元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
金メダル
2021/7/26(月)
皆様、こんにちは!東京オリンピックはどう楽しんでいますか?コロナ禍の中、多くの関係者が汗を流して開催されました。始まる前はこの状況で行ってどうなのかと思っていました。しかし、行われる競技を毎日のように見ていると、本当に感動して気持ちが盛り上げられます。開催までには何名かの関係者がクビになるなど準備不足や下調べ不足を露呈していましたが、選手たちには関係がないことですし、何よりこの大会のために全てを捧げてきた人達が本気でぶつかるのは重みが違います。
東京では毎日のように1000人を超すコロナ感染者が出ています。しかし、そんな中でも開催に感謝を持ち、戦う選手達を私は応援したいと思います。余談ですが、MISIAさんの国歌斉唱には鳥肌が立ちました。日本を代表する歌姫の圧巻パフォーマンスは、それだけで大会の価値を上げてくれた気がしました。
毎年のように書いているオリンピック競馬とはいきませんが、馬達にとってはオリンピックのようなレースが続きます。先週は新潟・函館開催となり、リーディングトップのルメールが夏休みという週になりました。新潟では名物1000mのアイビスサマーダッシュが行われオールアットワンスと石川君のコンビが勝利を挙げました。まだ3歳牝馬で2連勝した後にぶつけてきましたが、まさにスピード能力の違いを見せつけてくれました。
あとで気付いたのですが、管理する中舘調教師は新潟千直で現役を含めて最多勝の騎手でもあったんです。その千直マスターが作り上げてきた快速馬が51キロの恩恵もあり、見事な勝利だったと思います。石川君も非常に上手く乗りましたね。スタートから外目へと枠なりに導くとライオンボスを見ながらじっくりと構えました。目安として外ラチ沿いにある赤い棒まで持ちながら追走できる馬が勝てると見ているのですが、早々と追うことをしなくなったモントライゼ、ライオンボスを横目にまだ持っていたことからも、勝利をその時点で確信しました。
また、行った行ったの競馬ではなく、しっかりと折り合いがついていた点からも、今後のスプリント界でも楽しみになるなと思わせてくれました。騎手にとって51キロという斤量は個人さもありますが、非常に辛いものがあります。夏であれば体重も落ちやすいですが、それでも厳しいです。そこを勝利のために絞り、ベストな騎乗をした石川君の努力こそが勝利へと導いたひとつの勝因だと思います。まさに金メダルに相応しいコンビの素晴らしいレースでした。
さらに、このレースを盛り上げてくれたのはバカラクイーンと菅原明君のコンビでしたね。内ラチを一気に駆け上がると、外ラチを狙う他馬を出し抜いての3着は奇策に馬の特性がハマったということでしょう。実は他のレースで結構トライしている騎手もいるのですが、ハマったのは今回が初めてだった気がします。それだけ外ラチ沿いが有利ということに変わりはないと見ています。しかし、力構成や馬の特性がかみ合えば内ラチでも戦えることを見せられたのは大きかったですね。他に数頭いれば更に踏ん張れた気もしますが、今回は3着でも素晴らしい結果を得たと思います。
オリンピックも夏競馬もまだまだ続きます。今週は函館でクイーンSが行われます。注目を集めるのは戸崎君とマジックキャッスルのコンビでしょうね。脚質的に今の馬場と小回りの函館でどう勝ち切るのかは見応えがありそうです。藤懸君の感動の重賞勝利から今回は団野君とのコンビで出てくるシャムロックヒル、力をつけてきているドナアトラエンテ、中山で重賞を制している実力馬テルツェットなどが虎視眈々と狙ってきます。サトノセシルにも、ここからひとつ上の走りを見せてくれないかという期待を持ってみたいと思います。日曜日からはとうとう8月突入!競馬の熱い盛り上がりで熱中症にならないように今週も楽しみましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。