
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
アサマイタズラ 鬼の押し出し
2021/9/23(木)
皆様、こんにちは!最近、息子から美味しいキムチを教えてもらってから、毎日のように食べてしまっています。ただ、発酵食品は毎日取ることが健康に良いらしく、納豆キムチなどは免疫をあげる上でも非常に優れた食べ物と聞いたことがあります。自然と美味しいものを食べて健康にもつながるという一石二鳥のような美味しいキムチに、毎日ご飯が楽しみになっています。
さすがに競走馬はキムチを食べませんが、それぞれの厩舎が考えた配合と特徴や体重をコントロールするために飼い葉の量や内容を変更させたりします。人参ひとつでも細かく切る必要がある馬やすりおろしが必要な馬など、人間と同じで食べ方にも特徴があるんです。彼らも待っていました!とご飯を食べてくれるので見ていると本当に可愛いんですよ。

それでは3日間競馬を振り返りましょう。特に印象深かったのが、月曜日に行われたセントライト記念でした。台風の影響から大雨が降った後の馬場になりました。表面上は乾いていましたが、下のコンディションはそこまで良くないように見えました。そんな中、ヴィクトワールピサ産駒の活躍が非常に目立っていました。日曜日の段階でも勝ち馬が今日は多いなと印象を受けており、思わず新聞でセントライト記念の種牡馬を見ると、1頭だけいたヴィクトワールピサ産駒がアサマノイタズラでした。
日曜日の段階の人気を見ていても、これが来たら万馬券になるなと話していたのですが、レースはそのアサマノイタズラと田辺君のコンビが勝利を挙げました。4角では勝ち急がず、構えたことで驚くような末脚を見せつけ、先に抜け出したソーヴァリアントを捉え勝利しました。田辺君としても、ここまでの脚を見せてくれたことには驚いたと思います。この結果からも、今回の中山はヴィクトワールピサ産駒に非常にマッチした馬場だったのだなと思わされましたね。名前の由来となった上毛かるたの「浅間のイタズラ 鬼の押し出し」のように見事な鬼脚での押し切り勝利でした。
2着のソーヴァリアントも良い競馬をしましたね。鞍上の戸崎君としては4角で押し出されるような形でハナに立ったことは少し計算違いだったかもしれませんが、それまでの組み立て、抜け出してからの走りは力を証明するのには十分だったと思います。あそこで先行馬達がもう少し粘ってくれていれば、勝ち馬はソーヴァリアントになったかもしれません。力は証明してくれましたし、本番の菊花賞に向けては非常に手応えのあるレースだったと思います。
3着に入ったオーソクレースも素晴らしいレースをしてくれたと思います。母マリアライトは名牝クリソプレーズの一族ですし、宝塚記念を制した実績もあります。こういった馬から更に良い馬がでてきてくれたのは嬉しい限りです。血統的には雨や重い馬場に強いイメージがあるので、是非そういった環境でも注目したい1頭だなと思いました。

月曜まで競馬があったため、少し体内時計がズレてしまっていますが、すぐに今週の競馬も始まります。中山ではオールカマー、中京では神戸新聞杯が開催されます。とりわけ神戸新聞杯では今年のダービー馬シャフリヤールが秋緒戦を迎えます。春はまだまだこれからの馬という印象だっただけに、どれだけ成長してくれているのか楽しみになります。福永君は2週連続の重賞制覇と波に乗っていますし、何よりも無敵といっても過言ではないほど中京競馬場が得意な騎手でもあります。心配としては馬場の状況、久しぶりのレースで引っかかる馬が得意でない彼がどうこなしてくるのかという点を注目してみたいと思います。
そして、王者に簡単には勝たせないと同期和田君が騎乗するワンダフルタウンにも注目したいです。ダービーでは青葉賞からのローテーションが影響していたこともありましたが、今回は万全の状態というだけに非常に楽しみです。そこに須貝厩舎の2頭がどう出るのか、またレッドジェネシスのサプライズもあるのか。期待馬達の秋緒戦を楽しみましょう!キムチだけにキムチいい馬券的中といきたいですね!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。