元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
香港からの一途な愛
2021/4/26(月)
皆様、こんにちは!まもなくG.Wが来るにも関わらず、去年と変わりないコロナの状況に心が参ってしまいそうになる日が続きます。いくつかの県では緊急事態宣言が再発令されるも人が慣れてしまい、去年ほどの効力がないものとなっています。その中でも競馬を続けていけていることは当たり前ではありません。本当にありがたいことです。騎手や馬の移動は大きなリスクがあります。それを特別に受け入れてくれているということを感じながら競馬を施行しなくてはいけないなと改めて思わされました。
そんな矢先、岩田康誠君の幅寄せ暴言による騎乗停止は非常に残念なニュースとなりました。今年に入り、去年のケガが癒えてきたことからも調子を取り戻してきたタイミングでしたので、なぜ?という思いが一番にきました。あるメディアは悪いことのみを記述し、あたかもヒールへと仕立ててありますが、私はそこまで元の部分が悪だとは思えません。しかし、今回だけのことで言えば、完全に彼が悪かったと思います。それは本人が謝罪をしていることからも分かります。特に馬の上でというのは言語道断です。オーナーや開催を許してくれているファン、命懸けで仕上げてきた関係者全ての方に対し失礼だからです。
だからこそ、開催日に何をしてしまったかということを再度認識してもらいたい。しかし、スイッチが入ってしまうことは人ならばあると思います。彼の場合は不器用でそれが悪い方に入ってしまうのでしょうが、後輩いじめのみを書き続けるメディアには?がつきます。食事場所がたまたま一緒になった厩舎関係者にはいつもお世話になっているのでと彼が黙って支払っていたことや、後輩を家に呼んでバーベキューをしてお好み焼きをふるまっているという話を聞いたことがあります。
何度も書きますが、今回の件は彼が悪いです。しかし、全てに対し横柄ではないと思っています。息子も騎手になるなど環境が変わり、大怪我でメンタルが壊れながらも、どうにかあがこうとしている、そのやり方が悪い方向に出たのだと思います。あがくために人に当たるのも違います。やられた方は、やった側が思う以上に嫌な思いを感じたと思います。だからこそもう一度、自分自身のやり方を考え、藤懸君に心から謝罪をして、新しいやり方を模索してもらいたいと思います。
ショッキングな出来事から乗り替わりが多く出た日曜日。マイラーズCは岩田康君が教えこんできたケイデンスコールが急遽、古川吉君になりましたが、勝利したのは同馬でした。一時期の不調から立ち直ったのは岩田君の献身的な教えがあったからだと思います。古川君にしても良いイメージだけを持って乗ることができたと思います。レースはベステンダンクがハイペースで逃げる中、一番いいポジションにいたのがギベオンとケイデンスコールでした。追走に苦しむことなく、楽なポジションに入り、この2頭で決まりそうだなと思って道中見ていました。
直線に向くとギベオンが内から勝つか!?と思わせるレースをしていましたが手応えほど伸びず、その間に外を回したケイデンスコールが一気の脚を使って勝利。2着にはアルジャンナ、3着にカイザーミノルが入る結果となりました。しかし、今回のメンバーでは楽勝だったといっても過言ではありませんね。次走も楽しみになるレースだったと思います。
そして、香港で行われた香港クイーンエリザベス2世Cでは日本のラヴズオンリーユーが見事な勝利を挙げました。スタートしてすぐに落鉄もあったと聞きましたが、信じられないほどのパフォーマンスには地元騎手ホー君の力もあったと思いますし、何よりドバイからの転戦で結果を出した馬のメンタルとそれに対応したスタッフの技術力に限ります。抜群のレースをした昨年の3冠牝馬に完勝したのも価値があります。2着にはグローリーヴェイズ、3着にデアリングタクト、4着にはキセキと日本勢が上位総なめとなった最高のレースでした。
さて、今週は日本でも最高のレースを見たい!天皇賞(春)が阪神競馬場で行われます。1周目の外回りから2周目は内回りで3200mを対応するようです。1番人気にはアリストテレスが選ばれるでしょうね。久しぶりに重賞制覇したルメールの絶好調モードはここからではないでしょうか。そこに待ったをかけたいのが長距離適性を見せてきたオーソリティやディープボンド、ナムラドノヴァンになるのではないでしょうか。その他にも友道厩舎の古豪2頭にカレンブーケドールと拮抗したメンバーで結果はどうなるのか?穴狙いしても面白い一戦になりそうです。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。