元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
こんな所を通すのか!?
2021/8/2(月)
皆様、こんにちは!毎日毎日オリンピックがあると、アッという間に1日、1週間が過ぎてしまい、改めてスポーツの力を感じています。この間はゴルフを見ていたのですが、松山選手は残念ながらメダルを逃してしまったものの、本当に素晴らしいプレーを見せてくれました。オリンピック前にはコロナに感染し、体調も100%と言えない状況で日本に戻り、あの暑さの中を最後の銅メダル争いに敗れたとはいえ感動をもらいました。気持ちを出して戦い抜いた姿は本当に素晴らしかったです。途中には、こんな所を通すのか!?と驚くほどのプロの技を見せてもらったりと本当に楽しめています。
それでは競馬でも、こんな所を通すのか!?とプロの技に脅かされたクイーンSを振り返りましょう。今年は函館での開催となりました。戦前からマジックキャッスルが人気を集め、ドナアトラエンテとで同枠の同厩舎2頭に注目が集まる中、勝利したのはルメールとテルツェットのコンビでした。テルツェットといえば春に4連勝で重賞を制覇しており、G1挑戦は少し難しかったところもありました。そこからひとつ成長し、圧倒的な鞍上を迎えてのレースは圧巻のパフォーマンスでした。
雨が降り出して馬場が重くなる中、レースはスタートしました。ハナを奪ったのはローザノワール、それにドナアトラエンテ、シャムロックヒルと続く展開に。コース形態もあり、マジックキャッスルと戸崎君はその後ろにつけました。完璧に勝ちに来たレースで、これは決まりかと思いながら見ていました。迎えた4コーナー。ウインマイティーが大外を回す中、テルツェットとルメールはペースからもまだだと判断して内を狙いました。サトノセシルが馬場の良い外へと回すのに連れて一気に抜け出すと、早めに抜け出したマジックキャッスルを交わして勝利。メンバーにも恵まれたダービー卿CTとは違い、ルメールで無ければ勝利はなかったのではないか?と思うほど、勝負懸かった素晴らしい騎乗でした。
2着のマジックキャッスルは小回りでも対応できるところを見せたことは収穫で、今回のレースは今後に活きてくると思います。3着には先週推奨させてもらったサトノセシルが入りました。こちらも乗り慣れた大野君が理解した上での騎乗で、馬場が悪くても走れたというのは収穫だったと思います。本来、勝利したルメールの取った進路は「そんな所狙ったらダメだよ」と思わず口に出てしまったほどリスクがありました。しかし、そこを突き抜ける力と技術がある彼だからこその騎乗で、一流にしか見えない進路だったのだと思います。
函館で行われた土曜の新馬戦ではソリッドグロウが素晴らしい走りをしていましたね。スピードの違いからハナでの競馬となりましたが、最後も突き放す勝利。走り方を見ているとダートもこなしそうだなという印象を受けました。馬は本当に賢く、ダートと芝で走り方を変える場合があります。調教でチップなどを走っていてダートが良いなと思っていても競馬に行って違う走り方をしたりします。本番で力が入っているなど色々な要因もありますが、それだけ繊細なところがあるんです。もちろん違う馬もいますが、なるべく若い間は戸惑いを与える選択はしないでほしいなと思っています。今後の路線も含めて、楽しみになりました。
今週も新潟・函館の2場開催となります。日曜日には新潟でレパードS、函館ではエルムSのダート重賞が行われます。とりわけ出世レースでもあるレパードSが楽しみです。難しいメンバー構成かつ抽選対象が多いため、なかなか今からこの馬と決めるのは難しいですがルコルセールに注目しています。ダート替わりから圧勝し、ここまで3連勝。函館→新潟と暑さや距離も気になりますが、名門堀厩舎が出走させるとなれば走れる状態にあるということだと思います。将来性も含めて期待したい一頭です。
そこに続くのは福永君がチョイスしたキャリアリズム、実績上位のクリーンスレイト。そろそろ岩田望君の初重賞制覇が見たいハンディーズピークや同じ左回りで中京コースのような走りを期待したいレプンカムイなど拮抗した戦いになりそうです。今週もミルファームマンの存在を期待しながらレースを待ちましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。