元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
リベンジャーズ
2021/9/9(木)
皆様、こんにちは!夏の気候から一気に秋の気候へと変わりはじめ、ついこないだまで半袖でも暑いと思っていたのが、長袖を着ようかなと思わされるほどの温度になってきました。体調にはくれぐれもお気を付けください。そして最近、息子や孫たちが漫画をよく読んでいるので置いてあるタイトルを見ると東京リベンジャーズと書いてありました。面白いタイトルだなと思って説明を聞きましたが、さすがによくわかりませんでした(笑)。昔なら釣りキチ三平だったなぁと思い出しながらも漫画文化の発展をしみじみと感じました。
それでは競馬の話をしましょう。先週、小倉で行われた小倉2歳Sでは、浜中君騎乗のナムラクレアが見事な勝利を挙げました。浜中君にとっては1年半ぶりになる重賞制覇で、地元小倉と相まって非常に嬉しい勝利になったと思います。管理する長谷川厩舎にとっても初めての重賞タイトルとなり、共に30代の若いコンビの活躍となりました。
最終日の小倉1200mらしくポジション取りから激しいものになりました。スタート後、松山君騎乗の1番人気ショウナンマッハがハナをきろうと勢いよく出ていくと、未勝利で重賞挑戦をしたデュガと豊ちゃんは控えました。枠が逆だったり松山君でなければ豊ちゃんもハナを意識したと思いますが、彼は絶対に譲らないという強い意志がある騎手ですから控えましたね。その後、岩田君とソリッドグロウが内から、外からブレスレスリーが仕掛ける形となり、4コーナーでは傷んだ芝を気にし、内から数頭分を空けて走る形に。控える競馬を選んだスリーパーダと福永君は内しか選択肢がなくなってしまいました。
同じタイミングで小倉を知り尽くしている浜中君とナムラクレアは、普通の騎手なら内が開くのを待つ中、迷わず外への進路を選びました。この選択が非常に素晴らしかったです。浜中君にとっては栄光も悲しみも味わったミッキーアイルの子供だったことからも、非常に嬉しい勝利だったと思います。あの斜行から元リーディング騎手がここまで乗鞍が減ってしまうのか思わされることもありました。
正直、あの実力で1年半も重賞から遠のいてしまっていることに驚きさえあります。今も乗っている馬の数や質を考えれば、腕で持ってきているところが多いという印象です。それでも何かに縛られていた彼にとって、ミッキーアイル産駒かつ地元で重賞制覇できたことは非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。苦しみから彼にとっての小倉リベンジャーズになり、ここから再度の飛躍を期待したい勝利になりました。
今週からは夏競馬が終わり、中山・中京開催へと変わります。中中開催となるだけに馬券の購入にもお気をつけくださいね。土曜日は中山で秋華賞への道となる紫苑Sが、日曜日には京成杯オータムHが、また中京ではセントウルSが行われます。いきなり3重賞ということで、見逃せないレースが続きます。このレースの中で私の注目は京成杯AHに出走予定のカレンシュトラウスになります。3連勝からの重賞挑戦となりますが勝ち方が非常に素晴らしく、重賞初挑戦でもわくわくしてしまう1頭です。
しかし、2歳王者グレナディアガーズも負けられない一戦となってきます。ここに中山開幕週が味方しそうなスマイルカナや安定してきたカラテもいます。復調してきたカテドラルがどういう競馬をするのかも気になりますし、非常に難しいレースにはなりそうです。だからこそ、人気を少し落とすようならカレンシュトラウスに期待したいと思っています。夏競馬で負けてしまった方たちも、今週は中山リベンジャーズになることを願っています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。