は上手く馬のリズムを考えながら、前に置いたクリソベリルを捕えられるよう少し促していきました。もともと長くいい脚を使うタイプだけに一気の瞬発力に頼るより、この乗り方はいいぞと思って見ていました。迎えた4コーナーではクリソベリルの手応えが良く見えましたが、すぐさま横につけ追い越すと、あとはチュウワウィザードの独断場でした。
2着には古豪ゴールドドリームが入り、3着にはインティの着順となりました。1番人気に推されたクリソベリルは4着に敗れてしまいました。今回は王者の体調面もあったと思いますが、展開ひとつで結果は変わっているようなタイムだったと思います。そこを逃さず120%の力を引き出させた戸崎君が見事であり、勝ったチュウワウィザードが流石といったレースだったと思います。本当におめでとうございました!
早いものであと3週間となった競馬ですが、ここからも毎週G1があります!今週の日曜日は阪神競馬場で、現2歳馬達が迎える初G1阪神ジュベナイルフィリーズが行われます。なんといっても白毛一族のソダシがG1制覇なるかに注目が集まります。札幌2歳S、アルテミスSと重賞連勝中の力は本物か気になるところです。私個人としては走り方から、阪神のマイルは少し短いような気がしています。前回はマイルとはいえ東京でしたからね。しかし、脚質的にペースについていけたら勝利も見えてくると思います。
その他の注目としてはメイケイエールが上がるでしょう。レースの度にこの走りで勝つんだからすごい能力だなと思っていた一頭で、今回も折り合いがどうなるかがポイントになると思います。サトノレイナスやポールネイロンなどの素質馬も沢山いますし、まだまだ混戦になるのではと思っています。転売ヤーのように子供たちに混じることなく、同年代だけの戦いを楽しみにしています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。