元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
泥臭くていい
2021/10/14(木)
皆様、こんにちは!先日は冬に向けてインフルエンザの予防接種を一足先に受けてきました。コロナが流行ってからというもの注射ばかりしているなと思いながらも、健康に人一倍、気を使うようになっています。10月でも暖かい異常気象といい、日本が少しずつ変化していることに恐怖を感じます。
変化といえばサッカー日本代表が絶望の位置からオーストラリアに勝利しましたね。サウジアラビアに敗戦した時までは最終予選の緊張感よりもなぜかダラっとしたような試合運びに見えたのが一新。前から走り歩き、泥臭く勝利を求めていました。この試合からもスポーツでもなんでも、泥臭くても成功を目指すことが何よりも大事なのだと改めて思わされました。綺麗な勝利ばかりが勝利ではないとも。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。何と言っても、この話題。阪神競馬場で行われた京都大賞典で8歳馬マカヒキが5年ぶりの勝利を挙げました。マカヒキと言えば、デビュー戦でビックリするような勝利を挙げ、そこで鼻出血があり少し休みを挟んでから日本ダービーを制覇。その後、凱旋門賞に挑戦し前哨戦のニエル賞を勝利するも、それ以降は勝ち星から離れていました。陣営がそれでも諦めず続けたことが今回の勝利を生みました。
G1では少し相手が辛くなっていましたが、今回のメンバーを見た時も、パドックで「あれ?マカヒキも出てるんだ」と思わずチェック漏れをしていたほど。しかし、その時に「このままだと種牡馬としても辛くなるから勝ってほしいな」とぼそりとつぶやいていました。そんな中で迎えたレース。内からベレヌスが逃げを主張し、ダンビュライトが続く形となりました。これに続いたのがキセキと和田君でした。このコンビも素晴らしいレースをしました。スタートから難しい馬を促しながら走り、ジリジリの脚を使わせることを考えて早めから踏み出し、長い距離を追い続けました。
4コーナーで1番人気アリストテレスが迫るところを早めに抜け出すと、このまま押し切るか?と思いましたが、この馬の悪い面が出てきました。それでも和田君は少しでも集中させるように追い続け、結果3着に敗れましたが、この走りをさせたことは大きな意味があるレースでした。7歳になってズルくなり、本気で走ることがなくなってきたキセキをここまで持ってきたのは陣営と和田君の努力があったからだと思います。
2着にはアリストテレスが入りました。こちらは次走にジャパンカップを予定していますが、今回のメンバーでこの結果というのは少しガッカリする走りでした。勝利したマカヒキは康太君が調教からよく関わっているのが分かる騎乗。キセキ同様、ズルくなってきた馬に気を緩めさせることなく直線を迎えると、前が壁になっても必死に追い続けました。最後まで諦めず、泥臭くても馬を信じ続けた陣営と騎手が生んだ素晴らしい勝利でした。
感動の勝利の後にはどのようなドラマが待ち受けるのか。今週は阪神競馬場で秋華賞が行われます。牝馬3冠最後のレースに、どのような感動があるのか非常に楽しみです。その中でも注目を集めるのが白馬ソダシになります。前走は古馬相手でレベルの高い札幌記念を制し、まさに阪神内回り2000mは得意に見えます。ただ、今回は更にマークが激しくなるだけに厳しいレースになるかもしれません。
そこに新の女王は私だとユーバーレーベンも出馬してきます。オークス勝利後に故障を発生し、ここにぶっつけ本番となりますが、どのようなレースをしてくれるのか楽しみでもあります。しかし、ここで無理なレースをすれば再発もあるかもしれないだけに心配は尽きません。その他ではアカイトリノムスメやアンドヴァラナウト、ファインルージュなどが人気を集めることでしょう。さぁ女王決定戦はまもなくです。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。