元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
イナズマ
2021/8/23(月)
皆様、こんにちは!滋賀県民にとっては1年の楽しみであるイナズマロックフェスの中止が発表されました。滋賀県出身の西川貴教さんがはじめたイベントで、滋賀県に大きな利益を生んでくれるフェスとして有名になりました。豪華なゲストもあり、琵琶湖の逆側からでも聞こえる音楽と、他県からの参加者もあって盛り上がります。
しかし、コロナ禍により残念ながら中止となりました。滋賀県民として非常に残念ではありますが、この状況では仕方ないですね。延期になるのか、違う形でやってくれるのかは分かりませんが、テレビでやってくれるならぜひ観たいなと思っています。雨で稲妻は避けたくても、滋賀にイナズマは必要不可欠ですからね!
それでは競馬の話をしましょう。まずは何と言っても北九州記念です。雨が多く降りしきる小倉競馬場で馬場がだんだんと痛んだ中、九州産のヨカヨカが51キロの斤量を活かし、初重賞制覇となりました。九州産馬としてもJRA重賞初制覇となり、九州で馬を生産する人達の努力が結果として出たレースでした。
また鞍上に九州出身の幸君というのも感動しました。道中から幸君らしく良い馬場を選びながら走らせ、この馬場で枠も逆に全てが向いたと思います。4コーナーでは逃げるモズスーパーフレアが最短コースで勝負を仕掛ける中、大外の馬場を一気に交わしきりました。2着には小倉マスター鮫島駿君とファストフォースのコンビが入り、まさに九州祭りになったレースでした。
ヨカヨカとして斤量や色々なものが味方になりましたが、それが無くても強いと思わせてくれる内容でした。血統や育つ環境で北海道には多くの名門があります。しかし、九州にも努力を怠らず、自分たちの信じた道を多くのものを犠牲にして戦ってきた人達がいます。雑草と呼ばれることもあったと思います。それでも見返してやるんだとやってきた関係者全てに勇気を与える勝利になり、心にもイナズマが走る衝撃になったと思います。
札幌で行われた札幌記念ではソダシが年上相手にも力を発揮し、勝利を挙げました。白馬というだけでも珍しいのに、G1ホースになり、初の古馬との戦いでも勝利するのですから本当に素晴らしいです。今回、この出走には多くの不安がありました。距離、古馬との戦い、クラシックまで逆算されたコンディション。しかし、それらを全て吹き飛ばしての勝利には驚きが大きかったです。正直、「ここまで強い馬なのか」とすら感じてしまったほどです。スタートしてから前に馬をおけず、4角でもジリジリと脚を使うブラストワンピースが早めにプレッシャーをかけにきた中でも冷静に対応し、勝利したことは本当に収穫の多いレースになったと思います。
2着にはラヴズオンリーユーが入りました。こちらも内からサトノセシルを当てながら外へ出すことを防ぎつつ外からのプレッシャーにも耐え、あの走りですから力は本物です。これで負けたら仕方ないなというレースだったと思います。3着には復活を期待していたペルシアンナイトが入りましたが横山武君は素晴らしい騎乗だったと思います。距離ロスを防ぎながらも一気にチャンスと見ると動く度胸と技術は、彼の今の活躍を納得させられるレースでした。それぞれの思惑が交差しながらも結果を出したソダシ。馬体と同じ白星をこれからどれだけ重ねるのか、将来ダートとの二刀流で活躍してほしいと個人的には思います。
今週は新潟で新潟2歳S、札幌ではキーンランドCが行われます。特に注目は夏の北海道からルメールが新潟へ出てくる新潟2歳Sです。もちろん、注目はルメールが騎乗するアライバルになります。勝利した新馬戦で2着だったプルパレイが次走で楽勝したように、私の注目2歳馬でもありました。かなり良さげなメンバーが揃いましたが、ここでも勝利を期待してしまいます。
川田君が新潟へ出てくるセリフォスも注目です。互いに譲らぬトップジョッキーが自分の得意な場所を離れてでも乗りくるのには、手放したくないということですからね。その他にも初戦を圧勝したオタルエバーやクレイドルがいます。個人的にはウインピクシスにも注目しています。今年のクラシック戦線にイナズマのような衝撃を落としてくれる1頭が出てくることを期待しましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。